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少年探偵と蒼空の密室 A編

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少年探偵と蒼空の密室 A編

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ANOTHER 不憫の帰還

 誰かに・・・気づいて・・・ほしい・・・かな。
 ワタシは、ウルスラ・ヴァージニア(うるすら・う゛ぁーじにあ)。忘れ去られた遠い昔の聖女の霊。みんなに聞こえる声で話せないの。だから、血文字をあなたのモニターに浮かびあがらせるわ。

 ダレカワタシノコノブンショウヨンデクレルカナ

 マジェスティックが生まれかわった最初の日の朝、ワタシのパートナーの春夏秋冬真都里は、テムズ川の川岸に流れついたの。ロンドン塔の崩壊に巻き込まれたのね。
 でも、真都里は、さらわれる前の彼とは、別人だった。
 もしかしたら、真都里が死体で流れついてるかもって、心配して早朝から川岸を歩いていたワタシと、もう一人のパートナーの小豆沢もなかも、真都里を見つけてもすぐには、近づけなかったわ。
 ワタシは驚いてて、もなかははしゃいで彼に気づかれないように、写メを撮りまくってた。
 髪はソフトのモヒカン刈りが濡れて、ぐしゃぐしゃになってる。顔は塗りたくった化粧が崩れてて、スプレーで落書きされた高架下の壁みたい。上半身は裸で、どこもかしこも傷だらけ。かわいそうに鞭の痕がいくつも、くっきり残っていたわ。そして、背中には大きく赤いルージュで「M男」の二文字があったの。
 真都里は、その格好でふらふらと道路を歩いたわ。
 いったい、なにがあったっていうの。
 みんなが彼を避けた。しかたないかも。
「俺は、俺だ。みんな、俺を見てくれー。俺はありのまま、精一杯生きてる、俺なんだあ!」
 いきなり、真都里は叫んだわ。
「ぐししししし。まつりんが、ついに狂った」
 ワタシの横でもなかがお腹を抱えて笑ってる。
 そのうち、何人も警官がきて、真都里を連れていったわ。
 真都里・・・大丈夫かな。ワタシじゃ、力になれないから。なにもしてあげられないけど、早く帰ってきてね。