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特別授業「トランプ兵を捕まえろ!」(第2回/全2回)

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特別授業「トランプ兵を捕まえろ!」(第2回/全2回)

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 携帯電話を耳に当てたまま、手持ちのトランプ、クラブの6を見つめるは蒼空学園のセイバー、シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)である。電話の相手はパートナーのナイト、マリア・ペドロサ(まりあ・ぺどろさ)、興奮した様子でシルバに呼びかけていた。
「シルバ、なにごとにも挑戦あるのみよ。」
 アリアの視界の先には、ジョーカー戦線。途中参加のアリアが本陣を出発して幾らか走ってすぐにジョーカーの姿を上空に見つけていたのだ。 
 シルバはクラブの6に目を落とし、噛み締めていた。遭遇したクラブのキング(13)の威圧感に潰された、ジョーカーは、以上に強い。
「シルバ……」
 パートナーの雨宮 夏希(あまみや・なつき)は心配そうにシルバを見上げていた。
 グシャリ。
 シルバはトランプを握り潰して背筋を伸ばした。
「やるか。あぁ、やるぜ、ジョーカーに挑んでやる」
「シルバ♪」
「マリア、ジョーカーを逃すなよ」
「えぇ、待ってるわ」
 樹海の中を駆けだした。夏希は瞳を細めて笑み追いていった。


 箒に跨り空をゆく、イルミンスール魔法学校のメイド、ナナ・ノルデン(なな・のるでん)は同じく箒で並び飛ぶパートナーの魔女、ズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)に笑みかけた。
「居ないですねぇ、数字兵さん」
 ナナの視線を追いてズィーベンも界下を見下ろした。
「他の人が獲得していても、サニーとムーンは同じスタートだから、チャンスはあるとおもんだよね」
「そうですね、どうして居ないのかしら、(1)と(2)の数字兵さん」
 並び飛ぶ、そのスピードは歩くほどであったが、幾らか前から走るほどに上がっていた。
「ナナ、気付いてる?」
「えぇ、見つかってしまっては仕方がないですわ」
 ナナは手持ちのスペードの9スペードの3を高く掲げた。
「冥土戦技は空中戦も制しますわ」
「ギャザリングヘクス」
 ナナが上空へと一気に上昇した。それを追うはカルスノウトを構えたサニーの7、続いてズィーベンが追う。
 上空にも水蒸気は多い。さて、ズィーベンは得意のアシッドミストを一帯に唱えた。
 数字兵の視界が遮られ見失う、そこが次の瞬間にはナナのハーフムーンロッドが数字兵の頭に振り下りており、怯んだ隙にズィーベンの氷術が襲いて終い。
 連続の攻撃が瞬く間もなく。
「せっかくのロッドで打撃をしてしまいましたわ」
 トランプを拾いたズィーベンは優しくロッドを撫でるナナを見上げた。
 空中戦でのコンビネーションも体験できた、完成度も上がっている、授業の成果は十分。手札を使って東門を通過するのもアリかな、とも思いみていた。
 

 多くの生徒が移動をしている中、西の樹海で罠を張り待つのは百合園女学院のソルジャー、フィル・アルジェント(ふぃる・あるじぇんと)である。お手製の小箱の罠が数字兵を待ち構えている。
 パートナーのヴァルキリー、セラ・スアレス(せら・すあれす)ダイヤのジャック(11)を持ちて空で構える。
 現れたのはサニーの5。セラは数字兵のカルスノウトを受けてから森の中へと飛び向かう。
 数字兵が罠地帯に入った瞬間、合流したパートナー、ウィザードのシェリス・クローネ(しぇりす・くろーね)の火術が、円形に張られた小箱結界を発動させた。
 小箱はフィルお手製の爆薬箱。それが一斉に爆発したのだ。
 爆音が辺りに響いた時、数字兵の動きを止めるべくスナイパーライフルを放ったフィルに、ムーンの9のアサルトカービンが狙いを定めていた。
 銃撃の気配に気付いたフィル、しかし引き金は正に引かれようとしていて……。
 ダンっ、ダンっ。
 セラとシェリスが振り向く。トランプに戻るはサニーの5、そしてフィルも、振り向いた。
 ムーンの9がトランプに戻りゆく。狙撃したのは……、蒼空学園のソルジャー、弥隼 愛(みはや・めぐみ)であった。愛とフィル達は協力してダイヤのジャック(11)を倒してから別れたはずであったが。
「あはは、ムーンの9を追ってたら、戻ってきちゃった」
 上空で構えていたセラのトランプに反応したからにフィル達の元へ。
 愛の笑顔にフィルも表情を緩めた。
「助かりましたわ、ありがとうございます」
 フィルの派手な罠の跡を見て、愛は声をあげた。
 短き間に出会いて別れて再びに。魅いている、互いに手を握りあった。


