校長室
失われた光を求めて(第1回/全2回)
リアクション公開中!
●終章 ウィール遺跡に辿りつく者たち、そこで彼らが見たものは…… 「コボルド撃退班は、ここより南方の位置2キロメートルを、こちらに向かっています。少女と合流した班は、ここより東南方1キロメートルの位置におり、まもなくこちらに辿り着くようです」 「そうか。助かるよ日下部君、怪我人の治療や周囲の探索などで人員が不足していてね。こうして連絡役を買って出てくれるとこちらも安心できる」 「いや〜、俺こういうの性にあってるんすよ〜。ま、ちと真面目に通信せないかんのが堅っ苦しいんやけど、あんまり砕けすぎても緊張感ないもんな〜。とりあえず任せたって下さいな」 日下部 社(くさかべ・やしろ)が、数個の携帯電話を持って各班と連絡を取りながら、カインへにこやかな笑顔を向ける。しばらく経った後、コボルドを撃退した班がやや息を切らせながらカインの元に合流を遂げ、最後にやってきたのはセリシアを連れた班だった。 「……皆、ここまで無事に来れたことは、紛れもなく君たちの力によるものだ。ここから先には未だ未曾有の危機が潜んでいるかもしれないが、君たちが己の役割を全うすれば、必ず乗り越えることができると信じている」 諸難を乗り越え遺跡に辿り着いた者たちへカインが労いの言葉をかけ、生徒たちの間に一時の安堵した空気が流れる。 「キミがカイン? ボクはセリシア、よろしくね!」 「こちらこそよろしく、カイン・ハルティスです」 飛んできたセリシアの挨拶に、カインが丁寧な物腰で応える。 「早速だけど、セリシアを助けてあげて。セリシアはこの遺跡の奥で『シルフィーリング』を護っているの。そしてそれを狙ってるヤツがいて、今遺跡は魔物だらけなんだ。早くセリシアのところへ行かないと、セリシアが魔物の餌になっちゃう!」 「……ふむ、セリシア君。そのシルフィーリングとは一体? 魔法具のようなものかね?」 「それはね――」 セリシアが言おうとしたその瞬間、調査隊一行を突風が襲い来る。やがて彼らの頭上に、これまで何度も邪魔をしてきた者の姿が映し出される。 「お前は誰だ!」 言い放つカインに対し、齢20前後の濃緑のショートヘア、同色のローブを身に纏った女性が応える。 「我が名はサティナ、忌々しい封印によってその力を封じられたが、今再び甦らん! 我の力を封じた小娘、セリシアをこの手にかけ、シルフィーリングの力を得てくれるわ!」 言った瞬間、遺跡の扉が勢いよく開け放たれ、中から複数の人でないモノの呻き声が聞こえてくる。やがて現れたのは、セリシアに出会う前の班が遭遇した、馬鹿でかいクモに毛虫の群れだった。 「お主たちもまとめて、ここで始末してくれるわ!」 サティナが手をかざせば、調査隊の背後の森が一際ざわめいたかと思うと、姿を無数の蔦に変えそれらが絡み合い、まるで自然の柵のように広がり、カインたちの退路を断つ。 「退路を断たれ、前からは魔物ですか……なかなか粋な計らいをしてくれますね」 微笑を浮かべたままのカインの頬を、一筋の雫が流れ落ちていく。それが地面に落ちて消えていくと同時、カインが生徒たちに振り向いて声を張り上げる。 「皆、私が言った言葉を覚えているか! 『ここから先には未だ未曾有の危機が潜んでいるかもしれないが、君たちが己の役割を全うすれば、必ず乗り越えることができると信じている』。……まさに今がその時だ! 皆、怖れず前だけを見て進め!」 その言葉に勇気を奮い立たされた調査隊の一行が、力強く一歩を踏み出した……。
▼担当マスター
猫宮烈
▼マスターコメント
『失われた光を求めて 第1回』リアクション公開しました。 ウィール遺跡を目の前にして、調査隊『アインスト』に次々と立ち塞がる障害。 次回、第2回(最終回)では、ウィール遺跡内を舞台にした冒険、そして謎の数々が明らかに。 それでは、またの機会によろしくお願いいたします。