天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

たっゆんカプリチオ

リアクション公開中!

たっゆんカプリチオ
たっゆんカプリチオ たっゆんカプリチオ

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「何か、今、ずうぅぅーんと、地響きのような音がしたようなしないような……」
 アピス・グレイス(あぴす・ぐれいす)は読んでいた本から顔をあげて、大図書室の中を見回しました。
 近くでは、シリル・クレイド(しりる・くれいど)ネヴィル・パワーズ(ねう゛ぃる・ぱわーず)が互いの胸をもみ合ってじゃれ合っています。
「まったく何をやっているのよ」
 軽く溜め息をついてから、アピス・グレイスは再び読書の世界に戻っていきました。
「ほらあ、そんなにていこうするから、アピスがきづいちゃったんだもん」
 シリル・クレイドが、ネヴィル・パワーズの本物の胸の感触を確かめながら言いました。
「やめてください。それに、今の爆発音は……」
「そんなのいいんだもん。ふーん、やっぱりパッドとはかんしょくがちがうのよね」
「だからやめてくださいって……、もう」
 いっこうに悪戯をやめないシリル・クレイドに、ネヴィル・パワーズが逆襲しました。
「ふふふ、負けないんだから」
 逆効果だったようです。たまらず、ネヴィル・パワーズはその場から逃げだしました。
「あっ、待ってよ」
 シリル・クレイドも追いかけていきます。
「図書室では静かにしてくださいね」
 ドタバタと通りすぎる二人に、飲んでいたコーヒーカップを押さえながらエオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)が言いました。
「あー、このひともネヴィルとおなじたっゆんなんだもん」
 一瞬立ち止まったシリル・クレイドが、エオリア・リュケイオンを指さして叫んだ後、再びネヴィル・パワーズを追って走り去って行ってしまいました。
「いったい何を……なんですかあ、これは!」
 自分の胸を確認したエオリア・リュケイオンが、思わず叫び声をあげて周囲から一斉にシーッと注意されました。
「図書室では静かにしないとだめなんだぜ」
 すっと後ろから手をのばしたエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が、エオリア・リュケイオンの胸を揉み揉みしながら言いました。
「ちょ、何す……」
 思わず叫びかけて、あわててエオリア・リュケイオンが悲鳴を呑み込みました。
「珍しい薬だと思ったんだが、思ったより大きく育ったな。よし決めた、今日はこのまま過ごすように。いや、ちゃんとドレスを着せて……」
「何を言ってるんですか。これはりっぱなセクハラです」
「よいではないか、よいではないか」
 言いつつ揉むことをやめないエース・ラグランツに、さすがにエオリア・リュケイオンがキレました。
「エースの、バカーっ!」
「うぼあっ」
 エオリア・リュケイオンの鉄拳が、エース・ラグランツの顎にクリーンヒットし、遥か後ろへと吹っ飛ばしました。
「わーん。お家に帰ります!」
 泣きながらエオリア・リュケイオンが大図書室から駆けだしていきました。
「もう、静かにしてよ」
 アピス・グレイスが、その後ろ姿を睨みつけます。
「まったく、最近の図書室も騒がしいな。月夜が怒ってなければいいんだが」
 樹月 刀真(きづき・とうま)は、自分を残して一目散に大図書室へ行ってしまった漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)を目で捜しました。いかんせん、相変わらず世界樹の中は迷路です。そんな中から、よく大図書室の位置を毎回正確にあてられるものだと、樹月刀真はちょっと漆髪月夜に感心しました。
「刀真……、こっち」
 先に樹月刀真を見つけた漆髪月夜が手招きします。
「刀真、あーん」
「ん? なんだ、あーん」
 何やら黒い飴玉のような物をさし出されて、樹月刀真はつられて口を開けてしまいました。
 ポイと、その口の中に勢いよく丸薬が放り込まれます。
「苦い!」
 思わず吐き出そうとしたところを、漆髪月夜に口を押さえつけられて、樹月刀真はそのまま丸薬を呑み込んでしまいました。
「月夜、いったい何をす……うおおおお!?」
 怒った樹月刀真が、漆髪月夜に文句を言おうとしたとき、突然胸がたっゆんと盛りあがりました。
「なんじゃあ、こりゃあ!」
「シーッ」
 思わず叫ぶ樹月刀真が、アピス・グレイスに睨まれます。
 あわてて静かにする樹月刀真のたっゆんになった胸を、漆髪月夜がむんずとつかみました。
「はうっ、な、何をする」
 顔を赤らめて、樹月刀真が漆髪月夜に言いました。
「刀真は、時々……私の胸をつかんでる、だから……これは当然の権利」
 そう言われてしまっては、樹月刀真としても、強く言い返すことができません。
「でも、私のより大きい。なんか……むかつく」
 樹月刀真の胸をつかんだまま、漆髪月夜が軽く柳眉を吊り上げて言いました。
「そんなこと知るかよ!」
「いいかげんにしてよ!」
 叫ぶ樹月刀真に、読書を邪魔されっぱなしだったアピス・グレイスがついにキレました。
「どっかいっちゃえー!!」
 いきなり、アピス・グレイスはドラゴンアーツの拳圧を樹月刀真たちにむけて放ちました。
「危ない!」
 要人警護の能力を駆使して、樹月刀真が金剛力でそれを防ぎます。
「刀真、ここで戦ったら、本が傷つく」
「ああ、分かってるよ」
 でも、原因はお前だと言いたいのをグッと我慢して、樹月刀真は漆髪月夜をひょいと肩に担ぐとその場から逃げだしました。
「待てー!」
 怒り狂ったアピス・グレイスが追いかけてきます。
「しつこい。ああ、白花じゃないか。なんというタイミングで戻ってくるんだ」
 樹月刀真は天を仰ぐと、すれ違い様に封印の巫女白花を片手でひょいとだきあげました。そして、そのまま走り続けます。金剛力があるからこそなせる技です。
「逃がさないんだから」
 アピス・グレイスが再びドラゴンアーツで攻撃しようとしてきます。狭い通路ですから、逃げる場所がありません。
「白花、なんとかできないのか」
「えっと、やってみます」
 封印の巫女白花が、神子の波動を放ちました。
「へっ!?」
 ドラゴンアーツを使っていたアピス・グレイスが、突然剛力が消えてしまい、バランスを崩して倒れ込みました。
「きゅう……」
 そのままもんどり打って転倒し、床で頭を打って意識を失ってしまいます。
「やった……あっ、あれ!? 重い……」
 勝ち誇った樹月刀真でしたが、急に力が抜けてしまい、あっけなく漆髪月夜と封印の巫女白花の重さに押し潰されてしまいました。
「きゅう……」
「刀真……失礼。そんなに、重くない」
「ごめんなさい、間違って、刀真さんの力も消してしまいましたー。あーん、スカート放してください。脱げちゃいますー」
 気絶した刀身がつかんだままのスカートを必死に押さえながら、封印の巫女白花が叫びました。