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【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

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【2020授業風景】萌え萌え語呂合わせ日本の歴史

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(何事かと思いましたが、郁乃様でしたか。まさか自らも階段落ちをなされるとは、よほど階段落ちが気に入ったのでしょうか? それにしましても、やはり他の方と比べて小柄ですね、郁乃様は)
 階上の奥の部屋から一部始終を目の当たりにしていた秋月 桃花(あきづき・とうか)=志士の一人は、ネコ耳を生やした平助=郁乃に微笑ましくも少々哀れむような視線を向けて、はたと自らの役目を思い出す。
(そうでした、桃花……コホン、自分は小五郎様に敵襲をお伝えする役目を担っているのでした)
 志士の一人が廊下を駆け、ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)=桂小五郎がいるはずの部屋へ赴くと、小五郎はこの襲撃にもかかわらず眠りこけていた。
「小五郎様、新選組です。早くお逃げください」
「……んん? 何だね、ボクのせっかくの夢を邪魔しないでほしい……なに、新選組だって!?」
 寝ぼけまなこを擦った小五郎は、周囲の喧騒でようやく事の次第を知り、慌てて起き上がる。
「そ、そうか。では俺が囮になろう! 他の同志もこの場から逃さねばならん」
 そう小五郎が告げたところで、隣の部屋で剣と剣が交錯する音、肉を断つ音と断末魔の悲鳴が聞こえ、一と魁が襖を蹴り飛ばして小五郎の部屋に踏み入る。
「桂小五郎、お命頂戴!」
「惇……じゃなかった一、そいつは俺が先に見つけた獲物だ、手を出すなよ」
「魁、今はそのようなことを言っている場合ではないだろう」
 魁の言葉に一が視線を向けて答え、次に小五郎へ視線を向けた時には、既に小五郎の姿はその場から消え失せていた。
「な!? おい、桂小五郎はどこへ逃げた!?」
「えっ、あ、あの……実は自分にも……」
 一に問い詰められた志士の一人は、知らないと首を横に振る。
「くっ、何と逃げ足の速い……!」
「ま、逃がしたんならしゃーねー。残りの奴らをパパッと片付けちまおうぜ、と……一」
「……そうだな。では行くぞ、魁」
 魁と一が駆け去っていくのを見届けて、志士の一人はほぅ、と胸をなで下ろす。
(そうです、郁乃様は……!?)
 平助=郁乃の様子を心配に思い、志士の一人=桃花が来た道を駆け戻ると、既に人気の消えた部屋の真ん中で郁乃が大の字に倒れていた。
「ああっ、郁乃様!?」
「……んー? あ〜、桃花かぁ〜。えへへ〜、私頑張ったよぉ……ほら、刀だってもうボロボロ」
 郁乃の言うように、傍にあった刀は刃が欠け、既に刀としての役割を果たせないところまで劣化していた。
「それよりも郁乃様の方がボロボロです!! もう、こんなになるまで無理して……」
 桃花が郁乃を膝枕してやりながら、負った傷に癒しの力を施していく。

「そうですか、一部の者を取り逃がしてしまいましたか……」
 新選組以外の人の気配が消えた池田屋にて、一と魁から報告を聞いた勇が頷く。
「マスター……勇は大丈夫だったか? ケガとかしてねぇか?」
 魁の言葉に、勇=エリスはある一点を指差し、ぽつり、と呟く。そこには剣士同士の戦いでは発生しえない、明らかに魔法を使った後が残っていた。
「なんだか、歴史を汚してしまった気分です……」
「それは……あ、主が気に病むことではありません」
「そうだぜマスター、史実通り俺たちが悪を成敗したんだろ?」
 一=夏侯惇と魁=リッシュに慰めの言葉をかけられるエリス。
「う〜ん、あたし大活躍〜!」
 一人、無傷なラケットをひゅん、と振るって、烝=ニーナが笑顔を浮かべていた。

「はぁ……はぁ……ここまで来れば……もう……大丈夫……」
 一方その頃、池田屋から脱出を図った小五郎=ブルタは、しかし池田屋からせいぜい三、四軒離れた所で汗だくになっていた。本人曰く『ゴキブリ並の逃げ足』は初速こそ素晴らしかったが、持久力に難があったようである。
「はぁ……さて、せっかく来たんだから、何か買って帰ろうかな。幼女なブロマイドくらいはこの時代にもあるだろう――」
 そう思い立ち一歩を踏み出したところで、足元が崩れブルタの巨体が真下へと落ちていく。直後、水が跳ねる音と身体に伝わるそれなりに熱い感覚に、てっきり死んだと思っていたブルタが目を開くと、そこはどうやら浴槽であるようだった。
(湯気で天井が腐ってたんでしょうかねえ――ハッ!!)
 突如ブルタの眼鏡がキュピーン、と光り、そしてその場にいた幼女を舐め回すように視姦する。彼にとりここが女湯であることよりも、幼女がいることの方が重要であった。
「ハァハァ……やはり幼女は格別だね、人類の宝だよ――」

