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S@MP(シャンバラアイドルマーセナリープロジェクト)第01回

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S@MP(シャンバラアイドルマーセナリープロジェクト)第01回

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03:オーディション セッション式だと 知ってたら(その1)



「フレイヤ、ことフレイ・アスクです。これからオーディションを始めますが、注意事項ああります。今回のオーディションばヴォーカル部門の出場者が多く他の部門の出場者が少ないので、ヴォーカル以外の各パートは順番に演奏してセッション形式で審査を行います。したがってドラムなどのエントリーが少ない部門の方はなんども出ることになりますので注意してください」
「アルテミス、ことアポロン・サン(あぽろん・さん)です。セッションにはフレイも一緒に参加します。警備担当者の方の事前投票もいただいていますが、皆さんの投票が大きな点数になりますので、宜しくお願いします。なお小鳥遊 美羽さんにも特別審査員として参加してもらっています
 妖艶な美少女のアポロンがそう言う。アポロンもフレイほどではないが5オクターブの声が出る両声類だった。
「みんなー、よろしくねー」
 美羽がそう言うと拍手が起こった。
「それでは、5分後に女性ヴォーカル部門志方 綾乃(しかた・あやの)、ドラム部門騎沙良 詩穂(きさら・しほ)、ベース部門ルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)、ギター部門姫宮 和希(ひめみや・かずき)緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)、敬称略、によるセッションを開始します。出場者は準備を開始してください」
 そう言うと出場者たちがステージに登ってきて楽器の調整を行ったり発声練習をしたりする。フレイは席をたって楽屋に入ると衣装を着替えて戻ってきた。白ゴスである。ちなみにムダ毛は処理してある。
 綾乃はピンク髪のかつらに月の髪飾り、黒と紫の変形和服の上から陣羽織と言う格好である。ちなみにセッティングは極端に無口なパートナーエミリア・クルクス(えみりあ・くるくす)の手によるものである。
「歌は兵器! です。S@Mに望まれているのはきっと平和の歌じゃなくて、戦いの歌。平和の歌姫ではなく戦乱の歌姫だとおもいます。この世界には価値観が違い過ぎて、決して分かり合えない「敵」がいることもまた事実。その敵を全否定する歌を歌う覚悟は、私には……きっとあるはずです」
 綾乃の過激な発言に会場がどよめく。
「か、過激ですねー。でも、フレイが考えているのも戦場で戦意を高揚させるための軍歌的なものですから、あながち間違っているとは言えません。さて、それではドラム部門いってみましょう」
 アポロンがそう言うと騎沙良が立ち上がった。肩の部分が黄色く袖なし腋見せなマーチングバンド的な可愛い衣装を着ている。
「騎沙良です。楽しんで演奏するから楽しんで聞いてね〜!」
 拍手。
「これが頑張って聞いてくださいだったらやばかったなー。では、ベース部門!」
 ルースは重力に逆らうツンツンの黒髪に黒い瞳、細長い伊達眼鏡をかけてホスト風に決めている。
「アイドルグループにオジサンがいたっていいじゃないですか。女性にもてたいんですよ! カッコいいところ見せたいんですよ!」
 どっと笑いが響く。と同時に黄色い声も聞こえてくる。
 と同時に(マスター、しっかりしてください)ソフィア・クロケット(そふぃあ・くろけっと)と言う心の声も聞こえたりしたとかしないとか。
「イケメンですねー。いぶし銀なベーシストってとこですかね。では、ギター部門!」

 和希はぼさぼさの黒髪に茶色の目、学帽と学ランのバンカラスタイルだ。様になっているから格好良い。
「姫宮です。俺はパラ実の生徒会長で孤児院の面倒も見ている。有名になって自分の収入や賛同者の応援でパラ実復興や孤児院の運営を助けられるようにと思っての参加だ。よろしく頼むぜ」
「感動ですねー。では、もうお一方」
 <ちぎのたくらみ>にて幼児化して身長140センチほどで外見年齢11歳になった遙遠は、白のゴシックドレスを着ている。
「『くうだい』より来ましたハルカです♪ この容姿を生かしてアイドルユニット内の花になりたいと思っています! ギターについては得意です! アルバイトの関係でたまに人前で演奏することとかがありまして色々と演奏には慣れています☆ 宜しくお願い致します!」
 ちなみに「ハルカ」は楽屋でパートナーのリフィリス・エタニティア(りふぃりす・えたにてぃあ)
「ハルカは可愛いんだからきっとアイドルなれるです〜。頑張ってくるですよ〜」
 と全面的に応援されて見送られた。
「ん〜、可愛らしいですが自分と同じ臭がします。男の娘ですね。まあ、性別は限定していないのでいいのですが。それから、今日のオーディションには音楽に合わせてアクロバット飛行をするデモ飛行隊が上空を飛んでおります。ステージだけではなくたまには上空にも目を向けてくださいね」
 ローザマリアと教官らが上空を飛んでいた。
「それでは、オーディションを開始します。歌は、パティ・パナシェ(ぱてぃ・ぱなしぇ)さんの提供で、『Sky Beat』です。」



