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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)
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「何を言うか、小娘!」
 ダンツオがその時、声を上げた。
「我らの命はケセアレ様と共にある。我らの屍を超えていく覚悟が出来ていないなら、戦いなぞせず、ケセアレ様に命を差し出すがいい!」
「…!」
 赫夜はダンツオの言葉に覚悟を決めたようだった。
「ではこれから、私は夜叉になろう…この世の生が終わった後、私は存分に地獄に墜ちてやるわ!」
 赫夜の紅い目がぎらり、と光を放った。
 神野 永太(じんの・えいた)は、その赫夜の気迫に一瞬気圧されたが、赫夜の覚悟を知り、自分も怪力の籠手で部下達に挑んでいく。
「やるって言うなら、徹底してやるまでだ! 赫夜さんを守る!」
 肉弾戦に怯むことなく、永太は次々と部下たちを倒していく。
 如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は「ディバインダンサー」で、赫夜と共にケセアレに斬りかかるが、アンジェラ隊のフランチェスカが巨大なドゥサックで正悟を、ベアトリーチェがクレイモアで赫夜を防ぐ。
「ケセアレ、あんたが暴走した結果、藤野姉妹の両親が死んだのか、行動の結果死んでしまって、暴走したのかは知らんが…その後でも守れたはずの真珠さんを巻き込んで苦しめ、傷つけた。その馬鹿げた考えで…俺はそれを許さない!! 人の命を何だと思っているんだ!」
 ギリギリとフランチェスカのドゥサックと刃を合わせながら、正悟はフランチェスカの背後にいるケセアレに鋭い視線と共に言葉を投げかける。
「ぼうや、口が過ぎるわよ」
 フランチェスカがドゥサックをくるり、と廻すと正悟の「ディバインダンサー」が一瞬、手を離れ、くるくるっと宙を舞う。
「しまった!」
 しかし、玲がナラカの蜘蛛糸を使い、「ディバインダンサー」を捉え、正悟の手元に戻す。
「たすかった、玲さん!」
「礼にはおよびません」
 重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)は、スキル【機晶技術】【博識】をフル動員し、六連ミサイルポッドの弾頭に電撃を放電するギミックを仕掛け、ケセアレの動きを止めようとするが、元ネッリ隊やダンツオ隊がそれらを体を張って阻止し、重火器で打ち落とす。しかし、リュウライザーはライトニングウェポンで、部下達を数名、捕獲した。
「全てを制圧するのは無理かも知れません…しかし、無用な血はやはり流すべきではないでしょう…捕虜の方々には大人しくしていただこう」
 ダンツオの宣言を聞いていたリュウライザーだったが、出来うるかぎり、この状況を沈静化させたいと考えていた。
 菅野 葉月(すがの・はづき)は、想像以上にケセアレの剣の腕に、赫夜を守らなければ、と赫夜を守るため、側につく。
「ミーナ! 正悟君、玲君、赫夜君の側を固めてください!」
「分かった!」
 正悟も「ディバインダンサー」を持ち直し、赫夜の背後を守った。その瞬間、赫夜目掛けてダンツオがスティレットを投げつける。
「危ない!」
 葉月はそれに気がつくと、赫夜を咄嗟に突き飛ばすが、スティレットは葉月の腕に突き刺さる。
「葉月!!」
 ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)が叫ぶ。
「葉月殿!」
「大丈夫、かすり傷です、それよりも赫夜君が無事で良かった…」
「バカ葉月! あんたが怪我をしてどうするの!?」
 ミーナは誰も傷付いて欲しくない、そんな気持ちを心の底に隠し持っていたのだ。
「ミーナ、大丈夫だったら」
 葉月はスティレットを自分の腕から抜くと、うっと声を一瞬上げるが、それを制服の一部を裂いて止血してしまう。
「ミーナさん、葉月殿をサポートしてやってくれ…葉月殿には下がって欲しいといっても、聞きそうにないからな」
「俺たちも、参戦するぜ!」
「だ、誰だ!?」
 パワードスーツを着ているため、外見では判断出来なかったが、声で赫夜たちは分かったらしい。
「エヴァルト殿に、ロートラウトさんか!」
「ここは任せろ!」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)がケセアレをパワードスーツで狙うが、ネッリ隊が強化された肉体で防いだ。
 ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)がケセアレの「カンタレラ」を耐光防護装甲でダメージ軽減、ブースターのスピードで接近しショットガン、シャープシューターで狙いをつけて、味方に当たらないように撃つが、これもネッリ隊が防ぐ。
 シャープシューターやショットガンに撃ち抜かれるネッリ隊に逆にロートラウトは、怯んでしまう。
「あなたたち、なぜ、そこまでするの!」
「ケセアレ様の為なら、我々は命など惜しうはないわ…!!…我らは孤児であった。その日一日生きることも難しい、人間の尊厳などない境遇であった。その孤児の我らを救うてくれたのは、ケセアレ様だ…若きケセアレ様が貧しき者を救うてくれ、ヴァレンティノ家の治める土地を改革されたのだ。我々は自ら肉体改造を施したのだ。卿らになど負けぬ!」
 隊長代理のジーノがそう呟く。

 ケセアレ・ヴァレンティノ。イタリアのマフィアの5本の指に入る一家であったが、他の四家を次々と粛正し吸収し、一大勢力を築き上げた人物。
「私は父殺しすら行ってきた。父は愚かで頑迷で、女と酒に溺れ、ルクレツィアさえも政略結婚の駒として使おうした。私の二つ名は『呪われたケセアレ』。お前達とは格が違う」
 そうにやりと笑う黒髪に漆黒の瞳のケセアレは、恐ろしくも美しい悪魔のようであった。

-----その一方で、女の戦いが繰り広げられていた。
 瓜生 コウ(うりゅう・こう)がアンジェラ隊に交戦にあたり、
「オレが着用しているブランドはアメリカ製だ。色はブラック。ヨーロッパのランジェリーも上質だと聞くぜ。いざ参る!」
 と空飛ぶ箒で飛行し、アンジェラ隊たちの射程外からスナイパーライフルで狙い撃つ。
「アメリカの下着? 随分とサイズが大きいのね。アメリカのステッチは雑よ! そういう点ではヨーロッパのブランドには負けるわよ!」
 アンジェラ隊のマリアがショットガンで応戦する。
「何を! アメリカの『ビクシー』は全世界の女の憧れの的だ!」
「それを言うなら、『ルペラ』に負けるものはない!」
 と、女性としてどうかと思われるような発言を繰り返しながら、戦う二人の間には奇妙な友情、好敵手の意識が芽生えてきた。
 【汎都の王(ぱんつのおう、あるいはパン・ツァーリ)】こと、最強の鍵ジョイン ジョイント’キィ(さいきょうのかぎじょいん・じょいんときぃ)
「コウはティセラよりも胸が大きい。コウはティセラよりも胸が大きい。大事なことだから二回言った。だが、赫夜には勝てぬようじゃのう」
 と呟きながら、コウに、相手の着けている下着の種類、色、ブランドから相応しい呪文を伝え、戦闘を有利に導こうとする。
 このふたりにあきれ果てるアンジェラ隊だった。
「下着の言い合い合戦なんて、長い傭兵生活でも無かったわ…」
 さすがのアンジェラでも頭を押さえる。
 そこに国頭 武尊(くにがみ・たける)が現れた。