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なし

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KICK THE CAN2! ~In Summer~

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KICK THE CAN2! ~In Summer~
KICK THE CAN2! ~In Summer~ KICK THE CAN2! ~In Summer~

リアクション


終章


 時計の針は二時を指していた。ゲーム終了である。
「あ、気がついた!」
「円ちゃん……大丈夫ですかぁ……?」
 横たわる円を介抱しているのは歩と日奈々。
「……ボク、ナラカを見たよ…おばあちゃんが……ぐ」
 虫の息とはまさにこのことだった。
「缶は……倒れたかい……?」
 身体を強く打ったせいか、肝心の部分の記憶がない円。
「……うん」
 歩が答える。
 それは嘘だ。彼女の速度は時速にして二百以上は軽く出ていただろう。しかし、あまりにも早すぎて伸び、わずか一センチ差で缶に届かなかったのだ。
 彼女が缶を通り過ぎた後、守りが缶を死守し、そのまま時間まで持ちこたえたのである。
「よかった……安心して、逝ける」
 円は満足げな顔をし、静かに瞼を閉じた。

「円ちゃぁぁあああああああん!!!」
 
「あ、ごめん。ほんと、リジェネレーションに集中したいから少しだけ寝させて」
 さすがに無茶し過ぎである。

            * * *

「俺は……生きているのか?」
 刀真は目を覚ました。
 だが、そこは気を失う前とは異なる風景だった。
 まるで戦争でもあったかのように荒れ果て、周りには彼の知る顔が倒れている。
「ヤバイなコレ。だけど、この惨状はなんだ?」
 気を失ってる間に何があったというのだろうか。
「起きろ、正悟、佑也!」
 すぐ近くに倒れている二人を叩き起こす。
「一体何が? ってこれどうしたんだ!?」
「ここ、海京だよね。ナラカじゃないよね?」
 目覚めてすぐに戸惑う如月兄弟。いや、名字が同じだけだが。と、いうより缶蹴り参加者に如月が四人いるが、そんな如月ってありふれた名字だっただろうか。
「俺にも分からないが、気を失っている間に何かがあったらしい」
 さすがにロケットランチャーでいろいろなものが吹き飛ばされたなどとは思うまい。
「それより、月夜と白花は?」
「ふえーん……とうまさ〜ん!」
 コンテナから、白花が出てきた。その中でぷるぷる震えている月夜の姿が見える。
「つくよさんが、つくよさんが〜!」
 それ以上にショッキングなことがあっただろうが、いろいろと混乱しているらしい。
「月夜」
 刀真が静かに近付いてく。
「目撃者の記憶はちゃんとヒプノシスで消しておいた、だから大丈夫だ」
 だが、ヒプノシスは『催眠術』とは言うが、眠らせるだけで記憶操作は出来ない。とりあえず、したことにしておく。
「何も見てないよな、如月兄弟!」
「うん、俺は何も……なんかエミカさんに紫電槍・改で攻撃されたのを最後の記憶が」
「俺も、樹月君に投げられて頭打ったことしか覚えてない」
「……」
 涙目で二人を見上げる。月夜。
「あの、スンマセン。俺も一応男の子なんで……覚えてないけど、ほんとに」
(待て、二人ともほんとに覚えてないのか?)
(本当だよ)
(正直何か見た気がするけど、ほんとに思い出せないんだ)
 表情からするに、本当に「今は」忘れているらしい。それだけ頭にダメージを受けたのだろう。
「そうだ、今度の休みに俺達で何でも奢るから……泣きやんでくれよ、なっ?」
「ホント?」
「ああ、約束する」
 そこで、ようやく月夜が泣き止む。
「……うん、わかった」
「約束、ですよ」
 なんとかこの場は丸く収まる。
(二人とも、念のため予算は多めに用意しといてくれよ?)
(あ、やっぱり俺らも?)
 