どうして ここにいるの? 他の場所を知らないから
いつまで そうしてるの? 答えられるほど強くなくて
遠くばかり見つめて ため息ついて落ち込んで
泣きそうになった時 隣にいる人に気づいた

あなたが伸ばしたその手 掴んだ瞬間 ふわり 
蒼空が近くなる ドキドキが加速する

一緒にいこうと誘う 声にうなずいて ひらり
見えない階段 駆け上った先に
待ってる 新しいステージ

 ツインギターがそれぞれにソロ部分が入る。

どうして 目をそらすの? 何も出来ないのが怖くて
いつまで うつむいてるの? 何が欲しいかも判らなくて
ツマンナイっていってたら ほんとにつまんなくなるよ
勇気だして顔を上げたら 独りじゃないって気づいた

真っ直ぐに見つめる視線 重なる瞬間 ふたり 
星空に包まれる トキメキで熱くなる

 ドラムのスネアが履いてギターの補助に回る。

ちょっと甘いムードなら 優しい歌とか いいね
星のスポットに 照らしだされて
待ってる 新しいステージ

 ベースソロ。高速演奏で魅せる。
 と、微妙に音が歪んだ。

あなたが伸ばしたその手 掴んだ瞬間 ふわり 
蒼空が近くなる ドキドキが加速する

一緒にいこうと誘う 声にうなずいて ひらり
見えない階段 駆け上った先に
不思議な力が 導いてく先に
待ってる 私たちのステージ
 

 演奏終了。
 拍手。
「ふむ。なかなかだな、パティ」
 パティのパートナークレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)がパートナーが作詞した曲を褒める。
「ありがとうございます」
 クレアは今回は警備などには参加せず、一観客として舞台を楽しんでいた。
 そしてアポロンが入ってきて会場の空気をしめる。
「いやー、良かったですね。さて、ではコリマ校長にご意見を伺ってみましょうか?」
(……うむ。今の歌はよくわからぬがなかなかに見事だった)
「はい、ありがとうございます。フレイ、どうだった?」
 今度はフレイに振る。
「気持よく歌えました。次もこうだといいですねー。ただ、ルースさんのベースの音が歪んだ時にサイコキネシスの波動を感じたな。まさかとは思うが、誰か裏工作してるんだとしたら無駄だぜ。俺の目はごまかせない。じゃあ、次に行ってみようか」
「おーけー。次はヴォーカル朝霧 垂(あさぎり・しづり)、ドラム、アルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)、ベース、水橋 エリス(みずばし・えりす)、ギター、ロイ・シュヴァルツ(ろい・しゅう゛ぁるつ)須藤 雷華(すとう・らいか)、敬称略、でお送りします」
「アルテッツァ・ゾディアック!?」
 樹が唇をかむ。
「どうしました、樹さん?」
「奴が出てるなんて! せっかく殺すチャンスだったのに!!」
 御空の問に樹はそう答える。
「昔奴に殺されそうになったことがあったんだよ。ちくしょう」
「そうですか……」
 御空はあまり触れておかないようにしようと思った。

 垂は袖なしのメイド服、小さな翼の髪留め、超感覚で黒豹の耳と尻尾を生やしている。
「俺は踊れる訳でも楽器を演奏できる訳でもない。でも、歌う事は出来る。そして、歌は……音楽は聞いている人の心へ直接、気持ちを訴えかける事が出来る手段だと思っている……歌で……音楽で、戦争を終わらせる事が出来たら……最高じゃないか!?」
 拍手と口囃し。
「そうですねー。戦争、終わらせられたらいいですね。では、ドラム部門!」
 アルテッツアは執事服を着て、傍らにメイド服を着せたパートナーの六連 すばる(むづら・すばる)を置いている。メインたるヴォーカルに仕える執事とメイドという意図らしい。
「パートナーに適当に応募されてしまいましたが、やるからには精一杯やりますよ。よろしくお願いします。出来れば他のドラムプレイヤーとの同時演奏を希望したいのですが、OKですか?」
「ドラムデュエルですかー。騎沙良さんどうですか?」
 舞台袖にいる騎沙良に声をかけてみるアポロン。
「望むところです」
 騎沙良のOKがでたのでドラムデュエルと相成った。
「はい、それではベース!」
 エリスはイルミンスールの制服のローブとその下にTシャツとホットパンツそして頭に魔女のとんがり帽子と言うコスチュームで登場した。
「私もパートナーに無理やり応募させられた口ですが、やるからには盛り上げますよ!」
 問題のパートナーのリッシュ・アーク(りっしゅ・あーく)ニーナ・フェアリーテイルズ(にーな・ふぇありーているず)が観客席から歓声を送る。ちなみに舞台衣装は二人の共謀によるものである。
「なるほどなるほど。私もフレイをけしかけてこんな企画を立てましたが、案外面白いですねー。それでは、ギター!」
 ロイは教導団軍服(これも立派なコスプレ!)でステージに立つと
「最近ギターを始めたばかりですが、どうぞ聞いてやってください」
 と言った。
「どんなプレイか楽しみです。ではもう一方」
 雷華は白のフリフリアイドル服で登場する。
「最近の逼迫した世界情勢に対し、せめて音楽によって、人々を元気付けたいと思いました。今回は曲も作ってきたので、この舞台では私の曲を演奏させてもらいます」
「はい。ありがとうございます。ということで、曲は須藤 雷華で『スターチス』」

