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ネコミミ師匠とお弟子さん(第1回/全3回)

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ネコミミ師匠とお弟子さん(第1回/全3回)

リアクション


(3)性別不明という問題 @並木

「話は聞かせていただきました……!!」
「ぎゃあああああ!!!」
 
明智 珠輝(あけち・たまき) が あらわれた!!

■コマンド
 たたかう
→ようすをみる
 にげる

「美味しそうな子は食べてしまいますよ、ふふ……!」
「だ、だれですか!」
 先ほどの騒ぎを聞いた珠輝が白虎の獣人バージョンで森からガサガサと登場した。珠輝は頭に付いた葉っぱを落としたあと、優雅な動きで一礼した。並木は心臓を抑えて3歩後ろに歩いた。
「申し遅れました、私は明智珠輝。薔薇学の地味な一般生徒です」
「さ、笹塚並木です……地味!?」
 自己アピール力はんぱないんですけど……。
「薔薇学、そして私は貴方の入学を腕や色んな所を広げてまっておりますよ、ふふ……! 男性でも女性でも愛せます。さぁ、レッツ薔薇学。レッツ愛!部。愛!」
「スカウトって、ジェイダス校長がやるものじゃないのか……?」
 珠輝とは違い、のんびり歩道を歩いてきたリア・ヴェリー(りあ・べりー)がいいのかなぁ、と首をひねった。
「ほら、リアさんもスカウトしてください。
 並木さんがいらしてくだされば、それに加えてゴビニャーさんのあの気持ち良さそうな肉球触り放題かもしれませんよ……!」
「あの獣人さんのこと、か?」
 猫好きのリアは考えた……薔薇学の生徒が増えるのは良いことだ。おまけにあの、人間の言葉が喋れるぷにぷにの肉球のプリティーな獣人も来るかもしれない。『リア君、おはようにゃー』なんて、毎朝学校でいわれたら……可愛いじゃないか!!!
「……いい!!」
 リアはぐっと握りこぶしを作った。だが……。ちらっと珠輝と並木を見比べる。まずいな、並木君の薔薇学のイメージが珠輝になったら少し濃すぎやしないだろうか。誰かいないか、誰か!!!
 すると同じ学校の皆川 陽(みなかわ・よう)テディ・アルタヴィスタ(てでぃ・あるたう゛ぃすた)が歩いているのを発見した。リアが2人を呼んで事情を説明すると、陽はびっくりした顔を並木に向けた。
「並木さんって、名前から推測するに、日本人の方ですよね?」
「はい、生まれも育ちも日本です!」
 元気よく答える並木に対し、陽は頭を抱えてその頭が背中にくっつきそうなほど反り返り、声にならない声を上げている。何か辛いことでもあったのだろうか……。
「いったい何考えてるんですか! 日本で普通に暮らしていれば、安全で、なにもかもが便利で、楽しいことがたくさんあって、死ぬような目にも遭わずに生きられるというのに!」
「そういや、さっき銃で撃たれました。あははは」
「ボクなんか、そんなつもりもなかったのに幽霊のLCと出会って契約者になってしまって、地球にいづらくなってパラミタに追いやられてきてみれば、いつもおかしな事件に巻き込まれるわ学校の中にも魔物は出るわで、毎日死にそうな目に遭ってるんですよ!?」
「ええっ、魔物って本当にいるんですか!?」
「おー、見たことないのか。倒すの大変だったよ」
 並木は目をキラキラさせ、テディはパートナーの発言を面白い方向にもっていっている。シャンバラ人のテディにとっては普通のことなので、陽と一緒に並木を止める気はないようだ。
「おまけに薔薇学の校長は、自分のシュミや見栄心のために生徒に試練を課すのが好きな変態ですし!」
「校長以外もだけどなー」
「ああっ、黙っていたのに!!」
「並木さんが決闘で傷ついたり、お疲れになりましたら愛のアリスキッスで癒しを……!」
「アリスキッスって何ですか?」
「大人の世界を学んでいただきたいですね。……礼儀作法的な意味ですよ、ふふ」
 リアは陽にキャラの濃い校長の話をされて、『何で言っちゃうの!』という気持ちと『言ってくれてよかった……』という気持ちが同じ割合で生まれたのを感じた。
「自身を鍛えることに精進し、またゴビニャーさんに多大な愛を表現する並木さんには薔薇学がぴったりだと思います……!」
「入学して契約者になってしまって取り返しがつかなくなる前に、日本に帰ったほうが良いです!」
「そこまで言われると、逆に見たいような……薔薇学ってもう、名前からすごいですね」
 陽のオーバーリアクションは、その校風を体現する珠輝を見ていると嘘ではないような気がした。珠輝が微笑むと春の風に赤い花びらが混じった。
「ただひとつ」
 見学だけでもしてみようかなぁ、と思った並木にテディは人差指を立てる。
「契約は魂の一部を溶かし合って共有する行為。一生を共にすることになるヨメを守れる強さと覚悟を持たず、師匠に守ってもらおうなどと考えているようなら、地球に帰ったほうが良いぞ」 
「……はい!!」
 テディの言葉にうなずき、握手をしようと手を伸ばしたその時……っ。


