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エクリプスをつかまえろ!

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エクリプスをつかまえろ!

リアクション

 図書館では巽と、パートナーのティアが本の山に埋もれていた。ティアはもともと、動物好きの明るい少女。細かい作業に目を回しかけている。
「……うう、ちんぷんかんぷんだよぉ……とりあえず、それっぽいのを見つけたら、メモして天文部の人に確認してみた方がいいかなぁ……」
「ティア、元気出しなさい。久世さんたちが、郷土史やツァンダの伝承なんかを調べてくれてるし、もうちょっと頑張りましょう」
「皆さん、大丈夫ですか」
 夜が更けた頃、マルクトと永夷 零(ながい・ぜろ)ルナ・テュリン(るな・てゅりん)らが顔を見せる。
「差し入れを持ってきました。」
「ありがとう! わあ、サンドウィッチ!? 美味しそう。これ、三人が作ったの?」
「そうだよ」
「こっちは凄い…なんか、西部劇に出てきそうな料理だね…ものすごいボリューム」
「ねーさま、食べきれるかしら…」
 久世 沙幸と藍玉 美海が、具材を盛りに盛られたバーガーを目の前にして、苦笑している。
「よく分かったな! 具だくさんウェスタンバーガーだ!」
 永夷 零がニカっと笑う。
「ありがとう…」
「頑張って食べるわね…」
 苦笑いで対応する、沙幸と美海。
「こちらこそ。ところでウエスタン映画は好きか? クリント・イーストウッドのマカロニウェスタンはいいぞ」
「はあ…」
「すみません、久世さん、藍玉さん。食べきれなかったらボクが食べます。ゼロはブシドー・ウエスタンにはまってしまってあのようなザマに…」
「いいのよ〜、ルナは気にしなくて〜」
 沙幸はにっこりと笑う。
「ルナは可愛いですわねー髪の毛なんて、つやつや! これってうさ耳ですか?」
「うさ耳? え、なんのことでしょうか。ああ、髪の毛のことですね」
「なんか誤魔化されてるみたいですけれど…まあいいですわ、可愛いですわ〜。食べちゃいたいくらい〜」
「もう、ねーさまったら! 私以外はみちゃだめー!」
 可愛くて小さなルナ・テュリンには、弱い二人だった。
「ねえねえ、みんな、これ見て!」
 サンドウィッチをほおばりながら、本を読んでいたティアが、突然、大声を上げる。みんなもそもそと口に食べ物をほおばったり、紅茶をぐいっと飲み干しながらティアの差し出した、古い本の一文をじっと見つめた。
「どれどれ…『約二千六百年後、天体観測者は新しい大陸の朱雀にて、昼を夜に変える』これってパラミタとの関連を記した地球の『予言の書』ってやつの一文じゃないか」
「この『予言の書』は最近発掘されたもので、紀元前6〜5世紀頃に書かれた物だよね、確か。計算も大体合う。『新しい大陸』は、パラミタのことだろ?」
「朱雀ってことは、朱雀…南のほうってことでしょうか?」
「これ、天文部の人たちに知らせてきます!」
 巽とティアが駆け出す。
「私たちはもうちょっと、他の文献にも当たってみる」
「俺も手伝うぜ!ブシドー・ウエスタン精神だ!」
 沙幸と美海に、マルクトと零とルナが文献探しに加わった。

 場所は変わって、天文部の部屋。夜も深まり、静かな部屋にひたすら本のページをめくる音や、キーボードがカタカタという音だけが響いている。
 ドラゴニュートのルーク・クライド(るーく・くらいど)はケテルのキビキビした態度と、威厳に気圧されていた。ケテルは紅 射月(くれない・いつき)が持参したPCにインストールされている天体観測ソフトに座標を入力し、射月とミヒャエル・ゲルデラー博士と議論を交わしている。
「ケテルとマルクトって双子だけど、かなり雰囲気が違うよな。オレ、ちょっとケテルが苦手かも…」
 ボブカットと元気な口調が特長の倉田 由香(くらた・ゆか)は、ルーク・クライドにこそこそと囁く。
「ケテルはちょっと怖そうに見えるけど、多分すごく優しい人なんじゃないかな。だって天文部だけじゃなくて、それ以外のみんなにも日食のことを教えてくれて、みんなで見られるようにしてくれたんだもの。確かに、それなりに労働力が欲しかったってところだろうし、今は凄くぴりぴりしてるけどね。マルクトも頼りなさそうに見えるけど、縁の下の力持ちなんじゃないかしら。きっとるーくんが今よりももっと身長も心も大きくなったら、二人のこともそんなに怖くなくなるよ」
「ちぇ。チビだと思ってんだろー? くっそーエクリプスには、大きくなれるよう、お祈りしてやる!」
「ふふ。可愛いね〜、るーくんってば!」
 他の面々も少し疲れが見えているが、それでも各自、作業に取り組んでいた。クナイ・アヤシ(くない・あやし)がみんなにお茶を淹れたり、疲れた人にはヒールを施している。
 その時、深夜にもかかわらず、バーン!と扉が開く音と共に元気いっぱいな声が響き渡った。
「こんにちはー! 入部したいんだけどいいかな? 俺と俺のパートナーの二人!」
 万年ピーカン少年、甲斐 英虎(かい・ひでとら)。その人である。その後ろに、英虎にぴったりくっつき、その服の裾を掴んで離さない甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)が居た。
「夜中だぜ…英虎」
 細身で端整な顔立ちのロイ・エルテクス(ろい・えるてくす)がげんなりした顔で、元気すぎる英虎を見つめた。
「すまねえ、ちょーっと昼寝のつもりがぐっすり寝ちまってた」
「人手が足りないから、英虎さんにも手伝っていただきましょう。ユキノさんもお願いしますわね」
 ロイのパートナー、ミリア・イオテール(みりあ・いおてーる)が二人をエスコートする。金色の豊かな髪をなびかせたミリアはもともと個人的にエクリプスへの興味が強く、調査もしていたので、この天文部のプロジェクトに参加したのだった。
「は、はい…」
 小さな声で、甲斐 ユキノが呟く。