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【リレー企画】客寄せパンダは誰が胸に その1

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【リレー企画】客寄せパンダは誰が胸に その1

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 客寄せパンダのいる島へ 
 
 
 島を目指すティファニーの中型飛空艇を追うように、様々な乗り物が飛んでいた。
 一番多く見られるのは小型飛空艇だ。改造され4人乗りになっているもの、ミサイルポッドを積んでいるもの等も中には見受けられる。
 次いで多いのは空飛ぶ箒だ。特にイルミンスール魔法学校の生徒が好んでこの乗り物を使用しているようだ。
 それ以外では、佐野 亮司(さの・りょうじ)のようにサンタのトナカイを利用している者がいるかと思えば、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)はパートナーと共にレッサーワイバーンを4体連ねて飛行している、といった様子だ。
 時折中型飛空艇は向かう方角を変え、そのたび追う者たちも新たな進路を取った。追う者たちの中には速い乗り物を使用している者もいる。不規則な航程は、行く先を推測されて他のものに先行されるのを恐れてのことだろう。
 頭上に広がる空はよく晴れ上がっている。
 眼下に広がるのは一面の雲海。
 どこまでもどこまでも、単調な景色が続いている。
 葦原明倫館が出来てこの辺りを通る者たちも増えた。けれど、遭難のニュースも聞かれるようになった。
 飛んでいる感覚もおかしくさせてしまいそうな、この単調さが眠りや油断を誘うのだろうか。
 空の蒼と雲の白。
 2つの狭間を生徒たちは飛び続けた――。 
 
 
 そして遂に、ティファニーの飛空艇は高度を下げ始めた。
 雲海の中に浮かんでいるのは小さな島だ。
 特にこれといって目につくもののない、何の変哲もない島……ここに客寄せパンダがあるのだろうか。
 眼下にぐんぐん迫ってくる島の景色は概ね緑。
 それが近づくにつれ、緑が森と草原に分かれていること、島中央だけが緑ではなく茶色で、そこに建物の名残らしきものがあるのが見て取れるようになってくる。
 そうなるともうティファニーの先導は不要だ。皆は一斉に島へと降下して行った。
 やはり速いのは光る箒に乗った者、次いで小型飛空艇とレッサーワイバーン、空飛ぶ箒の者は中型緋空艇とほぼ同じぐらいで、サンタのトナカイはその後を追いかける形になる。
 今までティファニーの飛空艇を先頭に並んでいたのが崩れ、皆の意識が下方の島へと向いたその隙をついて、ガートルードは攻撃を仕掛けた。
 ガートルードにとっては他校の生徒は殺し屋であり精神に異常を来たした者であるという認識だ。殺さなければ数多の波羅蜜多実業高等学校の生徒たちが惨殺されてしまう。そんな焦燥が他校生を始末しなければという意思に結びつく。
 先手必勝。
 最大のライバルとなることが予想されるティファニーたち、明倫館勢力は真っ先に殺しておかねばならないと、LCのシルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)ネヴィル・ブレイロック(ねう゛ぃる・ぶれいろっく)パトリシア・ハーレック(ぱとりしあ・はーれっく)と共に、4体のレッサーワイバーンを繰り、一斉に中型飛空艇に炎を浴びせかける。
「何事デースカー?」
 飛空艇を襲った衝撃に、ティファニーは外を確認し、ガートルードらの姿を認めた。
 こちらを撃沈しようと攻撃を畳み掛けてくるガートルードらに、ティファニーも反撃。飛空艇から発せられた幾状もの光の線がレッサーワイバーンを貫く。そしてまた、ティファニーたちの危機に気づいた葦原明倫館の生徒たちも、降下を中止してレッサーワイバーンへの攻撃にかかった。
