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開催! 公式ムシバトル

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開催! 公式ムシバトル

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Cブロック
第一試合
「Aブロック、Bブロックと同時進行でお届けするこちらのCブロック。他のステージに負けないように盛り上げていきましょう!」
 Cブロックの解説担当をする天津 輝月(あまつ・きづき)が放送席のパイプ椅子に着席した。
「えと……進行の……お手伝いは……ボクたちが……」
「ああもう、はっきり喋る! 俺たちが進行をしますので、よろしくっ!」
 少し危うげだが、進行をするのは春告 晶(はるつげ・あきら)。パートナーの永倉 七海(ながくら・ななみ)のフォローがなければ、進行にならないかもしれないが。
「では、そろそろ第一試合の選手に入場していただきましょう」
「は、はい……第一試合は……へぽちゃんと……スーたんの入場……」
「ちょっとアキ! それじゃ皆さんに伝わらないでしょ。し、失礼しました。第一試合はパラミタヘッピリムシのへっぽこ丸選手と、パラミタオオカブトムシのストロンガー選手です!」
「呼ばれた! さあ行くよ、へっぽこ丸さん」
 十六夜 泡(いざよい・うたかた)が背中を押すと、へっぽこ丸は元気にバトルステージに飛び乗った!
「ストロンガー、今日がひのき舞台だぜ! 優勝狙っていこうな!」
 甲斐 英虎(かい・ひでとら)がぽんぽんと焦茶色に輝くボディを叩いてやると、ずっしりとした足取りで、パラミタオオカブトムシのストロンガーが歩き出した。英虎のパートナー甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)は、ストロンガーの角の付け根をマッサージしている。試合前のボクサーのようだ。
「Cブロックのレフェリーはあたしよ。よろしく」
 レフェリーの梁 桃麗(りょう・とうれい)が客席に向かって挨拶した。
「虫もいいけど、ちゃんとあたしのことも見なさいよねっ!」
 何故か手には鞭。大会実行委員会に、飾りとしては持っていていいけど、くれぐれも人や虫を叩かないようにきつく言われていた。本人は叩きたくてうずうずしているようだが。
「それじゃあ試合を始めるわ。両選手、準備なさいっ!」
 ちょっとレフェリーとしては元気がよすぎるようにも見えるが、声をかけられた虫たちは素直にステージ中央へと進み出た。
「では……さっさと始めなさぁい!」
 ……今のが試合開始の合図……だったようだ。
「先に行け、ストロンガー!」
 声に応えて先制したのはストロンガーだ。
「ストロンガーの弱点は防御だ。先にやっちまいたいところだぜ」
 素早く間合いを詰めたストロンガーは、へっぽこ丸に角をぶつけていった!
「あいたっ!」
 堅いへっぽこ丸は一瞬驚いたものの、まだ余裕の様子だ。
 へっぽこ丸の倍の速さがあるストロンガーは、続けて連続攻撃を放った!
 ガアアァァン!
 へっぽこ丸のダメージは少ない。だが、ステージの端まで追い詰められてしまった。
「そんな時は……ドラゴンアーツ!」
 泡が援護を放つ! 泡が放ったドラゴンアーツは、へっぽこ丸の背に命中した!
「自分の虫に……?」
 だが、その勢いでへっぽこ丸は、ステージ中央の方に押し戻された!
「あ……もしかしてこれはチャンスではありませんか?!?」
 ユキノからストロンガーに指示が飛ぶ。
 それを受けストロンガーは、へっぽこ丸の後ろに回り込み、強烈な体当たりをぶちかました!
「しまったぁ!」
 勢いよくステージ中央方向に押し戻されていたへっぽこ丸は、そこにストロンガーの体当たりを受け、とんでもない勢いで場外に飛び出してしまった。
 ぽーーーーーん。
「場外……だね」
「決まりよ。勝者、ストロンガー!」
 ストロンガーはステージ中央で伸び上がり、勝利を喜んでいるようだった。
「へっぽこ丸さぁん……」
 勢いがつきすぎていたへっぽこ丸は、思った以上に遠くに飛んでしまったらしく、姿が見あたらない。
「……まあ、もともと私って冒険家だし。行方不明の相方を探し出すための旅、っていうのもいいかもしれない……」
 泡は、力強く立ち上がった。
「私、旅に出ます。へっぽこ丸さんを探す旅に!」
 へっぽこ丸さんが飛んでいった方向に、泡は冒険の一歩を踏み出した。


第二試合
「第二……試合……の、選手、入場……」
「イルミンヒメスズメバチの……エ、エリザベート!? これ、お名前これでいいの? あ、あってる? はい、それじゃあエリザベート入場!」
 ぶぅぅん!