「正直、こんなことになるとは思わなんだ」
「ほんとですよ。こんなのスポーツじゃなくて戦争じゃないですか」
 それなりに楽しんだ様子の静麻と呆れ気味のレイナは、天沼矛近くにいた。
「軍師、なかなかいいものが撮れたぞ」
 そこへ、恭司がやって来る。
「あの惨事の中、よく無事だったな」
「お互い様だろう。正直カメラを死守するので精一杯だった」
 二人は、缶蹴りの最中に撮影した佑也の映像他、観察したことによる情報交換を行う。なお、恭司は佑也が目覚めるところまで収めている。
「ほう、これはなかなか……」
「さすがに撮られてるとは思ってないだろうな」
 静麻と恭司は何やら企んでいるようだが、それが明らかになるのはもうしばらく後になってからだろう。
「そういえば、今回使うはずだった、この特別弾どうするかな?」
 静麻がショットガンを指差す。
「特別弾?」
「シュールストレミングの臭いを凝縮した最臭兵器弾だ」
 なお、この缶詰、臭いは本当に洒落にならないくらいヤバイが、味は美味であるとか。臭いをかぎさえしなければ普通に食べれるらしい。
「……それは使われなくて良かったかもしれん」

            * * *

「は、俺は何を?」
 周は学生寮の屋上で目を覚ました。
「気がついたか」
「ノイン? どうしたんだその格好?」
 彼の隣には今回審判を務めていたノインの姿があった。
「今は助手という立場で研究員をしている。この方がそれっぽいと聞いたのでな」
 ノインが指を鳴らすと、結界が解除された。
 それまで壊れていた街のあらゆる物が元通りになる。
「あまり無茶はするなよ」
 そのままどこかに転移してった。
「……ノイン、何も置き去りにしなくたって」
 しかし、彼の視線の先にはそんな憂鬱が吹き飛ぶ光景があった。
「あれは、天御柱学院の女子寮!? こうしちゃいらんねーぜ!」
 すぐさまナンパへと繰り出そうとする周であった。

            * * *

「何もかも元通りとは、すごい術だな」
「だけど、こうなるとさっきまでの戦いが信じられないよね」
 アリサと凛は、天御柱学院の前にいた。
「ああ、酷い目に遭った」
「智宏さん!?」
 そこへ合流した智宏は、小麦粉まみれでしかも動物のものらしき唾液がついていた。
「なに、ちょっと囮になっている時にいろいろあってさ」
 その姿で、さっきまでの缶蹴りが現実だと思い知る。
「流石に粉まみれ汗まみれ唾液まみれではね……プールでも行こうか」


「オリガ・カラーシュニコフ、エカチェリーナ・アレクセーヴェナ」
 終了後、すぐにイコンデッキへ帰投したオリガとエカチェリーナだったが、早速教官からの呼び出しを食らっていた。
「まったく、今日の訓練機体ナンバー以外を発進させた整備科も問題だが、一体何をやっている!?」
 目の前の女性教官から叱責の言葉が飛ぶ。何を言っても言い訳にしかならないため、下手なことを口に出来ない。
「二人とも、一週間の停学処分だ。その期間、イコンの使用を禁止する」
 これは結構重い処分である。
「加えて二人にはその一週間の間、極東新大陸研究所海京分所に『研修生』として出向してもらう。明日からだ」
 教官曰く、当初の研修生から欠員が出たため、その枠を埋めるために二人に行けと命じたのである。
「これが研修プログラムだ」
 それを見ると、一週間寝る時間以外はほとんど何らかの実習や座学という鬼のようなスケジュールだった。
「いいな、明日からだ。返事は?」
「はい!」
 有無を言わさぬ圧迫であった。

「まさか、ここまでとは思いませんでしたわ……」
 しょんぼりとしながら、廊下を歩くオリガ。
「分かってるわよね……オリガちゃん?」
 どうやら、オリガの苦難はまだ続きそうだ。


