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少年探偵と蒼空の密室 A編

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少年探偵と蒼空の密室 A編

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ANSWER 22 ・・・ 人形師の問題 橘カナ(たちばな・かな)

 入っても大丈夫かしら。
 見えない意思に導かれるように、あるアパートの前まできた橘カナは、とまどいながらも、足をすすめた。
「コノ部屋ダヨ。ミンナ、カナヲ待ッテルヨ」
 カナが右手に持っている市松人形風操り人形の福ちゃんがしゃべる。
「カナ様。自分には、今日の福ちゃんは、まるで生きてるみたいにみえるッス。でも、いつもと一緒で、カナさんの腹話術なんですよね」
 パートナーの、いつもクマの着ぐるみを着ている、うさぎ型ゆる族、兎野ミミ(うさぎの・みみ)に聞かれた。
「うーん。あたしも自信がないのよ」
「カナトワタシハ、別人ヨ。ミミハイマサラ、ナニヲ言ットルンジャ、ゴルァ!」
「だよね。ごめん。ごめん。ところで福ちゃん、中にいる仲間って誰なの」
「ソレガ、ワカンナイカラ、困ルノヨネ」
「さ。行くわよ」
 部屋の鍵はかかっておらず、カナたちはあっさり中へ。
 部屋はワンルームで、きれいに片付いていた。
 特徴的なのは、棚に飾られた大小、様々な種類のたくさんの人形たち。
「これが福ちゃんの仲間なのね。カナさん、よくここに人形があるって、わかったわね」
「あたし、こんなの知らなかった」
「カナ。今日ハ、福チャン以外ノ子トモオ話シテアゲテ」
 そう言うと福ちゃんは、目を閉じ、頭を垂らした。
「え。福ちゃん。どうしたの」
 カナは、びっくりして福ちゃんを眺める。
「つまり、この人形を調べるんですよね。自分が手伝います。一つずつ順番にカナさんに渡しますね」
 この奇妙な状況をフォローするように、普通に言うと、ミミはカナに人形を渡しだす。
 しかたなくカナは、福ちゃんをテーブルにおいて、渡された人形を抱えた。
「コンニチハ。カナサン。私ハ、クローディアヨ。コノ部屋ニハ、オ忍ビデ姫様ガヨク遊ビニキタノ。ソノ時ニ私ガ姫サマカラキイタオ話ヲ、全部、カナチャンニ教エテアゲルカラ、カナチャンハ、姫様ノ味方ニナッテアゲテネ」
「カナさん。これは」
 呆然としているカナとミミに、人形はカナの腹話術の力を借りて語りだす。

 結局、部屋にあったすべての人形に話を聞いてから、カナはまた福ちゃんを手に戻した。
「モシ、オ姫様ガ匿ワレテイルンナラ、教会ノ地下ノ集会場ダネ」
「そうね。みんなが教えてくれたわ」
「姫サマガ宝ノ鍵ナンダカラ、狙ワレルノモショウガナイワ。助ケテアゲマショウ。宝ト鍵ガアルナラアケテミナキャイケナイ気ガスルワネ」
「お姫様に、宝を開放してもらいましょう」
「カナさん。福ちゃん。このお人形さんたちは、いまのお話は」
「ダカラ、ミンナ、福チャンノ仲間ヨ。ミミ。細ケェコタァイインダヨ! 行クワヨ」

 部屋をでて教会へむかう、二人と一体を少し離れてついてゆく一団がいることに、カナも、ミミも、福ちゃんも気づかなかった。