 エリザベート校長と同じ名を持つ、イルミンヒメスズメバチのエリザベートが勢いよく飛んできた!
「ああ、これはこれはエリザベート校長。虫に変身してバトル参加とは、あなたもお好きですねぇ。……ええ、もちろんこのハチはエリザベート校長ご自身です。ウソだと思います?」
 にやにやしながら輝月が解説する。
「その解説……ウソ……」
 小さく晶が反論するが、客席の大きな歓声にかき消されてしまった。
「ほら、やっぱりエリザベートっていう名前の力は絶大よ!」
 セコンドで、名付け親でもある日堂 真宵(にちどう・まよい)は、パートナーであるアーサー・レイス(あーさー・れいす)に、満足げに話しかけた。
「このまま観客を味方に付けて、うちのエリザベートを後押ししますよ」
「続いて対戦相手! イルミンクロカミキリ、スパーキング入場!」
 にょろん。長い触覚が揺れている。この長い触覚は、カミキリムシの特徴でもある。
「スパーキング。大丈夫だ、いける。落ち着いていこう」
 セコンドのミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)は、タオルでスパーキングの身体を拭き、落ち着かせている。
「あ、あ、あー……」
 なぜか発声練習をしているのは、パートナーのシェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)だ。作戦があるのだろうか。
「とっとと試合を始めなさぁい!」
 カーン! ゴングが鳴る!
 その瞬間、エリザベートの姿が消えた!
「あれ? 消えた?」
 厳密に言うと消えたのではなく、素早く飛び上がったのだが、あまりに素早すぎて、ちゃんと見ていられた者はほとんどいなかった。
「おそらくエリザベートの素早さは、参加している全ての虫の中でトップでしょうな」
 輝月が、先ほどとは異なりウソではない解説をする。
 バシッ! バシッ!
 気がつくとスパーキングの背後に降りてきたエリザベートが、キックの連続攻撃を浴びせていた。
「うそっ! やばい……。ちょっと早いけど……ごめん。シェイド、歌って」
「わかりました。スパーキング、聴いてください!」
 シェイドが大きく息を吸い込み、そしてアカペラで歌い始めた!
「♪風〜を切ぃりぃ裂くのだ! カーミキーリーライダー! パーラミターの正義をまもーる戦いにー! 今日もライライライライ……スパーキング!」
 現在子供達に大人気、絶賛放送中の「カミキリライダーX」主題歌が響き渡る。
『!』
 歌を聴いたとたん、スパーキングの動きが格段によくなった! 歌好きのスパーキングにとって、大好きな特撮ヒーローの主題歌は何よりの応援ソングだった。
 どぉん!
 体当たりで突き飛ばされたエリザベート!
 速さのかわりに、体力は少ないエリザベートにとって、今の一撃は強烈だった。体力は残り僅か!
「大丈夫よ! エリザベート、サンダースティング!」
 真宵から放たれた雷術は、エリザベートの針に命中した!
 びりびりと帯電している針。
 ぎらり!
 その帯電している針を、スパーキングに向けて突き出した!
「か、回避! スパーキング、回避だー!」
 だが、エリザベートの素早さにはかなわない。針はスパーキングに命中した!
 ビビッ!