「助兵衛ーーー!」

 当然の如く、他に入っていた女性に全力で叩きのめされたブルタが、浴槽にぷかぷかと浮いていた。
 結果としてブルタ=小五郎は新選組の追手から逃れることになったのだが、それを彼は知る由もないだろう――。

 さらに時は過ぎ、1867年12月。
 新選組と共に京の町を見回っていた『京都見廻組』は、既に反幕府勢力として見過ごすことの出来ぬ者になっていた中岡慎太郎の暗殺に乗り出す。
 彼が足を向けたのは京都近江屋、そこには盟友として行動を共にしてきた坂本龍馬も居合わせていた――。

「龍馬、龍馬はおるか?」
 襖を開け、入ってきた慎太郎を龍馬は待っていたとばかりに出迎える。二人はここで、三条大橋で土佐藩士が新選組に襲われた事件のことを振り返りながら、今後の対策を講じるべく話を進めていた。
「もう、どこにいても命ば狙われる身になっとるな、わしもおぬしも」
「それでも、誰かがやらねば物事は動かん。慎太郎、おぬしがいてくれたからこそ、わしはここまでやってこれた」
 杯を傾けながら、龍馬がまるで礼を言うように慎太郎に告げる。
「今更何を言うんじゃ。わしとて龍馬、おぬしがいなけりゃわしはずっと土佐におったろう。おぬしには人をその気にさせる何かを持っとる。わしはおぬしとこうして酒が飲めて、幸せじゃあ」
 慎太郎も杯を傾け、二人静かに酒を飲み交わす。

「はぁ、龍馬さんにっすか。分かりやした、自分が案内するっす」
 その頃近江屋を、龍馬に会いたいと申し出る十津川郷士を名乗る客が訪れる。応対した龍馬の用心棒、山田藤吉が鷹揚に頷いて背を向けた途端、突如客が剣を抜き、藤吉の背中を斬りつけた。
「ぎゃあ!!」

(今の悲鳴は……そうか、龍さんを暗殺しに来たんだな!)
 階下で聞こえた悲鳴に、咄嗟に反応した高村 朗(たかむら・あきら)が潜伏していた部屋から飛び出す。彼は京の町を散策していた時に坂本龍馬と出会い、その心に感服して意気投合し、今日もここで龍馬が慎太郎と会うまで共に過ごしていたのだ。
「龍さんを殺させはしない! 必ず守ってみせる!」
 全体が真っ白な刀と木刀とを手にし、朗は忍び寄るように階段を駆け上がってきた剣士と相対する。朗の振るった刀が剣士の握った剣を破壊するが、剣士の戦意は衰えず、朗に掴みかかる。
「こなくそぉ!」
 殴りかかられ、朗は真っ白な刀を取り落としてしまう。何とか剣士を振りほどき、片手で握っていた木刀を両手に持ち替え、振るう。脇腹を打たれた剣士はよろめき崩れ落ちるが、その間に他の剣士が朗を横目に通り過ぎようとしていた。『人を殺せない』朗の甘さは、既に敵に見抜かれていた。
「くっ……待て!」
 追いかけようとした朗の足を、先程脇腹を打った剣士が捕まえる。倒された朗に馬乗りになって殴りかかろうとした剣士は、次の瞬間響いた銃声に仰け反り、仰向けに倒れる。顔は穿った弾丸によって見るに絶えないものに成り果てていた。
「名前ば聞いちょらんかったな。わしの話を楽しそうに聞いちょった者を、みすみす死なすわけにはいかんでなぁ」
 起き上がった朗は、銃の引き金を引いたのが龍馬と知って、愕然とした思いで口を開く。
「龍さん、そんな……龍さん、力でなく会話で世の中を変えたいって……」
「ああ、確かにそう言った。わしとてそれが一番いいと思うとる。……じゃがな、言葉がいつでも相手に伝わるとはわしとて思っとらん。現に今も、わしを快く思っとらん輩はこうして、力でわしを殺しに来とる。そんな時に話し合いで、なんて言うとったら殺されるだけばい!」
 さらに二発、龍馬が銃の引き金を引く。二発目の弾丸が剣士の胸を撃ち、臓物を吹き出しながら剣士が倒れ伏す。この時点で残る剣士は5名、いまだ多勢に無勢であった。
「人を殺す業も、為すべき事の前に背負ってこそ男じゃあ! ……少年、でっかい男になれ!」
 四発目、五発目を撃ち、弾を撃ち尽くした龍馬が、刀を抜いて剣士と相対する。幾度かつばぜり合いが繰り広げられ、煌く斬撃に龍馬、そして慎太郎の身体が折り重なるように倒れた――。

 龍馬と慎太郎の暗殺を為し遂げた剣士は近江屋を去り、周囲は人の輪で溢れかえっていた。
(……これも一つの結末、ということか)
 その輪から外れ、一人本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)が京の町を歩く。一部始終を見届けた彼を、冬の空気を含んだ風が吹き抜けていく――。

