リアクション
第6章 しばしの休息
「もう少しで完成だ」
イルミンスールの森で見つけた寿命の朽ちた木を拾った直実は、日曜大工セットで鍋を吊り下げられるタイプの囲炉裏を作る。
「こんなものか」
完成した囲炉裏の出来栄えを見る。
「熊は山の神の使い、余すことなく使ってやらねばな」
熊の皮を干すために作った台に干す。
「(もう遠い昔のことだな)」
熊の皮を見つめて少しばかり鎌倉時代を思い出す。
「皿と箸が必要か」
竹を二つに割り皿を作り余った竹で箸を作る。
一方、弥十郎の方はビニールシートを敷き熊を解体をしている。
消化系の薬となる熊の胆を取り出して乾燥準備をする。
「おっさんもどうぞ」
「ふむ、もらうとしよう」
取り出した血を少し飲み、直実も紙コップに入れて飲ませる。
余った残りは貧血病の薬として瓶の中に入れておく。
内臓や脳、舌などに切り分け、鮮度の落ちるのが早い部位を調理する。
「鮮度が落ちないうちに食べないとね」
塩もみをした内臓をお造りにした後、持ってきた薪に火術で火を起こす。
「そこにある鍋を取って」
直実から鍋を受け取り、脳を塩茹でする。
「ちょうどいい茹で加減だね。彩りもばっちり。レモンを使うと、すっきりといい香りになるね」
数分後、茹でた脳を包丁でスライスし、ニンニクとパセリ、レモンで味を調える。
「次は舌を細かく刻んでっと」
まな板に乗せてトントンッと慣れた手つきで刻む。
「皆、今頃どの辺にいるかな。もう採掘終わってこっちに戻ってるのかな?」
召命石と白籠石を分担して取りに行った生徒たちが、今どの辺りにいるだろうと思いながら包丁で刻んだ舌を水で茹でる。
「夕飯まで早いけど、お腹空かせてたりするのかな」
彼らに美味しい料理を食べてもらおうと、ニンニクと一緒に舌を熊の脂肪で炒め塩で味を調える。
「よし出来た。あとは帰りを待つだけだね」
囲炉裏の傍に座り、仲間たちの戻りを待つ。
-PM16:00-
「お帰り皆」
夕飯の準備を終えて待っていた弥十郎が、遙遠に声をかける。
「カガチさんたちはまだ戻ってないようですね」
「おっ、戻って来たみたいだな。おーいっ、こっちだこっち」
左之助がカガチたちの姿を見て片手を振る。
「ただいまー・・・」
気絶から目を覚まし、痛む肩を手で押さえながらへらっと笑う。
「ところでこれも食う?石油肉っていうんだって」
「それよりもその怪我どうしたんだ」
腕の傷を見て真が心配そうな顔をする。
「あー・・・ちょっとね。で・・・これ食べる?」
「囲炉裏の火が消えそうだ。薪代わりさせてもらう」
カガチから石油肉を受け取ると、直実は火の中に入れた。
「七枷さん白籠石を持ってきたんで、外へ運ぶのお願いしますね」
「うっ、増えた・・・」
荷物の総重量は100kgを超え、ぜぇぜぇと息をきらせながら陣は外へ運ぶ。
「それじゃあ私たちは先に出ますね」
メイベルたちも彼と共に洞窟の外へ出る。
「ちょっと早いけど、夕飯にしようか?」
「わぁ美味しそう!いただきますー。最高に美味しいですよ弥十郎さん」
囲炉裏の傍へ座った歌菜が、スライスした脳を箸でつまんで食べる。
「そう言ってくれると、作りがいがあるね」
「んっ、クマの舌を刻んだ炒めたやつ、美味いねぇ」
カガチも美味しそうに頬張る。
「なぎさんもそれ食べてみます。うん美味しい」
「炒め物は食べましたし、次は食べましょうかね。ではこれを・・・。塩もみした内臓もいけます」
遙遠はどれにしようか選び、醤油をつけて食べた。
「焼き加減もいいな。えっと塩もみしたやつどれだろう」
「悪い・・・食っちまった」
