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≪スプリングカラー・オニオン≫と魔法学校の編入試験

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≪スプリングカラー・オニオン≫と魔法学校の編入試験

リアクション

「さて、どうしますかね」

 佐野 和輝(さの・かずき)は木の陰に隠れながら、おうとつの激しい斜面を見上げる。
 その視線の先には標準を向けてくる砲台の姿がった。

「ごめんね、和輝……」

 アニス・パラス(あにす・ぱらす)は涙目で、汚した和輝の腕を見つめる。
 和輝は砲台の攻撃からアニスを庇って怪我をしていた。
 人の姿に戻ったスノー・クライム(すのー・くらいむ)が、和輝の手当てをしながらアニスを慰める。

「別にアニスのせいじゃないわよ。
 そもそもあんな物が出てくるなんで聞いてないもの」
「とはいえ、このまま無視するわけには――」

 顔を出した十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)の真横を、極太の弾丸が走り抜けていった。

「このままじゃまずいね♪」
「笑いごとじゃないですよ、透乃ちゃん」

 笑っている緋柱 透乃(ひばしら・とうの)を、緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)が腰に手を当てて怒っていた。

 斜面の頂上部分に設置された砲台は、駆け抜けようとする生徒達を的確に狙撃してくる。腕利きの狙撃者がいるようだ。
 仮に弾を回避できる速度で移動したとしても、斜面には大量の地雷が設置されているため、移動を制限される。
 さらには地雷を弾丸によって起爆し、回避不可能な広範囲攻撃を行っていた。
 これにより、進路の安全を確保するため砲台を破壊したいにも関わらず、生徒達は木の陰から動くことができずにいた。

「ルナ、地雷の場所はわかりますか?」
「う、うん。大丈夫ですぅ」

 和輝は、ルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)が動物達から聞いてきた地雷の場所を詳しく聞かせてもらった。

「何か策があるのか?」

 宵一の問いかけに、和輝は控えめに笑った。

「相手が地雷を使ってくるなら、こっちも利用してやるんです」

 そう言って和輝は、銃を持ち上げて見せた。

「これで相手と同じように地雷を起爆させます」

 宵一が顎に手を添えて考える。

「……なるほど。爆発を利用して身を隠すんだな」
「そうです。その隙に他の方は一気に砲台を攻め落としてください」
「だったら、攻略には空を飛べる奴が適任だな。
 地上を進むには地雷の心配もあるしな」

「だったら、和輝。アニスに任せて!」

 アニスが和輝の袖を掴んで主張する。
 しかし、アニスの箒は、和輝に助けられた際損傷しており、まともで飛ぶことができなかった。

「こ、これくらい、大丈夫だもん。アニスだって役に――」

 和輝がアニスの頭にそっと手を乗せる。

「無茶は駄目ですよ」

 アニスは悔しそうに膝を抱えた。

「そうなると、後は……」

 生徒達の視線がゆっくりと陽子に向けられた。 

「え、私ですか?」
「うん。目もいいみたいだし適任だろう」
「俺が変わりたいけど、今は片腕しか使えなので……お願いします」
「僕は和輝さんと地雷の除去をするでふ。だから頑張って欲しいでふ」

 宵一に続いて和輝とリイム・クローバー(りいむ・くろーばー)が陽子に頼んでくる。
 そんな周囲に、陽子が戸惑っていると、透乃が肩を叩いてきた。

「透乃ちゃん……」
「陽子ちゃんならできるよ。ファイト!」

 陽子は肩を落として、渋々了承した。

 生徒達が臨戦態勢に入る。
 お互いの銃を構えた和輝とリイムは、アイコンタクトをとって飛び出した。
 すぐさま和輝が横へと飛び退く。つい先ほどまでいた空間に弾丸が駆け抜けた。
 和輝は転がりながら、地雷に向かって発砲した。
 爆発と共に大量の土を撒き散らされる。
 続いてリイムが近くの地雷を打ち抜いた。
 煙と土砂が舞う。
 
「今でふ!」
「援護します! 頼みました!」
「はい!」

 陽子が【地獄の天使】を広げて爆発の煙の中へ飛び込む。
 和輝とリイムも煙へ飛び込みながら、事前に把握した地雷の場所へと弾丸を撃ちこむ。
 当たったかどうかは、度重なる轟音の中から、肌で感じる爆風と音で判断するしかなかった。
 少しでも進行方向の安全を確保するために、和輝とリイムはダメージを気にせず突き進んだ。
 
 だが、視界が塞がれても敵の攻撃が止むわけではない。

 陽子の後方で着弾音と共に仲間の悲鳴があがる。
 それでも陽子は振り向かず砲台に向かって飛んだ。
 そして――煙を抜ける。

「……見えた!」

 砲台の姿を捕えた。
 だが、まだ攻撃の届く距離ではない。
 陽子は一気に距離を詰める。
 砲台が陽子を捕えた。
 身体を思いっきり捻る。

「――っぅ!」

 弾丸が背後の空気を引き裂き、全身をピリピリ痺れるような衝撃波が伝わる。
 地面に投げ飛ばされそうになる身体を、どうにか立て直そうとするが、片翼を砕かれうまくバランスがとれない。
 陽子は無茶な体制のまま、凶刃の鎖【訃韻】を投げつけた。
 鎖が狙撃者の腕を捕えるも、陽子は受け身が取れず地面に勢いよく叩きつけられてしまう。

 陽子に引きずられて砲台から落下した狙撃者。
 砲台に戻ろうとするが、縛られた鎖が解けない。
 気を失っている陽子は、なおも鎖を握しめていたのだ。
 狙撃者が陽子を引きずってでも戻ろうとする。
 すると、斜面を駆けて抜けて宵一が走ってくる。

「その覚悟受け取った! ここで終わりする!」

 宵一が大剣を横に構える。
 刀身を包む青白い炎がより一層大きくなる。
 地を勢いよく蹴り飛ばし、柄を握り潰す勢いで握った。

「Legend STRIKE!!」

 叫ぶ声と共に、聖なる力を集めた宵一の強力な一撃が、砲台を真っ二つにした。


 その日、最大の爆発音がイルミンスールの森に鳴り響く。
 奥の手を失った≪カメレオンハンター≫達は、次々と戦う気力を失っていった。