なし

リアクション

イントロダクション『薄闇の中で』
　濃霧のような薄暗闇が、手狭な室内を覆いつくしていた。
　日の光を嫌うかのように、窓には二重三重に暗幕がかけられている。
　昼の強い日差しは、ほんの薄ぼんやりとだけ、部室に滑り込んできていた。
「――なんて、きれい」
　薄闇の中、不意にかすれた声がした。
　窓から吹き込む隙間風のように、冷たくかすれた声だった。
「この綺麗な唇で、美しい愛の言葉を交わすのね」
　生白い手が浮かび上がって、何かに触れる。
　いつくしむように、五指が這う。
「憎らしい」
　――かりっ。
　血の気のない指に、目の覚めるような赤が、つ……と一筋伝って落ちた。