 翼を撃ち抜かれ、雲海へと落ちて行くレッサーワイバーンを何とか立て直そうとしながら、シルヴェスターはガートルードに呼びかける。
「もう無理じゃけぇ、撤退しょぉで」
 ガートルードは軽く舌打ちしたが、このままでは囲まれて倒されて終わりだ。
 シルヴェスターの警告を受け入れて、ガートルードらは退避して行った。
 大きな被害とはならなかったが、ティファニーの側も無傷というわけにはいかない。
 戦闘の為に時間をロスした上に、飛空艇の被害の確認をする為にゲイルが残ることになったけれど、ティファニーはまったくへこたれていない。
「パンダ像をこの飛空艇の中に運び込みさえすれば明倫館の勝ちデース。みなサン、頑張りマショウ!」
 まだ明倫館優位なのに変わりはないと、勇んで出かけて行く。
「あ、ティファニーさんたち、やっと来たんだね。他の乗り物で来た人たち、もう先に行っちゃったよー」
 遺跡に入る手前で待っていた鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)が、早く早くとティファニーたちを手招いた。
 この島に来るまでも氷雨は、他校生の前に行って種モミを撒き、クロスファイアで燃やしてみたりと、人に被害が及ばない範囲で少しでも足止めになればと、様々な方法を試していた。
 けれどその足止めも、ガートルードたちの妨害によってすっかり取り戻されてしまった。
「まだ後から来る人がいるかも知れないから、ボクはこで足止めしておくよ。だからみんな、パンダさん像、頑張って持ってきてねー」
 客寄せパンダがどんなものなのか、氷雨にはよく分かっていない。けれど、葦原明倫館の生徒が増えれば、友達もたくさん増えてきっと楽しい。
 頑張って来てねとにっこりと皆を見送る氷雨に、一緒にティファニーの飛空艇に乗ってきたヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)が声をかける。
「みんなと行ってきたら? 足止めが必要なら、あたしがやっておいてあげるわよ♪」
 同じコミュニティに所属しているよしみだし、とヴェルチェがにっこり笑えば、
「その通りじゃ。ここは任せてくれて良いのじゃぞ」
 クレオパトラ・フィロパトル(くれおぱとら・ふぃろぱとる)も、氷雨が1人ここに残るのでは寂しいだろうと、遺跡に入るように促した。何故かクレオパトラはランドセルを背負っている。見た目にはあっている鞄ではあるのだけれど、氷雨がついじっとそれに目を留めると、クレオパトラはじりっと方向をかえて、出来るだけそれが氷雨の目に入らないようにした。
「あまり見ないで欲しいのじゃ。……さすがに恥ずかしいぞえ」
「大丈夫よクーちゃん。それ、すっごく似合ってるわよ♪」
「……だから嫌なのじゃ」
 2人のやり取りを氷雨は面白そうに聞いていた。けれど、遺跡に入ったらという勧めは辞退する。
「ボクはここでいいよー。アンデッドに効くかどうか試してみたいし」
「試す?」
「えへへ。これだよー」
 氷雨が嬉しそうに鞄から取り出したのは、いくつかの怪しい銀色の弁当箱。
「蓋がかたかた動いてるように見えるけど」
「そうそう。きちんと蓋しておかないと、大変なことになるんだよねー」
 答えているうちにも骸骨を発見し、氷雨は弁当箱を手に取った。
「危ないからどいててねー。いっくよー、必殺デローン丼ー!」
 骸骨の口元へと氷雨は弁当箱に入った物体を投げつける。
 蓋が外れ、びしゃりと緑色の怪しい物体が飛び出した。それは骸骨の口から中へと侵入し……。
 べちゃっ。
「あ、落ちた。そっかー、食道とかないもんねー」
 戸惑いもぞもぞするデローン丼の様子を氷雨は笑った。