トトトトン!!!


「こっちも話は聞かせてもらったよ!!」
 陽たちの周りに数多の手裏剣が刺さり、カリン・シェフィールド(かりん・しぇふぃーるど)椿 薫(つばき・かおる)が颯爽と木陰から登場した。その姿はまさに忍者!! まさか、本物の忍者をパラミタで見られるとは!! 目を白黒させている間に、カリンはひょいっと並木を担いでさらって行ってしまう。しばらく行くと地面に下ろし、簡単な自己紹介を済ませた。
「拙者がいる学園はどうでござるか? 蒼空学園という名の校風が自由な学校でござるよ。色んな学生がいて、いろんな部活があって自称悪い学生から、自称正義の見方までいるまるで宝箱のようなとこでござるよ」
 並木は先ほど怒られたばかりなので、蒼空学園の名前を聞くと複雑そうな顔をした。
「それとも」
薫はその表情から何かを読み取ったのか、カリンと目を合わせて軽く笑った。
「拙者と一緒に葦原明倫館という学校にいくのはどうでござるか?
拙者は忍者に憧れるでござる。ゆえに隠密科で学びより高みを目指すつもりでござる」
「格闘家を目指すなら、体術取得のついでに忍者になってみない?」
「え、忍者……? 考えたこともありませんでした」
「身軽さが増して空中殺法もできるかもしれないぜ!」
 先ほど、カリンは並木を勧誘しようとしている自分以外の忍者を見つけた。それが薫だったのだが、彼も葦原に転校していると聞いて一緒に並木のもとに行くことにしたようだ。
「並木殿、お互いの技を磨かぬでござるか? 袖触れ合うのも他生の縁というでござる今日このとき出会った我らもなにか縁があるのでござろう。目指すは葦原明倫館、武芸の学園でござる」
「日本っぽいところだけど、日本人以外の地球人が多いかな? でもさ、急に環境が変わるよりいいと思うぞ」
「うーん、外人の忍者が多い学校なのかな?」
 カリンはそういうと、ニシシと笑った。彼女も日本人ではないように見えた。椿は普通の忍者……普通の忍者って何だ。
「まぁ並木殿の場合は、いずれかの学校に転校するのが先決でござるな。弟子入りしてからどの学園で腰をすえるか、決めればよいのでござろう」
「そだな、まあ入学するならパートナー探しも付き合うぜ」
「むっ。カリン殿、そろそろ行くでござるよ」
「あいよ、じゃあな!」
 そう言うと、2人は隠形の術を使ってドロンと消えてしまった。戦闘と勘違いした他の生徒が近づいてきたからである。