「ルカ、ここにいたらつまみ出される気がするんだが?」
「まだ大丈夫よ。怒られたら移動すればいいんだし」
 缶蹴り後、ルカルカら四人はイコンデッキの上で太平洋と青空を眺めながら昼食をとっていた。
 なお、弁当はダリル作である。
 ちなみに、ここにはもう三人ほどいる。
「うん、美味しい。降りろって言われたらこれ上げれば大目に見てくれるかも」
「そう上手くはいかないだろ」
 そんな彼女達の前を、訓練中のイコンが飛んでいく。
「イコン、教導団でも造られないのかなー……」
「さすがに技術を教えてもらわなきゃ無理なんじゃないか?」
 カオルが言う。
「なんとなく、団長も秘密裏に交渉してそうだけどな」
 と、垂。
 彼女と栞を含めた教導団の三人がゲーム終了後合流し、一緒に昼食を取っているというわけである。
「お、そうだ。俺も今日は自信作を作って来たんだ」
 そう言って垂がおにぎりの入った包みを出す。
「うわぁああああ!!!」
 それを見た瞬間、トラウマが蘇ったのか、カオルが狼狽した。

            * * *

「そっか、まだ昼なんだよねー」
 天沼矛前、エミカはベンチに腰かけてゆっくりしていた。
「みんなまだ元気あるのかなー?」
「さすがにあれだけ動いてるんだから、疲れてるんじゃないかしら?」
 アルメリアが呟く。
「取り合えず、誘うだけ誘ってみーよっと」
 今回の参加者にメールを一斉送信する。文面はこうだ。

 「みんな、海行かない?」

 どれだけの人が乗るのかは分からないが、せっかく海の近くに来たんだし、せっかくこうやって多くの人が集まったのだからみんなとまだ遊びたいのだろう。
 結界も解かれ、街は何事もなかったかのように元通りだ。
 海京で「缶蹴り」をやってきたと言っても、街で普通に遊んできたとしか、誰も思わないだろう。
「お、来た来たっと。じゃ、集合場所は……」
 まだ一日は終わらない。
 ただ、彼女にはちょっとした引っ掛かりがあった。だけど、どうしても思い出せない。

「あれ、なんか忘れているような……」

 天沼矛の陰で倒れているモヒカンに、彼女は一体いつ気がつくのだろうか。


<了>

担当マスターより

▼担当マスター

識上 蒼

▼マスターコメント

 お待たせ致しました、缶蹴り第二弾です。
 当初、アクション見た時はそこまでカオスな展開にはならないんじゃないかと思いましたが、蓋を開けてみたら後半がおかしなことになってます。
 シリーズものはリアクションの後半に複数のシーンが収束するように書いているつもりですが、今回は何もまとまっていかず、バラバラなまま進んでます。
 また、今回は一ページに出番が凝縮されてる方が多いと思います。とはいえ、複数ページに跨っている方もおりますので、お見落としなさらぬよう。
 なお、エリア希望出してる方はちゃんと希望通りになっております。今回はお任せが多めでした。

 そして、大変申し訳ないことに缶蹴りの実施時間帯をどこにも明記してなかったために、朝用から夜用まで様々なバリエーションが来てしまいました。シナリオではより多くのアクションを反映するために、あの時間帯にしました。ご了承下さい。
 
 なお、シナリオそのものがネタのようなものですが、せっかく海京が舞台でしたので、そこに住まう人達の日常みたいなシーンがちょくちょく入ってます。こっちの描写の仕方が「いつもの」識上です。そんなに変わらない? なら気のせいということで。

 おそらく、単発物はここで一旦お休みです。
 次回以降シリーズものが続きそうですが、宜しければそちらの方でお会いしましょう。
 この度はご参加下さり、ありがとうございました。

※9月24日 キャラクターのアクション主体が分かりにくい箇所、及び誤字・脱字を修正致しました。