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第八章 教導団一武闘会・決勝


「決勝、レオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)!」
「……また癖の強いのが残ったな」
「お互いさまと言うやつです」
 レオンハルトの言葉に優梨子が笑う。
 その笑みをレオンハルトは一瞥する。
「唯一のパラ実からの出場で、ここまで残った健闘を讃えるべきかな」
「讃えていただくのは、私の優勝で結構ですよ?」
 その様子を見て、ハヅキがボソッと呟く。
「……なんというか腹黒対決、って感じですね」
 ハヅキの呟きに観戦客の多くが大いに賛同する。
「まぁ……腹が黒い奴の方が、こういう読み合いには向いてるってことさ」
 パートナーの玖朔がそう解説する。
「互いに笑っちゃいるが、これほど温かみのない笑みも珍しい……ねえ」
 玖朔の見立て通り、2人とも口元に笑みは浮かべているが、いっそ笑ってない方が良いくらい黒い笑みだった。
「そうですね。……教導団対パラ実、となったことをおもしろい、と見るべきでしょうか?」
「ここでなら、おもしろいで済むからな」
 レオンハルトが光条兵器を手にする。
「あなたの戦い方は見ておりました、レオンハルトさん。その光条兵器に仕掛けがあるんですよね。もう手の内がバレてしまっているわけですから、大事な御身を護るために、降参してもよろしいですよ? 私はつまらないけれど」
「いらぬ気遣いを有難う。だが、“隻眼の獅子”を甘く見ないで貰おう。俺は死線を好むが、死線では、それなりの手数を持っていなければ生き残れぬものだからな。そして、自分が傷つかぬために、後ろに隠れているような趣味は俺にはない」
「まだカードが残っているってことですか。怖いですね」
 怖いどころかむしろ楽しそうに優梨子は笑う。
「さて、では、行きましょうか」
 優梨子が銃を手にする。
 乗馬服を着たお嬢様が銃を手にして、隻眼の魔法使いが光条兵器の剣を手にする。
 近接武器を所持する相手には組みつかない、と優梨子は決めていた。
 試合開始直前まで観察していた急所を……優梨子はわざと外す。
 右目が眼帯のレオンハルトはその視界が悪い、と優梨子は踏んだが、フェイントとして、別の部位に攻撃を仕掛けた。
「……っ!」
 優梨子は自分の首元に突きつけられた光条兵器を見て、レオンハルトの方をゆっくり見た。
「さんざん色んな手があるように見せて、正攻法で来るとは……と言っていいです?」
「手を10考えようと使うのはせいぜい1か2だ。だが、それでも10考えておくことが必要だ、と教授しておこう」
 

 「教導団一武闘会、優勝レオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)! 準優勝藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)! なお、事実上の3位である前田 風次郎(まえだ・ふうじろう)には敢闘賞が送られます!」
 小次郎のアナウンスと共に、急遽、団長自らが表彰することになり、三人に簡単ながら賞状が渡された。
 こうして、どちらがメインなんだかわからない合コンと武闘会が幕を閉じたのだった