「えぇっ、俺の分が・・・」
まだ食べてなかったやつを左之助に食べられてしまい、真はしょんぼりとする。
「美味かったぜ」
「ごちそうさん」
羽純とブラットレイは満足そうに言い、メイベルが持ってきた水を飲む。
「片付け終わったし、そろそろ寝よう。お休み」
弥十郎は食べた後の片付け済ませ、早めに睡眠をとろうと言う。
「お休みー。―・・・ぐぅ・・・ぐぅ・・・・・・もう食べられない・・・むにゃ」
カガチたちは囲炉裏の近くに転がって眠る。
-PM18:00-
「はぁ・・・はぁ、ようやく戻れた。あっ、幸さん・・・材料を取ってき・・・た・・・」
運び疲れ体力の限界にきた陣が、シートの上にバタンと倒れる。
「だっ、大丈夫ですか!?」
足場に使えそうなやつがないか資材を置き場で探してきた幸が、ヘキサポッド・ウォーカーから飛び降りる。
「どうしたんですか陣、まさか悪魔に傷を負わされて!」
倒れたまま動かない陣を心配し駆け寄る。
「ううん、寝てるだけだよ」
リーズが疲れて眠っている陣を見下ろす。
「そうですか・・・ご苦労様です、陣」
起こさないように幸が小さな声で言う。
「お帰り」
メタモーフィックは夕飯のお弁当を食べながら、メイベルの姿を見つけて声をかける。
「ただいまですぅ〜」
「ママもお弁当、一緒に食べようと」
「ありがとうフィック、いただきますね」
幸は受け取った弁当を食べる。
メイベルたちと封神台を作っている現場へ戻ると、ローザマリアが敵の襲撃に備えて台を囲むように、“の”字を描くように外周部分へ簡単な堀や塹壕を作る。
「設計の構造上、これくらいしか出来なかったけど。仕方ないわよね・・・」
いつでも迎え撃てるように、その周囲に張り出しを設ける。
「わらわたちは襲撃に備え、そこで眠るとしよう。交代で見張りをしないか?」
相手が破壊しにくるかもしれないと、グロリアーナはローザマリアと交代で見張りをしようと相談する。
「そうね・・・見張りが全員寝るわけにはいかないからね。ライザから先に休んで」
「3時間経ったら必ず起こすように」
「分かったわ、3時間交代ね」
「ちょっと細工を加えちゃおうかな・・・。ここのセキュリティは僕に任せて。皆が一生懸命に作っている土台を壊させたりするもんか」
ローザマリアが作った張り出しに、小型の監視カメラをつける。
「ここのセキュリティは僕に任せて。皆が一生懸命に作っている土台を壊させたりするもんか」
「鳴子もつけておきましょう。まぁ、鳴らないに越したことは無いんですが、一応念のために」
望が背の高い草のところへ、敵に気づかれないように鳴子をつける。
「ただいま」
ランツェレットを学園に送ってきたスクルトとシュペールが戻って来た。
「お帰り。今夜は野宿か・・・。土台と材料置き場は見張りをしてくれているようだから、ゆっくり休むとしよう」
材料置き場は北都とクナイが守り、封神台の周囲はローザマリアたちが見張りをしているようだと確認し、コウは明日に備えて眠る。
「ボクも眠くなっちゃった。お休みー」
土台作りを手伝ったレキも眠り、生徒たちは休息を取ろうと野宿する。
材料集めと土台作りお疲れ様でした。
さて・・・今回、十天君の2人は現れませんでしたが、次回はきっと襲撃してくるでしょう。
洞窟の生き物が捕食されたようですね。
悪魔も八つ裂きにされてしまったようです。
重傷者はガイドの通り次回ご参加いただく場合、ステータスが3分の1状態になってしまいます。
一部の方に称号をお送りさせていただきました。
それではまた次回、シナリオでお会いできる日を楽しみにお待ちしております。