「ごめんごめん、今度はちゃんと食べてくれそうなアンデッドか人かにするからねー」
 でろでろしたものに話しかけている氷雨を眺めつつ、ヴェルチェとクレオパトラはこっそりと囁きかわす。
「これでは、落とし穴を掘るのは無理なようじゃな……」
「飛空艇にも人が残っちゃったし、なかなか計画通りにはいかないわね」
「今回は諦めるかえ?」
「まさか。良いオトコを集めてパ〜ラダ……ばっ、ち、違っ! 孤児院、孤児院のために頑張るのよ!」
 ぽろっと口を滑らせそうになり、ヴェルチェは慌てて言い直す。
「しーっ! 大きな声を出すでない。しかし、どうするのじゃ?」
「仕方がないわね。落とし穴はなしにして、他のものはそこの角の向こうに、ね。ちょっとやりにくくなるけど、まあ、何とかなるんじゃない?」
 ぼそぼそと相談を終えると、ヴェルチェたちはじゃあここは任せると氷雨に言い置いて、狙いをつけた場所へと移動して行った。
 
 
 ティファニーの飛空艇に乗っていた者がしばし足止めされているうち、他の者たちは遺跡へと足を踏み入れていた。
 客寄せパンダを目指す者たちは駆け足に、遺跡を調べようという者たちは周囲の様子に目を凝らす。
 小規模な家が処狭しと建っている街には、道らしい道がない。家々の間に人が通れるほどの隙間があるだけだ。
 それもところどころ、ひどく崩れている箇所があり、進む彼らの行く手を塞ぐ。
 どこもかも埃っぽい街の残骸の中、家と家の間を、あるいは上空を通り、皆はそれぞれの目的へと向かう……。
 
 
「神体像なら意思があるかもだし、仲間姿のがいいよね。似合う?」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)はくるんとその場で回って見せた。可愛いパンダのデカパジャマを着てはいるけれど、その中にはきちんと装備を忘れていない。足下には滑落防止の作業用ゴム底靴。暗いところに入るときのためのマグライト。ロープやナイフ、手当てキット等に非常食のチョコバー。
 着ぐるみでなくパジャマを選んできたのも、動きやすさを考えてのことだ。
「一応軍人だからね、備えは、してナンボよ」
 これならば大抵のところは進める、とルカルカはパンダの胸を張った。
「でもルカルカさ〜ん、今日はこんな小さくて可愛い女の子のパートナーしか連れてきてないんですか? よ〜し、お姉さんが守ってあげるから安心してね!」
 ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)に励まされ、夏侯 淵(かこう・えん)は憤慨する。
「俺は男だ!」
「あれ。なぁ〜んだ淵ちゃんだったのか〜」
 ライゼは悪びれずに笑った。
「相変わらず小さくて可愛いから、女の子と間違えちゃった〜。あ……でも、男の娘なんだから良いのか」
「男の娘違う!」
 淵はムキになって言い返した。こういういい反応をするものだから、からかわれてしまうのだろうけれど。腹立ち紛れに、淵は朝霧 垂(あさぎり・しづり)を指す。
「お前のパートナーこそ格好不真面目だろに。『垂ぱんだ』!」
 垂が身に着けているのは、ふかふかころころのパンダの着ぐるみ。頭の部分は帽子のようになっていて、垂の顔がひょっこり覗いている。
「俺が『垂ぱんだ』? んじゃルカルカは『ルカぱんだ』だな」
「えー、ルカは『垂れルカっち』で、タレちゃんが『垂タレちゃ』」
 で、とルカルカは淵の頭に手を置いて、『垂れちみっ子』と命名した。
「ちみっ子いうな!」
 英霊としてパラミタに蘇ったのは良いけれど、前世と比べて格段に足りない背丈が淵には悔しくてたまらない。
 ルカルカと淵のやり取りを楽しみつつ、ライゼは垂に、良いんだよね、と笑顔を向ける。
「パンダ像を調べに来たんだから、パンダの気持ちにならなくっちゃね! ルカルカさんだってそうじゃん〜」
「ルカは『ルカだから』で説明になるから良い」