 1868年1月、『鳥羽・伏見の戦い』に端を発した旧幕府軍と新政府軍との戦い、いわゆる『戊辰戦争』は、当初から新政府軍が官軍、旧幕府軍が賊軍とみなされたこと、装備の違い等もあって終始新政府軍が優位に戦況を進めていった。
 江戸無血開城を経て、相次ぐ戦線での敗北を喫した旧幕府軍は、最後の拠り所を箱館・五稜郭に定め、北海道地域に事実上の権力を成立させる。北方の防衛開拓を名目として、朝廷の下での自らの蝦夷地支配の追認を求める嘆願書を朝廷に提出し生き残りを図るが、新政府はこれを認めず派兵する。
 1869年6月、箱館に上陸した新政府軍は旧幕府軍が立て篭もる陣地を次々と占拠し、いよいよ五稜郭総攻撃の準備を整えようとしていた――。

 榎本武揚総裁の下に千代ヶ岡陣屋陥落と五稜郭総攻撃の知らせが届けられると、閣僚の間から「もうおしまいだ」「後は降伏するしかない」といった声が聞こえてくる。そして武揚自身も、これ以上の戦闘継続は困難であることを悟っていた。
(もはやこれまで……だが、このままでは無条件降伏。何か一つでもこちらに優位な条件を引き出せる戦果を上げることが出来れば……)
 そう思案していた武揚の目の前に、突如ローブを纏った身なりの男性が姿を現す。騒然とする室内を制し、武揚が誰何する。
「誰かどうかは関係ない。このまま負けるのを見てるのもつまらないんでな、加勢に来た。今ならまだこの戦況をひっくり返せるかもしれねぇぜ?」
 ローブから顔を覗かせたマーリン・アンブロジウス(まーりん・あんぶろじうす)が、不敵な笑みを浮かべて武揚に回答を迫る――。

「戊辰戦争最後の戦い、箱館戦争です。この戦いで新政府軍は勝利を収め、日本は中央集権国家としての一歩を踏み出していくわけです」
「なるほど、かくも重要な意義を持った戦いだったのですね」
 明くる日、沢渡 真言(さわたり・まこと)沢渡 隆寛(さわたり・りゅうかん)を連れて五稜郭を望む高台に足を運んでいた。日本の歴史に興味があった隆寛は、興味津々といった様子で真言の説明に耳を傾けていた。
 しかしその直後、五稜郭の一点で光が生じたかと思うと、そこから一直線に光が伸び、光は箱館湾に駐留していた新政府軍の軍船を貫いて沈没させる。
「……ふむ、今のは史実と異なるようですが、これも事実なのでしょうか?」
「……いえ、あのような近代兵器は当時にはなかったはずですが――」
 半ば呆然と様子を見守る二人の目の前で、さらに光が生じ再び軍船の一隻を貫き、沈没に追い込む。
「マスター……私、あの光に見覚えがあるのですが」
「ええ……そうですね、私もです。ちょうどマーリンも姿が見えないことですし……」
 同じ結論に至ったのを確認し合って、真言と隆寛が五稜郭へ乗り込んでいく。

「おお……これが聖剣というものの力か……!」
 新政府軍に甚大な被害を与えていく光に、武揚を始めとした旧幕府軍の士気は大いに高まっていく。今や五稜郭は絶大な火力を備えた脅威の建造物と化していた。
(うーん、やっぱアーサー王じゃねぇと全然力は出ねぇよなあ――)
 マーリンがそこまで思ったところで、本陣の扉を叩く音が聞こえてくる。
「失礼いたします。こちらにローブを被った怪しい身なりの者はお邪魔していませんでしょうか?」
 どこか気品を感じさせる声に、武揚は聖剣を貸してくれた者に通ずる者と判断する。
「どうする、通した方がいいのか……って、いない!?」
 いつの間にかマーリンの姿は消え、しかも聖剣まで忽然と姿を消していた。
「い、一体何だったというのだ……」
 一度は高まった旧幕府軍の士気はこの瞬間弾け、直後武揚は無条件降伏を受け入れたのであった。

「ま、まあ落ち着けな? ちょっとしたお遊びじゃねぇか、別に実歴史じゃねえんだし――」
「だからといって無暗に力を振るうものではありません!」
 逃げ出そうとするマーリンに隆寛がお仕置きを見舞い、ボロボロになったマーリンがその姿を怪しんだ憲兵にズルズルと引きずられていく。いうなれば『違反で牢屋(1868)五稜郭』といったところであろうか。
まったく……変な気遣いというものですよ。……失礼いたしましたマスター。では、勉強の続きと参りましょう」
「……ええ、そうですね。……あら、あそこに豊美さんの姿が」
 真言が、『ヒノ』を杖のようにして寄りかかっている豊美ちゃんを目に留める。
「はぁ……幕末がこんなに大変だとは思いませんでしたー……それっぽく辻褄を合わせるのに苦労しましたよー……」
「豊美さん? お疲れのようですが、大丈夫ですか?」
「……ふぇ? あ、あははー、大丈夫ですよー。確かに疲れちゃいましたけど、ここで休んでたらよくなりましたー」
 元気よく立ち上がった豊美ちゃんが、『ヒノ』を振りかざして次の時代に一行を案内する――。