 喧嘩かと加勢に来た鳥羽 寛太(とば・かんた)カーラ・シルバ(かーら・しるば)、今回は素顔の武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)……ではなく、田中太郎、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は並木がどこの学校に入るかなどどうでもよかった。
「強くなりたいって気持ちはあるみたいだし、面白そうだから協力しようか?」
「それより、腕に自信があるなら是非とも手合わせ願いたいぜ!」
「うわぁ!?」
 牙竜は武器は使わず、バーストダッシュで間合いを詰める。契約していない並木は避けるのがせいいっぱいだ。牙竜は並木が契約しておらず、身体能力差に開きがあるのを忘れているようだ。
「おいおい、本気出してくれていいんだぜ?」
「まあまあ、ちょっと待って」
 正悟は牙竜をどーどーとなだめると、並木のほうを向いて自分の考えを述べた。
「ねえ、笹塚さん。格闘にしろ、武術にしろ『真似る』というのは重要なファクターだよね。格好を真似るのは有効な手段だと僕は思う」
「え? はい、そうですね……?」
「格好を真似るのは有効な手段だと僕は思う。古来中国では蟷螂拳など動きを真似るというのがあったし」
「む、地球人ごときが弟子入りなど片腹痛いです。そもそもただのファンが弟子入りを望むなんて……ふむ、いわゆる痛い子というやつですか」
 カーラの手厳しい言葉に、正悟はちっちっちと指を振った。
「まずは外見から真似ていって、それから動きを真似ることでステップアップしていくんだ。憧れという言葉がスタートでもいいじゃないか。さあ、ここにあるネコミミとネコのシッポを装着しよう!」
「正悟さんに金的します。地球人の急所だと聞きました」
 下らないことを言うなと伝えるように、カーラは2回、正悟の下半身を狙って攻撃を与えた。それは2回とも正確に目標を捕らえた……あたたたたた。正悟は脂汗をかき、のたうち回っている。
「…ってカーラいきなりそれは! しかしルール無用のこの世界ではこれくらいで倒れていては生きていけません。出直してくることをお勧めしますよ」
「じょっ、女性がつけると……とてもGJだ、けど、はあはあ。じーさんばーさん、にいちゃん……幼児でも、はぁはぁ。ネコミミ、つける、と、一段階パワーアップできるんだ……」
 息も絶え絶えに理念を語ると、正悟はひざから崩れ落ちて行った。
「ふむ、そんな弱点を持つ地球人が弟子入りなどしても無意味でしょう。私が代わりに弟子入りしてあげます」
「そ、それは駄目です!!!」
「じゃあ僕はレフェリーということで……。並木をボディチェックします」
「そんな準備はいらないぜ!!!」
 並木は思わぬライバルの出現に焦るとファイティングポーズをとった。やる気になったらしい並木を見て、牙竜はそろそろいいだろうと等活地獄で仕掛けてきた。寛太はその攻撃の巻き添えになって吹っ飛んでいき、最後の1撃が並木に向かっていった。目のいい並木は避けるだけならできたのだが、拳が服に引っかかってボタンが飛んで行ってしまった!

「「あ」」

 牙竜と並木は目を丸くしている。やぶけた服の間からは控えめなサイズのブラジャーが見えていた。
「あのですね、今のパラミタでは我々地球人がメインで活動していて他の種族はお手伝いさん扱いなのですよ。尊敬する師匠をそんな立場にするおつもりですか?」
 並木の後ろにいる寛太には現在の状況が分からなかった、視界に星が見えている。
「それまではカーラと師匠が修行してる写真でも送ってあげますよ。
はっはっは! 嫉妬するがいい!」
「そうやって何もかも自分の思い通りにしようと我々を利用する……ゆるさん!」


ぷっちーん


「地獄に堕ちろぉぉっ、馬鹿どもがーっ!!!」
 牙竜のブラックコートをはぎ取ると、理性を失った並木は回し蹴りを放った。こうして、牙竜・カーラ・寛太は翼を持たずに空を飛ぶことに成功した。正悟のネコミミセットは誰かが持って行ってしまったようだ。あんなもの、誰が使うのだろうか?