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 第 6 章 -観察の時間-

 クリスティーとフランツが休憩を終えて給仕に戻ると、入れ違いに北都と泰輔が休憩に入る。
「俺は後でいいや、2人共先に休んでてくれ」
 クリストファーが引き続き接客を続けながら、既に彩々には色花を始めセレンフィリティ、セレアナ、詩穂、ノーンがティータイムを楽しんでいた。
(さて……男装とおぼしき女性は何人か目星をつけてるが、さすがに忍び込む覚悟をしてるだけあって……ああ、あの少女はちょっと無理があるな)
 クリストファーの視線の先にはプリンアラモード・フルーツタワーに感動しながら頬張っているノーンの姿あった。一緒のテーブルについている眼鏡の少年は薔薇の学舎の制服を着ているものの、あまり見掛けない。
「誰かに似ている気はしているんだがなぁ……」
 同じようにクリスティーも観察しながら給仕の仕事をしていると、クリストファーの呟きにノーンと詩穂へ視線を送る。
「子供の知り合いは、そう多くないはず……けど、ボクも心当たりはないんだよね。あ……泣きそうになって紅茶を飲んでる、今日のスパイスシフォンケーキはシナモンベースだけどたまに唐辛子が練り込んであるらしいんだよ」
「……毎度思うけど、そういうチャレンジってメニューに入れるものなのか?」
 ノーンが眼鏡の少年、詩穂にフルーツとプリンを分けて口直しをさせている光景にフランツが冷たい水を持ってきて事なきを得たようだ。クリストファーはもう一人、男装しているとみられる少女に目を向ける。

「……北都や泰輔が見抜けないわけがないと思うんだが、それよりヴィナや一寿の目をかいくぐったっていうのが不思議だ」
 クリストファーは甘いスイーツを堪能して安心しきっている色花に目を向ける。確かにパッと見は男装で男の子に見えるが彩々に辿り着いたからか、その仕草は可愛らしいものであった。
「どうやら一人で来ているようだからな、帰る時はくれぐれも気を付けるように注意しておくべきか」

 クリスティーがセレンフィリティとセレアナのオーダーにスイーツとコーヒーを運びながら2人を観察すると、とある会話が聞こえた。
「セレン、あなた限定スイーツ食べたら帰るんじゃなかったの?」
「帰るわよ、限定スイーツを全て頂いたら。一つなんて言ってなかったと思うけど?」
 ヒソヒソと話すセレンフィリティの答えにセレアナの頬がひくつく。何となくクリスティーはそれ以上聞いてはいけない気に駆られたのか、少々離れて2人を観察していた。ダッフルコートで身体の線をうまく隠しているとはいえ、2人ともかなりスタイルが良い。
「……胸はどうやって目立たなくしてるのだろう、あまり苦しそうには見えないし何かいい矯正下着でもあるのか……」
 セレンフィリティとセレアナ、2人の男装には目を瞑るので彼女達の男装に一役買ったアイテムを知りたそうなクリスティーだった。


「ロゼ……あ、えーとロッソ! まだオーダー決まらないのか、そういう時は食べるもんも決めておくもんだぞ。じゃあ僕プリンアラモード・フルーツタワーで」
「あ! 勝手に決めるな」
 ヴァンビーノとローズがオーダーを取りに来たクリストファーの前でぎゃーぎゃーと騒ぐ。その間に貴仁、白羽、黒羽も同じものをオーダーする。別のテーブルになった銀とミシェル、そして何故か相席となったキャンディスもメニューを見てクリストファーにオーダーするのだった。
(男装の女性は……おそらく2人か、なかなかレベルが高いな。しかし、ゆる族のあれは……性別不詳としか言いようがないぞ! 思わず通してしまったが……)
 
 クリストファーが男装の女性と見立てた2人――ローズとミシェルの事である。


 男装して忍び込んだ女性の服装や仕草、アクセサリーの一つまで事細かに観察したクリストファーは満足して戻ってきた北都、泰輔と交代して休憩に入っていった。