 針そのものはかすっただけだったかもしれない。だが、一瞬びくっと身体を動かしたスパーキングは、倒れて動けなくなってしまった。
「ダウンダウーン! カウント! ワン、ツー、スリー!」
 レフェリー桃麗がカウントをとる。そして……。
「……テン! 勝者、エリザベートよっ!」
 エリザベートの勝利に、観客は大いに沸いた。まだ校長だと信じているのだろうか。
「こちらリポーターのセツカや! 惜しくも負けてしまったスパーキングのセコンドに、ひとこと感想をいただくで〜」
 人手不足でAブロックからかり出されてきたレポーターの雪華が、真宵にマイクを向けた。
「今のお気持ちを一言!」
「スパーキングは頑張ったよ。悔いはない!」
「大勢の前で一曲歌えたし……」
 シェイドは、これをきっかけに本気で歌手デビューができないかと考えていた。


第三試合
「次は……アミアミとジョーたん……」
「はい失礼しました! シャンバラハネサソリのアミキリ選手と、パラミタクロオオアリのジョージ君選手、入場!」
 弓のようにしなる尻尾と、鋭い針を持つサソリ。ブリーダーがよく手なずけていなければ、会場全員避難する事態になるだろう。
 見事サソリを手なずけたセコンドの志位 大地(しい・だいち)シーラ・カンス(しーら・かんす)とともに入場した。
「パ……パラミタクロオオアリのジョージ君だ! よろしく!」
 2本の足で歩いてきた、ジョージ君と名乗る人間っぽい生き物。もちろんパラミタクロオオアリではなく、五条 武(ごじょう・たける)だ。
「ちょっとあんた……人間よね?」
 さすがにレフェリー桃麗が止める。
「いえ……。彼はアリの改造人間ですから!」
 セコンドのイビー・ニューロ(いびー・にゅーろ)がフォローする。しかし……。
「改造人間? 人間ってついてるじゃない。少なくともアリじゃないでしょ」
 レフェリー桃麗が言うことは正論である。イビーは何も言えなくなってしまった。
「一応、校長に電話して協議してもらうけど」
 桃麗は、すぐに携帯を取り出して、電話をかけた。
「……もしもし。……え、そっちにも? ああー、そうなっちゃった。わかったわ」
 電話を切る。そして……。
「別のブロックにも、こんな風に「人間っぽい虫」が出場したらしいわ。前例がある以上、出場は認めなくちゃならないわね」
「やった! ありがとうございます!」
 イビーは飛び上がって喜んだ!
「ただしっ! エリザベート校長の決定で、人間っぽい出場者にはペナルティが課されるわ。本人、セコンドとも一切の魔法、能力の使用禁止。もちろん援護もダメよ!」
「ええ……な、何とかなりませんか?」
 ところが、それを聞いていた大地がこんな提案をした。
「だったら、こちらも援護は行いません。正々堂々、身体能力だけでの勝負をしてみませんか?」
 実は大地、こんな事件が起こらなくても、もともと支援なしのバトルを申し出ようと考えていた。アミキリの能力とコンビネーションに自信があるため、その方が勝率が高いと読んでいたのだ。
「そうしていただけるなら……こちらはとても助かります!」
「君はなんて男らしく、素晴らしいバトラーなんだ! 感動した! もちろん俺もその約束は守り通す!」
 協議の結果、この試合はセコンド支援なしの特別ルールで進行することになった。
「皆さんお待たせ。とっとと試合開始なさいっ!」
 カーン! 試合開始のゴング!
 援護なし、正真正銘の力勝負。観客のボルテージも最高潮だ!
 先制は、僅かに速さで上回る武。
「とうっ!」
 アミキリにパンチが命中!
「アミちゃんまけるな〜! 終わったらおいしいお茶とおやつにしようね!」
 声援に応え、今度はアミキリが動く!
 力強いアミキリの攻撃は、武の体力を一気に削った!
「タケル、次あと一発でも食らっちゃったらヤバイのです!」
「まずいっ! よーし、パラミアントキーーーック!」
 武は空中に飛び上がり、渾身のキックを放った! 狙いは関節部分。
「アミキリさん!」
 アミキリは、野生のカンで武の狙いを読んでいた。
「なにっ! 避けられた……? このパラミアントキックが!」
 避けられることを想定に入れていなかったため、バランスを崩して落下する武。
 そこにすかさず、アミキリの体当たりが炸裂した!
「うおおおおっ!」
 体長20メートルのアミキリに体当たりされた、身長173?の武は、軽々と場外まで飛んでいった。
「はい決まり! 勝者、アミキリ!」
 どこかへ消えてしまったパラミアント武。だが、きっとまた戻ってきて、熱い戦いを見せてくれるに違いない。頑張れ僕らのパラミアント、さよなら僕らのパラミアント……。