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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)
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9-06 再起へ

 序章において、イレブンと共にいきなり黒羊郷と教祖ラス・アル・ハマルに挑んだデイセラ 留(でいせら・とめ)
「このご当地十二星華のデイセラの力も衰えていたか……無念じゃ」
 デイセラは森の仲間と、山の方へ落ち延びた。イレブンやパントル、共に戦った騎狼部隊の兵らの姿はどこにもなかった。そのうちに、騎狼だけで徘徊している四匹に出会った。おそらく……乗っていた兵は討たれたのだろう。騎狼も、剥がれ落ちたり矢の突き立ったままの甲冑を引きずり、見るに無残な姿であった。耳がちぎれてしまったものもいる。
 彼らと共に、山奥まで移動し洞穴を見つけるとそこでしばらくの間、動かずに傷を癒すことにした。
「だが……騎狼が飢狼になってはいかぬ」
 デイセラはやがて洞窟を出ると、騎狼や従う仲間を連れ用心深く山林を歩いた。暴徒やそれを討つ黒羊の兵が出ている地域もあるという。かつてから付き合いのあった獣人の村に寄ると、
「我ら敗兵の身、しかしながら屈して膝をつくことはせぬ。再び邪悪なる炎に立ち向かうため臥薪嘗胆。だが、胆を嘗めても腹は膨れぬ。どうか一杯だけでも飯を譲ってはくれぬか」
 今はそうする他なかった。
 獣人は、今は黒羊郷に歯向かうべきでないと、共に戦わないか問うたデイセラの申し出を断ったが、一つ気になることを思い出したという。
 デイセラと共にいるのと同じ狼……すなわち騎狼に乗った男女が付近の集落を回っていた。確かサージュ・ロワだとか……
「おそらくデゼルじゃ」デイセラは思った。あの決起のときのため、デゼルはこの辺りを回っていたのだ。そして、そのときだけじゃなく、蜂起が失敗に終わると、共に戦った村々に詫びて回ってもいたという。「ではその後、どうしたのじゃろう……?」
 プリモ国のことも聞いた。幾つかの独立勢力が勃興し、反乱を起こしたりしたが、イレブンやデゼルと行ったあの蜂起に匹敵するようなものはなく皆小規模のうちに抑えられたという。プリモ国などは、すでに黒羊郷を去ってしまった。一時は、芽のうちに摘み取ろうと黒羊郷もちょくちょく討伐兵を出したらしい。デイセラの驚いたことには、デイセラと同じくご当地十二星華が囚われる例もあったということであった。
 だがサージュ・ロワ(デゼル)の呼びかけは、再度決起を、という意志の強い者たちの共感を得て、そういう者たちは黒羊郷からは去らずに、裏手の山のかなり奥めいたところに隠れ潜んでいる、ということだった。
「そうか。デゼルのやったことは、この地に根を張っておる。
 そうじゃ、わしらの戦いはまったく無駄ではなかった……」
 デイセラは、ニッと微笑んだ。まだ、わしにも闘志は残っておるぞ。そして、「イレブン……おぬしにもう一度会いたいものよ」
 少し、哀しみを含んだ表情で呟いた。
 だが、予兆を感じさせる出会いがある。
「何。おぬしも、騎狼部隊で戦ったことのある者……で、ではイレブンのことを知っておるか」
「はい。僕は【騎狼シューティングスターの駆り手】菅野 葉月(すがの・はづき)。もちろん、かつて、ですがイレブンさんと一緒に駆けたこともありますよ」
「お、おお……! そ、そうか。
 わしはデイセラ 留。お留さんと、呼んでおくれ。遠慮なく、な! わしはこの土地のご当地十二星華なんじゃ」
「ありがとうございます。お留さん。あ、僕のことは葉月って呼んでいただければいいですよ」
「ワタシはミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)。ミーナだよ。よろしくねっ、お留さん。ワタシもそう、呼んでいい?」
「ああ、ああ。ええよ。ミーナちゃんだね。よろしく」
 デイセラは、なんだか元気がわいてくるようであった。イレブンとはぐれ、多くの友を失い……それらは些か肩を落とさせるに十分過ぎる出来事だった。だがまだ、戦えそうだ。
「ご当地十二星華に会えるなんて、ラッキー」
「こ、こらミーナ。すみません……でも、ほんとに光栄ですよ。
 あ、あの。イレブンさんは……」
「うん。そうなのじゃ」
 デイセラは、あの戦いのこと、その後、イレブンの姿を見ることもその名を聞くことすらとんとなかったことを語った。
「そうですか……」
 菅野は、重い雰囲気で言ったが、デイセラはそんなに深刻にならなくていい。葉月に会い上手くいきそうな気がしているのだと明るく言った。
「イレブンさんは、山で噂を聞かないとなると、案外、黒羊郷の町に身を潜めているのかも知れないですね。
 古来より"敵を知り、己を知れば百戦危うからず"。僕は一度、町を探ってこようかと……」
「そう言えば葉月おぬしは、どうしてここへ来たのじゃ?」
「そ、それは……」「ハ、ハハハ」
 菅野は菅野で、三日月湖からの長い旅をお留さんに話した。ハルモニア解放戦、その後の掃討戦による黒羊側の混乱に乗じて、ここまで抜けてきた。そしてそのあと……本人は自覚していないと言うのだがミーナの方向音痴で山へ入り込んでしまったこと。
「葉月。ミーナちゃん。ありがとう。
 おぬしらと話していると不思議だよ。元気が出てくる」
「そ、そぅですか……初めて言われましたね……何だか照れる、な……」
「葉月。ミーナちゃん。わしは、もう一度、裏山へ行って集められるだけの勢力を集めてくる。
 今、もう趨勢は変わっておるのじゃ。流れじゃ。町へ行ったら無理をせず、今の様子がわかればいい、ここへ戻ってきておくれ。そして……いや」
「イレブンさんですね」
「葉月。おぬし……うん。できれば。イレブンに会いたい」
「はい。探してきます。
 でも、見つかる気が、します」