「ちょ、何よそれぇ」
 あっさり片付けた淵に、今度はルカルカが抗議した。
 今回、パンダの格好をしたり、ティーカップパンダたちを連れて来たりしているのは、やはりこの島にあるというパンダ像に引っかかりを感じているからだ。
「人を集める効果があるんなら、それこそ商人なんかが死に物狂いで奪い合うはずなのに……」
 垂は周囲を見回してみる。
 崩れかけたような建物があるから、街だったというのは確かなのだろう。けれど今はもう住人の姿はない。
「もしやパンダ像は魔像で遺跡に封印されていたのではないだろうな」
 淵はこの街に何が起きたのかを教えてくれる品はないかと、家々を見渡した。家の規模はどれも小さい。簡単に建てられた平屋の家ばかりだ。
「危険があるかも知れないから、像は一時団で保管。調査完了後にその効果によって、固定で置くとか各校を定期巡回するとか相談するのが良いと思うんだけど」
 それがルカルカの意見なのだけれど、像争奪に燃えている者たちがそんな提案を受け入れてくれるとも思えない。まずは手に入れて保管しないと、教導団に像は回って来ないだろう。
 ルカルカたちは周囲を軽く調査した後、パンダ像の回収に向かうのだった。
 
 
 島に到着するとすぐ、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)らはパンダ像を目指して駆けだした。
「こちらです」
 進む方向は空京稲荷 狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)が指示をする。島にいる害意持つ者たちを感知して、そちらの方向へと進んでいるのだ。
 地祇の狐樹廊としては、空京を更なる都市へと発展させたいという願望がある。その為には、並み居るライバルに先んじてパンダ像を手に入れ、空京に客を寄せねばならない。
「客寄せパンダを手に入れたら、お友達たくさん呼べるんだな」
 どこまで理解しているのかは不明だが、童子 華花(どうじ・はな)もパンダ像を手に入れようと必死に足を急がせていた。友達がたくさんになるのは嬉しいことだし、こんなに狐樹廊が欲しがっているのだから手に入れるのを手伝ってあげようという気持ちもある。
「葦原明倫館どころか、蒼学生としても危険な橋を渡ろうとしてる気がするんだけど……」
 リカインはパンダ入手には消極的だった。いかにも怪しげな像を手に入れたりしたら、何が起きるやら分からない。けれど、だからといって、パートナーたち……というか、華花を放っておくわけにはいかない。
「とりあえず、パンダを見つけるまでは手伝うけど、そこから先は知らないわよ」
 華花を守りはするけれど、戦力としてあてにしないように、とリカインは狐樹廊に念を押しておいた。
「分かっています。ですがそこまではよろしくお願いしますよ。……来ます」
 狐樹廊が警告を発し、身構える。そこに干からびた人のようなものがよろよろと現れた。おぼつかない足取りながらもこちらに手を伸ばし、掴みかかってくる。
「ハナ、下がって」
 華花と戦闘行為を望まないソルファイン・アンフィニス(そるふぁいん・あんふぃにす)を背にかばい、リカインはラスターエスクードを構える。
 相手がしつこければ助力も、と思っていたが、狐樹廊の攻撃数回ですぐに片はついた。
「怪我はありませんか」
 ソルファインに聞かれ、狐樹廊は平気だと首を振る。
「強い相手ではありませんでしたから。……元は子供だったのでしょうか」
 力を失って転がったむくろは華花と同じ位の身長だ。既にミイラ化しており、死んでからかなり年月が経っているように見える。
 ソルファインは痛ましげに眉を寄せた後、なるべく早くパンダ像を探そうと皆を促した。
「客寄せパンダ……どのような力を持っているのかは分かりませんが……僕たちも吸い寄せられているのかも知れませんね。『客寄せパンダ』というその名前の力だけででも」
