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砂漠の脅威

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砂漠の脅威

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 大人数で長居は無用、ということで、スナジゴクの駆逐が確認できるとすぐに、生徒たちはミャオル族の村から空京へ戻った。
 そして、そろそろ夏休みも終わりに近づいたある日、ミャオル族救援ボランティアに参加した学生たちの元に、「ミスド」から招待状が届いた。そこには、
 『「にゃんこカフェ・アイリのオアシス」オープン! このご招待状をお持ちの方は、ドーナツ、コーヒーとも無料で食べ放題、飲み放題です!』
 と記されていた。大草 義純(おおくさ・よしずみ)が、ミス・スウェンソンの経済的な負担を少しでも減らそうと、ミャオル族たちにも協力を頼んで、実現した企画だった。


 にゃんこカフェのオープン当日。生徒たちは、手に手に招待状を持って、『ミスド』にやって来た。
 「『にゃんこカフェ』へようこそー、ニャ!」
 そこはまさに、にゃんこ好きにとっては楽園だった。
 男の子は黒い蝶ネクタイと黒ベスト、女の子は赤いリボンタイと赤に紺のチェックのベストを着て、揃いのカフェエプロンをつけたミャオル族の少年少女たちが、お盆を持って行ったり来たりしている。人間の店員も、フロアに出ている全員が猫耳と猫しっぽを標準装備だ。
 「な……撫でてもいい……のか?」
 イリーナ・セルベリア(いりーな・せるべりあ)がおずおずと店内に踏み込みながら訊ねる。
 「はいニャ! でも、お給仕をしている時にいきなり撫でるのはだめニャ。『撫でさせてー』とか『撫でていいかな?』とか、声をかけてからにして欲しいのニャ!」
 入口の近くに居た、少し年かさの少年がぺこりと頭を下げた。
 「わ……わかった」
 「なにをびびっておるのじゃ。撫でて良いと言われたのだから遠慮は要らぬであろうに。ほれ、そこのキジトラ少年、ここへ来て侍るのじゃ!」
 何やらぎくしゃくしているイリーナとは対照的に、セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)はずかずかと店内に踏み込むと、目に付いたミャオル族を手招きして、自分の隣に座らせる。
 「イリーナさん、こんな日が来て良かったですよね、ってあれ……?」
 クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)は隣に居たはずのイリーナに話しかけたが、その時にはもうイリーナは、とろけるような表情で白黒八割れのミャオル族少年の頭を撫でていた。
 「これは……ここで反省会を、というのは野暮と言うより無理のようですね」
 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)もさっさとミャオル族を撫で回しに行ってしまったのを見て、ローレンス・ハワード(ろーれんす・はわーど)が苦笑する。
 「ミス・スウェンソン、私が作ったお料理を出しても良いですか?」
 パートナーのベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)に大きな鍋を持たせたマナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)は、カウンターの向こうのキッチンにいるミス・スウェンソンに声をかけた。
 「……本当は、ここで作っていないものを出すのは良くないんだけど……今日は特別ね。ただし、学生さんたちにふるまうだけにしてもらえるかしら?」
 ミス・スウェンソンは少し考えて答えた。
 「良かったな、マナ。自分も配るの手伝うよ!」
 ベアは空いているテーブルに鍋を置かせてもらい、食器を借りに厨房へ入って行く。

 「うわー、ふかふか! かわいいー!」
 ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、好物のはちみつドーナツそっちのけで、ミャオル族の女の子を抱っこし、撫で回した。
 「あ、ありがとうニャ……?」
 女の子はどう反応して良いか良くわからないらしく、ぽかんとしてされるがままになっている。
 「その反応がまたかわいいー!」
 ヴァーナーはきゃーっと黄色い声を上げ、女の子に頬ずりをした。
 「うおおおお、これはたまらん……」
 東條 カガチ(とうじょう・かがち)は、左右にミャオル族を一人ずつ侍らせた上に、もう一人を抱きしめて、鼻の下を伸ばしてご満悦だ。
 「カガチ、ずるいですぅ! ほらほら、ねこさん、たい焼きあげるからこっちに来るですぅ」
 カガチのパートナー柳尾 なぎこ(やなお・なぎこ)は、桜色の頬をぷんすかと膨らませ、標準装備のたい焼きを取り出した。
 「そんなことしなくても、なぎさんがこっちへ来ればいいんだよー。そしたらほら、俺となぎさんと二人でもふれるじゃないか」
 カガチはなぎこを手招きした。なぎこはミャオル族を挟んで、ぽふんとカガチの側に座った。
 「そっか、こうすれば良かったですね。ほら、ねこさん、たい焼きですぅ」
 幸せそうに笑って、なぎこはミャオル族にたい焼きを差し出した。
 「……ここのコーヒーとドーナツは確かに美味だが、もう少し静かな時に来たいものであるな」
 ねこ大好き!な生徒たちの大騒ぎを横目で見て、リアン・エテルニーテ(りあん・えてるにーて)はぼそりと言う。
 「まったくです……」
 クリスフォーリル・リ・ゼルベウォント(くりすふぉーりる・りぜるべるうぉんと)も、大騒ぎする心理が良くわからず、微妙な表情で皆を見ている。
 「我は、可愛いものが好きにも関わらず、『いやーん』などと嫌がりながら、それでも突進していくというあの心理が良くわからんな」
 藍澤 黎(あいざわ・れい)は、クールにカプチーノを飲みながら肩を竦めた。
 「まあ、今日はお祭りみあたいなものですから、許してあげませんか」
 シャンテ・セレナード(しゃんて・せれなーど)もコーヒーをすすりながら、苦笑してパートナーのリアンをなだめる。
 一方、佐野 亮司(さの・りょうじ)はアイリをつかまえて、ミャオル族と交易ができないか商談をしていた。
 「うーん、確かに、皆さんが持ってきてくれたカンヅメとかレトルトとかは、獲物が食べられない時のために村にもあるといいと思うニャ。でも、それと交換できるものがボクたちの村にあるかニャあ……。余っててあげられるものは、あんまりニャいしニャ」
 アイリは首を傾げる。
 「そうか……」
 徹底的に自給自足だった村の生活を思い出し、亮司も考え込んでしまった。
 「でも、もしかしたら、ボクたちが気がつかないもので、何かいいものがあるかもしれないニャ。生徒さん、また村に来るといいニャ! 歓迎するニャ」
 アイリの提案に、亮司はうなずくのだった。