 今もなお禅を組み続けている。
 ただひたすら無心に……
 ずっと、ここにいた。イレブン・オーヴィル(いれぶん・おーう゛ぃる)は今や苦行の修行僧か、隠者さえ思わせる顔つきで、ただ壁に向かい……。(その間に隠れ家でもあるハインリヒ経営の酒場はキャバクラ「わるきゅーれ」に。だがイレブンはそんなことも知らない。ただひたすら、無心に……イレブンの座する部屋は、キャバクラ嬢たちの控え室になっていたのだが、イレブンは露出度100%の彼女らの誘惑をものともせず。イレブンはただ……ひたすら、無心に……)
 イレブン。
  イレブン。
        数だけでも教祖には勝てない
                         策だけでも勝てない
ならばどうすれば勝てる?
                               何事にも囚われることなく
                    考える
                感じる……
                     ……考える
                    感じる
「……」
 狼と人。
 狼と人は……異なるが戦うものとして一つである
 こうして禅を構えるのも、剣を構えるのも、見た目は大きく異なるが、求道というものとしては一つである。
「……」
 イレブン。
  イレブン。……話しかけないでくれ。何かが、何かがわかりそうなんだ。
 ……さて、我らと黒羊郷の者は異なるのか、一つであるのか
                                  教祖の使う邪悪なる炎と我ら騎狼部隊の疾風の如し風。
                       異なるのか
                              一つであるのか
                         …………異なるのか
                           一つ……
「否」
 ……
 閃いた!
 イレブン。イレブンの出した答。
 全ては異なるが一つである、一つであるが異なる。
 即ち剣禅一如にして人獣一如にして狼羊一如!
 ――立ち上がろう。
 これこそ、勝利への鍵!
 全てを一体とし、自らを自然とするのだ!

 ……いいのか?(く、だめだ。邪念か……マーラめ、去れ!!)
「イレブン」
 イレブンは、目を開けた。
 光が。うっ。びかびかのけばけばしいネオンライト(八十年代仕様)がまぶしい。
 煙草を吹かしたり、お店に出る準備をするキャバクラ嬢に混じって、菅野葉月の姿が、今イレブンの目の前にあった。
「久しぶりですね。
 行きましょう。皆が待っていますよ」
「……。ああ。(…………私の悟りは?)」



 湖から突き出る建物の一部に潜入したデゼル、風次郎、久多。
 彼らは、そこつまり地下神殿の尖塔部分を下り、教祖のいる祭壇の間へと……辿り着けるのか。そして?