「それ見つけたら、籠に入れずに持っててもいいか?」
 籠に入れるのは嫌だからと言う華花に、ソルファインは肯く。
「僕も籠に入れるのは反対です。封印なんて気持ちのいいものではありませんから」
 パンダの力を恐れる気持ちと、それでもその力を弱める籠には入れたくないという気持ち。2つの相反する気持ちを抱いたまま、ソルファインは再び走り始めた狐樹廊に着いて行く。
「また来ます。今度は2体」
 狐樹廊が進んでいるのはディテクトエビルの反応が強い方……ということは、結果的に敵対者がいる方、いる方へと近づいていくのと同じで……彼らはひたすら街のアンデッドと戦い続ける羽目になったのだった。
 
 
「もし手に入ったら、うちの楽団にもちょっと貸して下さいねぇ」
 人がたくさん集まるパンダ像があれば、作りたての楽団『スノードロップ』にももっと人が集まるに違いない。人が集まれば、みんなで曲を練習して、街の人を楽しませることも出来るようになるかも知れない。そうしたらどれほど嬉しいだろう。
 そんな期待をこめて島にやってきた咲夜 由宇(さくや・ゆう)アレン・フェリクス(あれん・ふぇりくす)だったけれど、その途中、椎堂 紗月(しどう・さつき)鬼崎 朔(きざき・さく)らに出食わした。
 イルミンスール武術部と雪だるま王国の為、パンダ像を手に入れるのだと言われ、同じくイルミンスール武術部に所属している由宇も合流することにしたのだ。首尾よく手に入れられたら回しあいをして、あっちもこっちも発展させられる。
 客寄せパンダというからには貴重なお宝に違いないからと、紗月と由宇は宝を感じ取るセンスを働かせてみた。
 もしこの街にお宝があるとすれば……。
「あっちか?」
「うん、たぶん」
 紗月と由宇が進み出したのは街の中央に向かう方向。
 それは良いのだけれど……とアレンは首を傾げる。
「変だなぁ。オレはトレジャーセンスはかけていないのに、そちらに行くと何か良い物があるような気配を感じるんだけどぉ」
「私も感じますな。もしやこれが客寄せの力……?」
 引き寄せられる力を尼崎 里也(あまがさき・りや)も感じた。自然とそちらに行きたくなり、足が速まる。
 けれどしばらくの後、その衝動は感じられなくなった。
 今のは何だったのだろうと思いつつも、先を急ぐ彼らの前にアンデッドの一群が現れた。
 ミイラ化しているもの、骨だけのもの、腐った肉をまとわせているもの……そのどれもが街中央を目指そうとする彼らに襲いかかってくる。
「うわ……」
 由宇はアンデッドの姿にちょっと眉をしかめたが、すぐに歌を歌い始めた。心に幸福を呼び起こす歌を、今は死者たちへのレクイエムとして歌う。
「私の邪魔をするなら……ツブすぞ、貴様たち!」
 朔の身体には鬼神の力が宿り、頭からはねじくれた角がつき出した。まさしく鬼神の勢いで、アンデッドたちに必殺の拳を突きこんでゆく。
 アンデッド1体1体は決して強くはないが、痛みにひるまず動ける限りこちらを攻撃しようとしてくる。朔に倒されてなお、足を掴もうとしてくるアンデッドを、
「アハハハ!」
 アテフェフ・アル・カイユーム(あてふぇふ・あるかいゆーむ)は楽しげに笑いながら、ヒートマチェックで斬殺していった。殺しても朔に嫌われない相手を斬るのはとても気分が良い。
「コロ丸、行くであります!」
 スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)は武者人形のコロ丸をアンデッドに向かわせた。カラクリ仕掛けに動かされ、コロ丸はカタカタと刀を奮う。
「相手が人間じゃねーなら遠慮無しに行かせてもらうぜ」
 素早く拳を繰り出す紗月を、椎堂 アヤメ(しどう・あやめ)がフォロー。普段から使っているわけではない刀はやや荒いが、着実にアンデッドを斬り伏せていくのだった。