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たっゆんカプリチオ

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たっゆんカプリチオ
たっゆんカプリチオ たっゆんカプリチオ

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    ★    ★    ★
 
「それにしても、この騒ぎはなんとかしないといけないですぅ。もともとは、小ババ様が蒼空学園で暴れたのが原因とは言え、男の子のたっゆんは本物のたっゆんなわたしたちとしては見過ごせませんですぅ」
 ウォーハンマーにパワーアップした鈍器を軽く引きずりながら、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が言いました。
 彼女が通りすぎた後の通路には、点々と何かが倒れています。人と呼んでもいいのでしょうか。どうやら、その中の一つはシャーミアン・ロウだった物のようです。
「でも、その前に暴れたのは大ババ様でしょ。今度の騒ぎも、大ババ様がいけないんだと思うもん」
 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)が、幻槍モノケロスから何か液体を振り落としながら言いました。あっ、鈍器じゃない。いえいえ、ちゃんと叩くという槍本来の使い方をしています。槍は突き刺すものではありません。少なくとも、セシリア・ライトにとっては……。
「メイベル様、遅くなりました。やっぱり、大ババ様は御不在でした。最初にイルミンスール魔法学校で何があったのか聞きだそうと思ったのですが……」
 残念そうに、フィリッパ・アヴェーヌが言いました。元はといえば、この騒動は世界樹の中でゴチメイたちが遭難したときまで話がさかのぼるのですが、今は触れないことにしておきましょう。
「私たちは、できることからしていくですぅ。それが、私たちの務めですぅ」
「はい、メイベル様」
 そう言うと、フィリッパ・アヴェーヌも妖刀村雨丸を腰から外して臨戦態勢に入りました。もちろん、鞘はついたままです。だって、殴るための物ですから。
「避けて通れぬ戦いですか。行きます!」(V)
「うん、やっちゃうんだもん」
「はい」
 意気をあげると、メイベル・ポーターたちは、まだ戦いの真っ最中の食堂に入っていきました。
 しばらく後、食堂からは物音一つ聞こえなくなったのは言うまでもありません。
 
    ★    ★    ★
 
「人類たっゆん化計画? ここみたいですね」
 教室の横に貼られた紙を読んで、桐生 ひな(きりゅう・ひな)が言いました。
「さっそく入ってみるのじゃ。わくわく。きっと、中は大盛況なのじゃぞ」
 ナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)に急かされて、桐生ひなは会場である教室に入っていきました。
 がらーん。
 人がほとんどいません。
「おかしいですわ、幼女とぺったんこのパラダイスであるイルミンでしたら、豊胸マッサージの講義は大盛況だと思ったのですけれど、なんで人が来ないのでしょう」
 藍玉 美海(あいだま・みうみ)は、なんだかもの凄く不満そうです。薬など使わずともたっゆんになれるというふれこみで、豊胸マッサージの実技……、いえ、講義をする気満々だったのですが……。
「こうなったら、沙幸さんのすでに大きい胸を揉みしだくしか……。覚悟はよろしくて?」(V)
 久世 沙幸(くぜ・さゆき)のたっゆんな胸を後ろからつかみながら藍玉美海が言いました。
「えっと、ねーさま、まだ早いと思うんですがー」
 困ったような、もうどうでもいいような感じで久世沙幸が言います。
「えーっと、帰っていいですか?」
 ぽつんと立ちすくんだ桐生ひなが、二人に声をかけました。
「あーん、ひな、助けてなんだもん」
 久世沙幸が、桐生ひなに助けを求めます。
「そう言われても……」
「だめじゃ、ひな。ここはわらわたちも参加してさゆのたっゆんを堪能せねば」
 両手をわきわきさせながら、ナリュキ・オジョカンが言いました。
「それにしても、なんで人が来ないのでしょう」
 すべての元凶、藍玉美海がつぶやきました。
「さあ、ここへ来るまでも人影がまばらであったからのう。イルミンスールは、これほど人がいなかったのかのう」
 ナリュキ・オジョカンも首をかしげます。
「それはないと思いますけれど。ただ……」
「ただ、なんなのです?」
 形ばかり逃げようとする久世沙幸をしっかりと押さえながら、藍玉美海が桐生ひなに聞き返しました。
「ここにくるまでに、小耳に挟んだのですけど。なんでも、最近蒼空学園に出たと言われていたあれが、ついに、イルミンスール魔法学校にも現れたとかなんとか」
「都市伝説ですの!?」
 さすがに、藍玉美海の手が止まります。
「ええ」
 桐生ひながこっくりとうなずきました。
「それで、次々に人が倒れているというまことしめやかな噂が……」
 ちょっと凄みを込めて、桐生ひなが言いました。
「まあ、さすがに単なる噂だとは思うがのう。じゃが、本当だったら困る。今のうちに、思い残すことがないように、思う存分マッサージをしておかねば」
 言うなり、ナリュキ・オジョカンが、前から久世沙幸のたっゆんをむんずとつかみました。
「違ーう。正しい豊胸マッサージはこうなのですわ」
 すかさず藍玉美海が訂正します。
「こうなのじゃな」
「こうですわ」
「だから、これでいいのじゃろう」
「それではしぼんでしまいます。ここはもっとこう……」
「おおっ、なるほど」
 なすがままに揉みしだかれる久世沙幸を見ながら、桐生ひなが律儀にメモをとります。
「二人ともいいかげんにするんだもん! この先はだめだからねっ!」(V)
 すっと、空蝉の術を使って久世沙幸が逃げだしました。
「まったく、調子に乗って……はう」
 さすがに少し怒った久世沙幸が、いきなり後ろからまた胸をつかまれました。
「私だって負けません。さゆゆの胸を大きくするのはこの私です」
「もう充分大きいったらあ!」
 久世沙幸が桐生ひなにむかって叫んだときです。突然、教室のドアが開いて、何かを引きずるようにして新しい受講者が入ってきました。
「あら? ここでも何か争いごとがあるですぅ?」