天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

エクリプスをつかまえろ!

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エクリプスをつかまえろ!

リアクション

 出発は翌日の午前九時と決定。
 また参加予定の生徒たちには、個人個人生活用品を用意するよう、校長から通達があった。観測用の精密機材の運搬担当は、天文部への入部者が中心となって行う。
道中、危険がある可能性もあるため、ウィング・ヴォルフリートが隊長となり、護衛班【ヘヴンリーガードナー】が結成された。
 大きな精密機材は小型飛行艇で運搬し、手で運べるサイズのものや、慎重を期すものに関しては各自、運ぶことになる。二日目はそういった機材の梱包や準備に追われた。
 
 御巫 楓耶(みかなぎ・ふうや)は一緒に参加できなかったパートナーの為にも、エクリプスを確実に見ることを心に決めて、機材の梱包に精を出していた。
 
第2章 出発

 三日目。蒼空学園出発の日。
 先に『スターゲイザー』に到着しているラルクとアインから、ケテルとマルクトに連絡が入り、もっとも通りやすいコースについてのデータが送られてきた。また、御槻 沙耶(みつき・さや)嵩乃宮 美咲(たかのみや・みさき)が図書館で調べたり、街の人たちから聞き取りをしていた独自のデータとマッチングさせ、最適な道が選び出される。
 沙耶と美咲は、護衛班とは別行動で、生徒たちの保護に回ることとなっていた。
「あまり群れるの嫌いやから、二人でやらせてもらうわ。体調が悪そうな人やはぐれかけている人をフォローするわ。何時でも戦闘等の対処出来る様にしておくから、心配はいらんで、まかせとき」
 沙耶は大きな胸をぷるんっと震わせて、自信満々に関西弁で親指を立てる。
 さらに美咲はその沙耶からも「あんな乳見た事ねえ…つか、マジありえへんやろ」とツッコミをいれさせた素晴らしい胸を黒い装束で覆っており、さらにそれが周囲の男子生徒の目を惹きつけてしまうのだった。
 小型飛行艇に乗り込み、ウィング・ヴォルフリートが声をかける。
「よし、出発するぞ」
 リュックを背負って楽しそうにしていた一般生徒たちも、顔が引き締まる。その中には、ウィングに誘われてエクリプス・ハンティングに参加した小谷 愛美(こたに・まなみ)の姿もあった。
 『スターゲイザー』には、今日の夕暮れまでに到着することになっている。日が落ちた後だと危険度も増し、生徒たちにも影響が出かねないからだった。
 長身で端正な風貌だが、無口なクルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)と、ユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)はそういった危険にも対処するため、護衛を買って出ている。ユニはクルードとの恋愛運をあげたくて、上手くクルードをリードし、このエクリプス・ハンティングに参加したのだった。ユニはポニーテールと豊満な胸を、期待でゆらしている。
「目的地まで安全に辿り着ければいいが…行くぞ、ユニ」
「はい」
(今回はチャンスですわ!クルードさんには、今回の皆既日食がどういう意味を持つ物かは教えていませんし!)
「絶対にクルードさんと二人で見るんです! そのためにも、頑張りますわ!」
「ユニ、なぜそうも俺と二人で見たがるんだ…? 何かあるのか?」
「なにもありませんわ! 世紀の天体ショーですもの! ぜひ! みたいだけなのです!クルードさんと!」

 天文部に入部したベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)マナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)だったが、実は大げんかをしたせいで、現在、冷戦状態である。そのため、二人はお互いへの当てつけにケテルとマルクトにちょっかいを出し合っているのだ。
「ケテル、大丈夫かい? 僕が疲れたら、荷物を持ってあげるよ」
「マルクト、喉がかわかない? 手料理で作ったクッキーなんだけど、どう? え? ベアの分? ごめ〜ん忘れてた」
と、ギリギリ、双子を前にしてやり合う始末。
「マルクトってさー、何で天文部入ったの?」
 双子に興味がある甲斐 英虎が荷物を背負いながら、質問する。
「私もそれは聞きたいです」
 島村 幸(しまむら・さち)も同様に興味を示す。
「私も科学者の端くれ。研究の先駆者として、あなた方の知識を私に与えてはくださいませんか?」
「僕らの両親は、天文学者なんです。今は地球にある天文台で観測を続けています。その両親の影響で幼い頃から、ケテルも僕も、星が大好きで…そして、このパラミタと言う新しい大陸での星や天候について、たくさんのことを知りたい、そう思いました。だから天文部に入部したんです」 
「わあ〜さすが〜どっかの脳筋クマ男と違ってマルクトは賢いね〜♪」
「脳筋クマ男ってだれのことだ」
「さーて誰のことでしょう?」
 マナの台詞にむっとしたベアがきっとにらみつけると、マナはぺろりと舌を出した。
 機材運搬に参加していた桐生 ひな(きりゅう・ひな)が八重歯を見せてにっこり笑う。
「あらあら、ケンカはいけませんよ。おなかがすいているのかな。緋音ちゃんと食べるために作ってきたサンドウィッチですけど、要りますか? タマゴにハムカツ、ポテトサラダにシーチキン、私の特製マヨ醤油入りも分けてあげますよ」
「い、いや、今はいいです」