 終わりの無い旅路が 孤独と知っていても
光の海を越えて 今道しるべ探す
例え迷う両手に 何も残らなくても
あてども無く彷徨い 希望の欠片拾う

 アルテッツァが同じテンポを刻みながら、騎沙良のスネアドラムやサスペンデットシンバルなどのアレンジを聞き取りながら、8呼間毎に叩き手を変える。そして騎沙良と全く同じリズムを刻んでみたりする。
 エリスがコーラスでハーモニーを奏で出す。
 ロイが曲に合わせてギターを立ててみる。
 雷華は<ピッキング>で盛り上げる。

最果ての街で 西の空見上げ
胸騒ぎの意味を 確信していた

想いが記憶と共に 色褪せたとしても
変わらない変われない 君に誓ったあの日から
誰もが幻想の中に 真実(ほんとう)を見るのなら
背かない忘れない 君に誓ったあの言葉

 拍手。
「はい、ありがとうございました。いやー、これも良かったですね。さて、それでは次に行ってみましょうか」
 そしてプレイヤーが交代するなか舞台裏――

 雷華のパートナー北久慈 啓(きたくじ・けい)が雷華を出迎えた。
「頑張って作詞をしたのはいいが、内容が暗かったぞ。お前の実家が仏教徒なのを審査員に教えてしまおうか?」
 それに雷華は顔をひきつらせて
「や、やめて。それだけは」
 と懇願する。
「まあ、冗談だ。ギター自体は良いプレイだったぞ」
「そう? ありがとう」
 
 そして【ロイの恋人】エリー・ラケーテン(えりー・らけーてん)はロイが帰ってくると抱きつく。
「お疲れ様。合格するかどうかはともかく、よく頑張ったわね。後でご褒美上げるね♪」
「期待してるぜ」
 そして二人は楽屋裏へと消えた。
 
 アルテッツァのパートナーで今回かってに応募した親不孝通 夜鷹(おやふこうどおり・よたか)がアルテッツァとすばるを出迎える。
「アル、かっこ良かったぎゃ! 最高だったぎゃ!」
「夜鷹のお馬鹿。おかげで先生がどんなに苦心されたか……」
 すばるがそう言うが、夜鷹は笑って返す。
「まーまー、結果オーライだぎゃ!」
「まぁ、受かっていれば御の字。まあ、教師の仕事とは両立できないので受かっていなくてもいいのですがね……」
 アルテッツァは少し覚めた様子で言う。とは言えプレイ自体は楽しかったらしく、顔が少し紅潮している。
「アルテッツァさん、面白かったです」
 騎沙良がやってきて言う。
「デュアルドラムというのは初体験でしたけど、結構面白いものですね。お互い、合格を祈りましょう」
「そうですね。ボクも楽しかったですよ。では、失礼……」

 舞台が盛り上がっている頃、【パープル小隊】は、無線でステージの様子を流しながら哨戒を行っていた。
「任務中に不謹慎かい?」
 正敏が菜織に尋ねる。
「心地よいよ。まあ、歌は演歌の方が好きだがね」
 そして少し間が空き、
「私は戦う事でしか今を変えていけぬ人間だから、彼らを羨ましくさえ思う。だが、避けられぬ戦いがあるのも事実だ。だから皆が武器を置ける日まで私は私の道を往くさ」
 と答えた。
「皆さん、一生懸命なんですよ。自分達に何が出来るかを考えて動こうと。そういう流れは大切にしたいし、きっと『変えていく力』ってそういう真摯な行動だと思います」
 カチェアがそう言うと、正敏も
「だよなー」
 と答えた。
「アニメみたいにうまくいくはずはないだろうが、なんか変わればいいとは思ってるさ」
「そうだな。戦争は、悲惨だからな」
 菜織がそう言って通信を切り上げる。