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【十二の星の華】 Reach for the Lucent World(第1回/全3回)

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【十二の星の華】 Reach for the Lucent World(第1回/全3回)

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休息

「遺跡に入ってから結構な時間が経ちました。どうでしょう、このあたりで一息いれませんかな」
 開けた場所に出たところでそう提案したのは、道明寺 玲だった。
「わーい賛成! お茶にしようよ〜」
「ええ。茶は心を癒しますからな」
 玲の言葉を聞いてコレット・パームラズが大喜びする。
 他のメンバーも疲れが出てきたころだ。探索メンバーは玲の提案に賛同し、コレットは張り切って紅茶の用意を始めた。

「どうやら、ここまでのところは道を間違えていないようどすなぁ。ソアさんの方向感覚は大したものどすぇ。さ、オニギリ食べましょ」
 一乗谷 燕(いちじょうだに・つばめ)が事前に同行者に声をかけて大量のオニギリを持ち込んでいたため、食べるものには困らない。一行はオニギリを片手にくつろぐ。ちなみに燕はケーキなどが苦手なので、甘味には金平糖を用意してあった。
「リフルさん、今まで聞きそびれていたのですが、この遺跡が何のために作られたかなどは分からないのですか?」
 ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)が尋ねる。
「分からない」
「ふむ、この遺跡自体に資料でも残っていればありがたいのですが。それにしても、奥には何が眠っているのか……ワクワクしますね」
「わたくしは、もしかすると十二星華に関するものが残されているのではと考えていたのですが、なかなか見つかりませんわね」
 周りの壁を見回して、藍玉 美海が言う。
「そのことなんだけど……」
 美海の言葉を聞き、リネン・エルフトが口を開く。
「今までに出てきた仕掛けって……十二星座に対応してない?」
「どういうことじゃ」
 月詠 司のパートナーウォーデン・オーディルーロキ(うぉーでん・おーでぃるーろき)がリネンの方を向く。
「その……カナタさんだっけ? あの人の偽物が出てきたのが双子座で、天井が落ちてきたのが牡牛座……ほら、牛の角みたいなのが生えてたでしょ。それから、地面を踏むと毒針が飛んでくるのが蠍座で、羊のモンスターが牡羊座。さっきのが乙女座って感じで……」
「ふむ、なかなか鋭いな。では、最初のサハギンは?」
「魚座……かな」
「なるほど。どこかのマンガではないが、魚座の扱いはなんか微妙じゃな。ところでリフルよ、我も一つ聞きたいことがある」
 ウォーデンはリフルに向き直る。
「おぬし、星剣を失ってただの剣の花嫁に戻ったと言っておったが、それについて詳しく聞かせて貰えぬか?」
「そのままの意味。星剣をもたない十二星華はただの剣の花嫁。……最早剣の花嫁とさえ呼べないのかもしれないけれど」
「リフルは剣の花嫁というが、元は人間であったのか?」
 ティセラと女王の血縁関係が気にかかっていたマコト・闇音(まこと・やみね)は、今まで聞きにくかったことをここで聞いてみる。
「それはない。私は剣の花嫁」
 皆の質問に淡々と答えていくリフルに、今度は源 紗那(みなもと・しゃな)が言った。
「リフルさんの持っていたディッグルビーですが、あんなにもたやすく破壊されてしまうものなのでしょうか」
「仮にも星剣だもんねえ」
 のんびりとした口調でそう付け足すのは、シャナのパートナープリムラ・ヘリオトロープ(ぷりむら・へりおとろーぷ)。彼女はこれまでに何度か乙女座の十二星華を自称している人物だ。
 乙女座のふりをしているときのプリムラは口調と服装を変えて眼鏡を外し、髪型もストレートロングだが、今は普段通りの格好でトリプルテールにしている。
 リフルの件が一段落し、真の乙女座であるザクロも現れた以上、今後彼女が乙女座を自称する必要性は薄れるだろうか。
「もしかしたらあれは試作品か何かを改造したもので、リフルさんはそれによって洗脳されていたのでは?」
 紗那は自らの推測をリフルに語る。
「あれが本物の星剣であることは間違いない。比較的容易に破壊できたのは、私自身がそれを望み、星剣の耐久力を限界まで下げたから」
「星剣はどれもそのようなことが可能なのですか?」
「恐らく不可能。私の場合は星剣は洗脳の媒介であり、深く精神と結びついていたことも助けになったのかもしれない」
 リフルの説明を聞き、紗那は小さく何度か頷く。
「そうですか。この遺跡のガーディアンが守護していると言われるものが何なのかは分かりません。そもそも物体なのかそうでないのかも。ですが、私は星剣や光条兵器、もしくは剣の花嫁に関するものなのではないかと考えているのですよ」
「可能性はある」
 リフルたちの話をじっと聞いていた一ノ瀬 月実は、会話が途切れたタイミングを見計らってリフルの前にやって来た。
(リフルさんと友達になるチャーンス!)
「あなたも何かと大変みたいね。ところでもうオニギリ食べちゃったみたいだけど、ラーメン食べる?」
 そう言って月実が差し出したのはカップ麺だった。お湯なしの。
「食べ物分けるのはいいけど、なんでお湯のないカップ麺なのよ!」
 パートナーのリズリット・モルゲンシュタインがすかさずツッコミを入れる。
「……新境地」
「って、おまえもなにバリバリ食べてるんじゃーい! うう、もう突っ込み疲れたよ……」
 ファーストコンタクトは好感触。その目つきや口調、態度から友達のできない月実は、今度こそはと更にリフルに話しかけようとする。が、
「よう、この遺跡にお宝が眠ってるとかいう情報はないのか? 今のところトレジャーセンスには反応がないが」
 ザカコのパートナー強盗 ヘル(ごうとう・へる)に質問を受け、リフルは月実から顔を背けてしまった。がっくりとうなだれる月実。めげるな月実、キミにはケロリーメイトという無二の親友がついている。
 お湯なしカップラーメンを平らげたリフルは、久世 沙幸にもらったショコラティエのチョコをかじりながらヘルの問いに首を振る。
「そうか。ま、最奥部に眠ってるっていう『何か』がお宝だっていう可能性もあるわな」
 ヘルは常人と同じ体型のゆる族で、全身真っ黒のぴっちりとしたヒーローショー戦闘員スーツを着ている。そして狼のマスクにトレードマークのカウボーイハット。この一風変わった格好をしている彼がお宝にこだわるのは、持ち帰って孤児のために使いたいからだ。
「なになに、お宝の話? あたしも混ぜてよー」
 お宝と聞いて寄ってきたのはヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)だ。ヴェルチェも孤児院で子供たちと暮らしている。ただ、ヴェルチェは自分自身がお金に目がないので、お宝を手に入れた場合どうするのかは分からない。
「はあい、リフルちゃん、お久しぶり♪ ちょっと忙しくて最近会えなかったけど、色々あったのね。あたしのこと覚えてる?」
「お菓子をくれた人」
「……まあそれで我慢しておくわ。ところでリフルちゃん、あんたの求めてるのって多分、歴史的に価値があるようなものでしょ。そういうの以外でお金になりそうなものが見つかったら、あたし貰っちゃっていいわよね?」
 リフルはしばし思案する。
「……そのとき考える」
「そのとき、ね。オッケー、分かったわ♪」
(まぁダメって言われても、胸の谷間とかポケットとかに忍ばせられるものがあれば、積極的にくすねるんだけどね♪)
「さて、そろそろ参りましょう。みなさん疲れはとれましたかな」
 やがて、道明寺 玲が立ち上がって言う。英気を養った一行は、荷物をまとめて再び歩き出した。