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リアクション
〜命の重さ〜
すっかりいつも以上に元気になったニーフェ・アレエは、にこやかにおしゃべりに興じていた。ラグナ ツヴァイはまだつながったまま寝息を立てている。ラグナ アインもベッドに乗って、妹の髪をさらさらとなでている。
「ニーフェさんにはぁ……好きな方おられないんですかぁ?」
如月 日奈々の言葉に、ニーフェ・アレエはうーん、と悩んで首を振る。
「でも、好きになるなら頼れる方がいいですね。花梨さんは好きな方おられるんですか?」
「私はねぇ。えっと……優しい人かな」
榊 花梨はちら、っと神楽坂 翡翠のほうを見やったが、向こうは全く気がついていないようで首をかしげていた。口に出した本人は顔を真っ赤にしてうつむいた。冊子のいいものたちは「ああ〜」といってニコニコしながら眺めていた。如月 佑也はそれを見て苦笑しながら眼鏡を持ち上げる。
「なんだか、い辛いネタだなぁ」
「陽太はバレンタインにチョコもらったんだよねー!」
「ねー!」
「ちょ、やめてくださいよ!!」
急にふられた影野 陽太は顔を真っ赤にして答える。だが女の子の話題はころころ変わるのか、すぐに影野 陽太の話題からそれた。
「女って、わがままだからな」
「いいんです、わかってますから」
高嶺の花に恋している男の言葉は重いなぁ、なんて如月 佑也は思った。そんな男達を尻目に、まだまだ恋の話題は尽きなかった。
「そういえば、姉さんもバレンタインにチョコ送ったんですよ」
「あ、この間のお茶会にお返しもらってたもんね」
「ルーノさん、エメさんのこと好きなのかなぁ」
「きっとそうですよ! 姉さん、きっと恋してるんです」
えっへん、といわんばかりに胸を張ったニーフェ・アレエに、一同首をかしげた。一見すると、ルーノ・アレエは全く恋愛関係に疎そうな女性だからだ。
「どうして?」
「だって、ハグしなくなったんですよ」
「ハグ?」
アピス・グレイスが不思議そうに首をかしげた。ああ、といわんばかりにニーフェ・アレエは説明を始める。ヴァーナー・ヴォネガットという友人から、挨拶はハグであることを教わったことを伝えた。
エメ・シェンノートからバレンタインの呼び出しを受けた後、急にチョコを造りたいと言い出したという話も、フィル・アルジェントたちから情報収集済みだという。
「バレンタインの緋、姉さんいつも服は制服なのに、エメさんに合わせて白いワンピースを着て出かけたり、チョコを寝ないで作って持っていったり、お茶会のときも、あんなに沢山の人の前でもハグしちゃうんですよ〜! それに姉さん、エメさん以外の男の人にハグしないんですよ。握手ばっかりなんです」
ニーフェ・アレエはにっこりと笑っていった。
「「「ええ! そ、それじゃ」」」
場は最高潮に盛り上がり、恋する乙女達はキャーキャー悲鳴を上げている。
遠巻きに眺めている青年は、「何が面白いんだろう」と時折ため息をついていた。
「でも、自覚してないみたいなんですよねぇ。これじゃエメさんが報われませんよ」
「ニーフェにはわかるの?」
ノーン・クリスタリアに問われて、ニーフェ・アレエは緑色の目を丸くするがすぐに苦笑する。
「私も、お魚の鯉しか浮かびません」
その言葉に、一同は笑いの渦に包まれる。薄く目を開けたラグナ ツヴァイも、その会話を聞いて微笑んでいた。少し安堵して胸をなでおろしたラグナ アインも、会話に加わろうと口を開いた。
「鯉って、あらいにするとおいしいですよね。佑也さんが作ってくれたんですよ」
「アインは、彼のことが好きなの」
「隙?」
「じゃなくってぇ……男性として、好きなんですかぁ?」
しばらく頭を傾げて考えていたラグナ アインは、あ、と小さな声を出してにっこりと笑った。
「男性の中では一番すきかもしれません。でも、もっと好きな人がいっぱいいますから」
「……佑也さん、ふられましたね」
「多分、今の意味わかってないぞ。アイツ。てか、鯉のあらいの段階で誰も突っ込みいれないのか」
影野 陽太と如月 佑也がずれた会話に実況を入れながら、また深々とため息をついた。
それを横目に、ロザリンド・セリナは随時入ってくる情報を目にしていた。
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