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狙われた学園~蒼空学園編~2話/全2話

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狙われた学園~蒼空学園編~2話/全2話

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 そこに、シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)が現れ、リリーを挑発してみせる。
「そこな脳味噌筋肉男!体に自信があるなら、正々堂々我が剣を受けてみよ!」
「なにを!?」
 リリーはカっとなり、ドドッと音を立ててシラノに向けて走り出す。
「待て! リリー! それは罠です!」
紀がはっと気がつき、リリーを制止するが、リリーは途端に足を取られてしまい、身体のバランスを崩す。
「こ、ここは…! 沼地か!?」
 リリーたちの前に広がるのは、ただの草地であったが、よくよく足元を見ると、ぬかるんでいた。リリーは穴に落ちかけるが、怪力でその穴を這い上がる。穴の中には木の槍が上向きに突き刺さっていた。
「成功!」
 筐子とアイリスは、わざとリリーと紀を沼地に追い詰めるよう、追いかけていたのだった。
「なんつうこっちゃ…!」
「どうやら、私たちはこの段ボールロボたちに追い詰められる前から、敵の罠の手にはまっていたようですね…」
 紀が深刻げにため息をつくと、沼地の草むらから数名の影が現れた。
「その通り」
 青 野武(せい・やぶ)が姿を見せる。
「マーゼン・クロッシュナー殿の作戦と筐子君たちの考えが一致したため、ここまで追い詰めてもらったのじゃ。我々は、ここが沼地と判らぬよう、カモフラージュを施しておきましてな。…しかし、さすがに怪力のウィリアム・リリーに『天才策士』紀 君祥。落とし穴にはひっかからなかったようですな」
「こんな目には散々遭っとるさかいな」
「これくらいのトラップでは、我々を倒す事はできません。それにドラゴニュートの赤ちゃんは、リリーの身体にくくりつけられていますよ。さて、どうしますか?」
 さすがの青も、ドラゴニュートの赤ちゃんを傷つけるわけにはいかないため、うかつな手出しはできない。そのため『鬼太刀会』と『葉捕縛隊』との間でにらみ合いの時間が続く。


☆  ☆  ☆


 北都とクナイは双眼鏡でその様子をうかがっていた。
隙をみてドラゴニュートの赤ちゃんを探し奪い取るつもりだったが、リリーの体にドラゴニュートの赤ちゃんが入った麻袋に入れられ、リリーの体にしっかりとくくりつけられているとなると、なかなか手を出すことが出来ない。
「あの状態だとヘタに動くと、『葉捕縛隊』に迷惑をかけてしまうねぇ」
 北都が呟くと、
「卑怯な奴らです…!」
 クナイがそう眉を顰めて、リリーたちをにらみつける。



☆  ☆  ☆


 甲斐 英虎(かい・ひでとら)甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)は身軽さを活かし、ドラゴニュートの赤ちゃんの探索を行っていたが、沼地で戦闘態勢に入っている青や筐子たちを発見した。
「あれは、無線で連絡があったウィリアム・リリーと紀 君祥…?」
 可愛い小型の弓を背負ったユキノが、天文部で使っている双眼鏡でその姿を確認する。
「トラ、リリーが麻袋を抱えています! たぶん、あのなかにドラゴニュートの赤ちゃんがいるんです…! かわいそう…! それにしても、何故、ドラゴンの赤ちゃんをさらったのかな? この場所にきた意味があったのでしょうか…」
「恐らく、ドラゴンをけしかけるためじゃないかな。親のドラゴンに蒼空学園を襲わせるつもりだったんだぜ」
「ひどい…! でも、それなら早く救出しないと学園も危ないですよ、トラ…」
「うん、蒼空学園の本部には連絡を入れたし、青 野武さんたちからも、連絡がいっているはずだぜ! 大丈夫だよ、ユキノ」
 英虎はそういうと、光条兵器の弓の弦をぎりぎりっと引いた。
「トラ、どうするんですか?」
「援護射撃だぜ、ユキノは危ないから下がっていて」
 そういうと、矢をぱっと放つ。
 英虎の矢は見事に、リリーの身体にくくりつけられていた麻袋の帯の部分を突き破り、麻袋はリリーの身体から離れてしまう。
 それが膠着状態に陥っていた戦況を一変させた。
 それまで戦況を伺っていた御風 黎次(みかぜ・れいじ)が飛び出してきて、リリーに襲いかかる。
「ドラゴニュートの赤ちゃんを返せ!」
「そない簡単にはいかへんで!」
 リリーは自分のカラダから離れた麻袋を、その巨体にはそぐわないスピードで拾い上げる。
 ノエル・ミゼルドリット(のえる・みぜるどりっと)は前衛で戦うルクス・アルトライン(るくす・あるとらいん)と、黎次のサポートとして後衛に回った。
「リリー! ドラゴニュートの子供を決して奪われてはなりませんよ!」
「わかっとるがな、おっさん! まかせとき!」
 ウィリアム・リリーが地震攻撃を行おうと地面をたたきつけようとした寸前、相良 伊織(さがら・いおり)がバーストダッシュを使い、低空飛行でドラゴニュートの赤ちゃんの入った麻袋をめがけて突進してきた。沼地ゆえにリリーの地震攻撃はきかない、そう確信もしていたのだ。
「もらった!」
「なに!?」
 伊織が麻袋をリリーから奪い取る。しかし、その瞬間、紀が地雷トラップで使っていた爆弾を伊織めがけて投げつけた。
「私を忘れて貰っては困ります」
 大きな爆発が起き、伊織は更にバーストダッシュを使って、その爆発から逃れようとしたところ、リリーが伊織に追いつき、再度、伊織の手にある麻袋を奪い取ってしまう。
「返して貰うで!」
「くそ!」