 そこに眠る騎凛セイカ……だけどそれはこれまでの騎凛じゃなく、…………


(続。)

担当マスターより

▼担当マスター

今唯ケンタロウ

▼マスターコメント

 執筆が遅れてしまい、皆様に申し訳御座いませんでした。
 シリーズも終盤に差しかかると、ある種の筆の重さをありありと感じる局面に幾度も出会います。それは勿論、いいわるいとかでなく必然のことかとも思います。

 今回は、マスターコメントは短く控えさせて頂こうと思うのですが、十二星華ジャレイラ・シェルタンの死についてのみ触れておこうと思います。
 
 *ジャレイラの死について*
 これは戦いのシナリオだから、ということから直結はしないでしょうが、私がシナリオを書いた当初からジャレイラは戦いの中でこそ死ぬべきだ、それがジャレイラにとって美しい幕の閉じ方だとずっとイメージがありました。この戦いで、最後に仲良くなって終わりというのは、あり得なかったでしょう。と、思います。
 メニエス・レインさんは実は初回から周到にジャレイラ殺害に向けての布石を置いていくアクションをとっていらして、無論、それが当初からの私のジャレイラの死のイメージと合致したからというだけで成功するものではなく、そこは毎回の皆様とのアクションリアクションのやり取りにおいて重ね積み上げた結果での死であったと思います。
 やはり教導団キャンペーンに比べると私のシナリオ自体の判定は緩めですし、シナリオの根底に死の方向に向けてのレールがあったと思えば、殺害は成功しやすく、今回、ジャレイラを何らかの形で守ろうとして下さった方々もいらっしゃったのですが、防止は成功し難しであったかと思います。重ねて言いますが、あくまでイメージとしてあったのみで、決定はしていなかった……それでも、私自身がやっぱりそのイメージを核として持っていた部分もある程度大きいのかなと思います。
 これは当初のイメージの美しさと裏腹に実際に書いてみるとかなり苦い心境にもなったのですが、この前半の章で引きずったイメージを後半の章の展開において昇華することができた、ということは言えるのではないかと思います。結果、私自身最初からまったく予想もし得なかった結果に行き着いた部分もあります。

 私はジャレイラに愛着をもっていましたし、ただそれに対しアクションを重ねて頂いたメニエス氏には勿論敬意を表しますし、守るアクションを書いてくださった皆様にも、嬉しかったと述べたいと思います。
 それに、ジャレイラもまた、私のキャラであってただ私の筆の赴くままに動かされたわけではなく、本当に私の思わぬふうに動いてくれたなと思います。ジャレイラという人物がこの『南部戦記』に入って本当に生き生きとしてきたことには皆様のアクションのおかげも大きいです。最後にジャレイラに対しても、表し難い気持ちですがそのことを表明しておきたいと思います。


 コメント・称号・招待は、脱稿し校了し、目次と実際のページの一致、レイアウト・表示の確認……等等を終えて後立て続けの作業において行っております。正直なところコメントは最低限のことを伝えるのに精一杯ですし、ないことが基本程度にお考えください。誤字脱字等含め、ミスかと思われる箇所が御座いましたらお知らせ下さい。
 尚、(少尉等)位の称号については、キャンペーンシナリオにおける取り扱いとなります。それから、これはマスターのスタンスの問題だと思いますが、私は部隊称号には比較的気を遣っておりますが、基本的に個人の称号についてはぴんと思いついたとき以外は安直に出さないマスターだと思います。その代わり思いついたときには思い切って送ってます。称号を貰った方は珍しいこともあるものだ程度に思っていただければと思います。
 頂いた全てのご感想や私信につきましては有り難く、真摯に受け止めさせて頂いております。マスターコメントにおいても個別コメントにおいてもなかなか何らかの形でもお応えするまで行き着かない現状ですが、そう、ご理解下さると……と思います。勿論、マスタリングの中に生かしていけるよう致します。

 マスターページが実装されました。ここに記せなかったことを、そちらへ一定期間載せることもあるかも知れません。今のところは感想等をあまり載せるつもりはないのですがひとまず更新をお待ち下さい。残念ながら後になってしまいますが、ずっと示したかった『南部戦記』のマップを鋭意製作中です。

 各キャラの登場シーンは、複数ページに分かれている場合もあります。目次を参考にご覧下さい。
 また、今回、ガイドにあるようにアイテム配布が行われます。このリアクション公開後より二週間程度お待ち下さい。