 店内の一角では、ドーナツ大食い競争が始まっていた。
 「マリーア、勝負だ!」
 「負けるものですかっ!」
 橘 カオル(たちばな・かおる)マリーア・プフィルズィヒ(まりーあ・ぷふぃるずぃひ)の二人の勝負が発端だったのだが、いつの間にか大食い自慢の生徒たちが集まって、大食い競争と貸してしまったのだ。
 「おらおらおら、どんどん持って来いやぁ!」
 姫宮 和希(ひめみや・かずき)も、ものすごい勢いでドーナツを口に押し込んで行く。
 「せっかくのドーナツなんだから、もうちょっと味わって食えばいいのに。……次は何にしようかなー……」
 大騒ぎを横目に、九条 瀬良(くじょう・せら)は皿に盛られた数種類のドーナツを食べる順番をじっくりと考えている。
 「あ、すいませーん、アイスカフェオレ1杯ください。ガムシロップつけて」
 通りすがりのミャオル族に注文したのを聞いて、パートナーのラティ・クローデル(らてぃ・くろーでる)はコーヒーカップ片手にふっと笑った。
 「そういうところはまだ子供ですね、瀬良さんって」
 「苦いものは苦手なんだよ!」
 乱暴に言ってふくれるあたりもまだまだ子供で可愛い、とは言わないでおいてあげることにした。
 ちなみに、大食い競争は底なしの胃袋を持つマリーアが圧勝だった。カオルは15個でリタイア。和希はものすごい勢いで詰め込みすぎてのどにドーナツを詰まらせ、それより先に脱落した。

 「あー、アイリってば寝ちゃってる」
 誰かの言う声に皆がそちらを見ると、アイリがソファにお腹を上にして寝転がり、くーくーと寝息を立てていた。
 「ちょっと、そっとしておいてあげてください。今日のために、村の子供たちを引率してここまで来たんです。疲れているんですよ……」
 にゃんこカフェの提案者である大草 義純(おおくさ・よしずみ)が、人差し指を唇に当てて『静かに』という仕草をした。ミス・スウェンソンがブランケットを持ってきて、アイリのお腹にかけてやる。


 その後、すっかり生徒たちと仲良くなったアイリは、時々砂漠を越えて『ミスド』に遊びに来るようになった。
 もしかしたら、そのうちにどこかの学校にミャオル族たちが入学する日が来るかも知れない……。

担当マスターより

▼担当マスター

瑞島郁

▼マスターコメント

 ミャオル族を救って下さってありがとうございました。アイリ共々、お礼を申し上げます。
 ドーナツ食べ放題は期待している方が多かったのと(教導団の海開きと言い……皆さん食べ物ネタお好きですね?)、にゃんこカフェを開くというアクションがありましたので、今回は特別にダブルアクションには取らずに、おまけとして解決後の「ミスド」のシーンを追加しました。楽しんで頂けましたでしょうか? もし、ダブルアクションになるからとアクションを削った方がいらしたらごめんなさい。リアクションで名前は出ていませんが、ちゃんと招待状は届いていて、ミスドにも居ましたよ、ということでお願いします。また、これはあくまでも今回のみのサービスです。他のシナリオのマスタリングではまた違った判定になることもあると思いますので、ご承知おきください。
 「ミスド」は今後、他のマスターが担当するシナリオにも登場することになっていますし、ミャオル族たちも、機会がありましたら再登場させたいと考えております。その時にはまたよろしくお願いいたします。