 本陣付近にて「お茶会」を開いていたイルミンスール魔法学校のウィザード、九弓・フゥ・リュィソー(くゅみ・ )はパートナーのプリースト、マネット・エェル( ・ )と合流したパートナー、バトラーの九鳥・メモワール(ことり・めもわぁる)と共に、誰よりも早くに西門のポール前に辿り着いていた。
 九弓の後ろにはスペードの5、そしてマネットはクラブのジャック(11)の腕にしがみ付いていた。
 九弓は寂しそうな瞳でクラブのジャック(11)に言った。
「ここも少なからず戦闘が起こる、でも、獲得可能な得点を見ると、ここが一番低いの。彼らと居れば安心でしょう」
 九弓の瞳を追いてみれば、クラブのキング(13)ムーンのクイーン(12)サニーのクイーン(12)の三体。
「マネット」
 九弓に言われてマネットは泣きだしそうな瞳で、その手を離した。
「やられたらダメだからね、私たち…… お友達だよ」
 マネットの瞳を受けてからクラブのジャック(11)は振り向いて門へと歩きだした。そこへスペードの5もついて行く。
 九鳥が九弓の傍に寄りてつぶやいた。
「今回は戦わないんじゃなかったの?」
「うん、でも彼らはきっと同士討ちはしない、共に戦う事は出来ないのよ。それなら預けた方が良い」
 マネットは涙を堪えて顔を上げた。
「お友達として帰るためなのですね、ますたぁ」
「えぇ、私たちは南門を攻略してから戻り来て、みんなで通過するのよ」
 トランプ兵と友達になった、だからこその故にノーム教諭の設定、ルールが彼女たちを苦しめる。
 枷、運命、悲劇。いぃえ、悲劇になどしないわ、絶対に。大人びた表情をした九弓は瞳に固い決意を宿して南の空を見つめた。


 参加生徒たちの中でも、またどのチームよりもバランスとレベルが高いのがチーム「数奇兵」であり、獲得数はスペードの8スペードの7スペードの4スペードの2スペードのエース(1)の5枚である。
 東門のポール前、ノーム教諭の助手であるアリシア・ルードの目の前に二台のスパイクバイクが走り来て止まった。波羅蜜多実業高等学校のローグ、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)、そしてパートナーのセイバー、シルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)とドラゴニュートのネヴィル・ブレイロック(ねう゛ぃる・ぶれいろっく)である。二人が乗る機体は、ネヴィルの巨体が小さく見せて、シルヴェスターが肩に乗っている事でネヴィルの巨体がより映えていた。
 空飛ぶ箒組もゆっくりと地に降り立った。イルミンスール魔法学校のナイト、白砂 司(しらすな・つかさ)とそのパートナー、ウィザードのロレンシア・パウ(ろれんしあ・ぱう)。そして同じく魔法学校のプリースト、和原 樹(なぎはら・いつき)とそのパートナーでウィザードのフォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)である。
 チームの面々がポール前に集まった所で、トランプを取り出した樹がアリシアに問いかけた。
「ここを通れるのは、(1)、(2)、(3)を破棄すれば良いんだよな」
「えぇ、そのようになります」
「なら」
 樹はスペードの2を取り出して、アメリアの目の前で千切り破いた。
「これで(1)点が3枚だ」
「全員、通していただけますよね?」
 フォルクスの言葉にも、アメリアは表情を変えなかった。
 メガネを光らせながら司も続いた。
「ルールには曖昧な部分がある。解釈を探らせる事、それも狙いの一つなんだろ?」
 アメリアはゆっくりと首だけを振り向かせた。
 体長5メートルはあろう熊の口が開くと、屈み込んでモニターを見ているノーム教諭の姿が見て取れた。
 一同の視線を受けて気付いたのか、ノーム教諭は小さく振り向くと、
「そうだねぇ、それも正解だねぇ。うん、通っていいよ」
 ノーム教諭の言葉を聞いて、ロレンシアは手を合わせた。
「やったな、司。司の言った通りだ」
「あぁ」
 チーム「数奇兵」スペードの2スペードのエース(1)を破棄して東のポールを通過した。得点認可の第一号である。
 樹が残りのトランプをアリシアに渡した時、ガートルードが声をあげた。
「もう一つだけ。一度通過したら授業終了、なんて聞いていないわ。戦場に戻って得点の上乗せを狙っても良いんでしょう?」
 この言葉には樹も司も笑みを浮かべた。そして熊の口から出てきたノーム教諭は笑い声を見せていた。
「君たちは本当に面白いね。許可するよ、それも真理だ」
「よぉし、行くぞ、戦場が俺を待ってるぜ」
「ちょっと、アンタは走りなよぉ、わしのバイクが壊れるけぇ」
 再びポールを通って飛び出すネヴィルとシルヴェスター。他の面々も歩みを始めて再びにポールを通りゆく。
 表情を変えずに見送るアリシア、そして、ノーム教諭は笑み見送った。