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番長皿屋敷

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番長皿屋敷

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「へへっ、いるいる。たっゆんなメイドが大漁だぜ」
 鼻の下をのばしながら、ゲブー・オブインが、料理を運んでいる久世沙幸に見とれた。チラチラとぎりぎりの領域でゆれるミニスカートの裾に、目が釘づけである。思わず知らず、そちらへと手がのびる。
「おさわりは、禁止ですぅ。え〜い」(V)
 すかさず、神代明日香が、パシンとその手を叩いた。
「いいじゃねえか。あんなたっゆんだぜ、パイタッチは男のロマンだ! チッパイにはわかんねえだろうがよ!」
 そのNGデスワードに、そばにいた小鳥遊美羽がピクンと反応した。
「チッパイ言ったのは、そこのモヒカンだよね……」
 いつの間にかハリセンを手に持った小鳥遊美羽が、ゆうらりとゲブー・オブインに近づいていった。
「おうよ。それがどうした」
「天誅!!」
 開きなおるゲブー・オブインを、小鳥遊美羽のハリセンが襲った。
「いってえな、何しやがるこの……」
 小鳥遊美羽の胸倉をつかもうとのばしたゲブー・オブインの手が、空をつかんだ。
「くそ、つかむ胸が……」
「天誅! 天誅! 天誅!!」
 小鳥遊美羽のハリセン乱舞がゲブー・オブインを叩きのめす。いつの間にか加わった神代明日香とリン・ダージも、げしげしとゲブー・オブインを踏みつけていた。
「やめてとめてやめるれろ!」(V)
「お料理をお持ちしまし……あっ」
 メイドとしてバイトに来ていたマリカ・メリュジーヌ(まりか・めりゅじーぬ)が、すっと出された崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)の足に引っかかって派手に転んだ。持っていた料理がゲブー・オブインの上にふりかかる。間一髪女の子たちが飛び散る料理を避けたため、やっとゲブー・オブインへの攻撃がやんだ。
「ねえ、リーダー、これ捨ててきてよ」
 リン・ダージが、酷いことになっているゲブー・オブインをさして言う。
「えーっ、めんどいから消滅させちゃだめかなあ」
 クイと、右腕をまくりながらココ・カンパーニュが言った。
「お店壊しちゃだめって言ったでしょ、お姉ちゃん。これは、私がポイしてきますから」
 あわてて、アルディミアク・ミトゥナが、星拳を出そうとしていたココ・カンパーニュを押し止めた。
 頭の上にぷちわたげうさぎを乗せたまま、アルディミアク・ミトゥナがそそくさとゲブー・オブインを外へと運んでいく。
「いやあ、オレたちドラゴニュートとしては……」
 店の前で未だにジャワ・ディンブラと長話をしていたホー・アーの許へ、アルディミアク・ミトゥナがぼろぼろになったゲブー・オブインを持ってきた。
「あのー、これ引き取っていただけませんでしょうか」
「ええっと……。あー、誰か……」
 予想通りとはいえ、ホー・アーが困っているとわらわらと救世主たちが集まってきた。
「お困りのようですね」
「これは、私たちでお引き取りしましょう」
「さあ、運ぶぞ」
「おー」
 よってたかってゲブー・オブインを担ぎあげると、救世主たちは風のように去っていった。
「さあ、あなたはここで待っていてね」
 アルディミアク・ミトゥナは、飛空艇の中にぷちわたげうさぎを入れると、店に戻っていった。
 
    ★    ★    ★
 
「酷いです、お嬢様」
 しくしくしながら、マリカ・メリュジーヌが飛び散った皿を拾い集めている。
「なあに? もっと私を楽しませてくれなくちゃだめですわよ」
 ピンヒールでぐいぐいとマリカ・メリュジーヌをつつきながら、崩城亜璃珠が言った。
「あーん」
 おとなしく後片づけをしながら、マリカ・メリュジーヌが崩城亜璃珠の耳に心地よい声で泣いた。
「お待たせいたしました。替わりのお料理で……あっ」
 こぼしてしまった料理の替わりを持ってきた冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)が、こちらもまた崩城亜璃珠の足に引っかけられて転んだ。
「あなたにも、教育が必要ですわね。ほらほら、早くお拾いなさい」(V)
 得意満面で崩城亜璃珠が命令する。
「は、はい」
 しゃがみ込んで、冬山小夜子が、床に落ちてしまったハニートーストを拾おうとする。ちょっと興奮したのか、犬耳と尻尾がぴょこんと飛び出してしまい、カチューシャがずれ、黒のロングスカートが大きくめくれ上がって太腿が顕わになった。
「うりうり」
「ああっ」(V)
 調子に乗った崩城亜璃珠が、靴を脱いだ裸足の裏で冬山小夜子の顔をぐりぐりとする。
「そこまでだ!」
 絶好調の崩城亜璃珠にむかって、突然張りのある声が投げかけられた。
「食べ物を粗末にする奴がいるのはここかあ!」
 包丁を持ったままの樹月刀真が、崩城亜璃珠たちを睨みつけた。
「俺の料理を粗末にするなど、許せん! 叩き出せ!!」
「まあまあ、そんなに事を荒立てなくとも」
 紫月唯斗が、樹月刀真をなだめた。
「そうよ、私はあくまでもお客様ですわよ」
 崩城亜璃珠が勝ち誇る。
「はーい、こちら注目でーす。はい、眠くなる!」
 紫月唯斗が気を引いている間に、背後に近づいた紫月睡蓮が、崩城亜璃珠たちに後ろから呼びかけた。何ごとかと振り返る崩城亜璃珠たちの目の前でグルグルと指先を回したかと思うと、パンと勢いよく手を叩いた。
「ぐー……」
 ヒプノシスにかかった崩城亜璃珠たちが一瞬にして眠りに落ちてコテンと倒れる。
「捨ててきなさい」
「はい」
 紫月唯斗に言われて、プラチナム・アイゼンシルトと紫月睡蓮が漆髪月夜と力を合わせて、崩城亜璃珠と一緒にマリカ・メリュジーヌと冬山小夜子をまとめて店の外にポイしてきた。
「あ、コックさん、メニュー三巡目、お願いしまーす」
 厨房に戻っていこうとする樹月刀真を見かけた獅子神玲が、手を挙げて叫ぶ。
「や、休む暇がない……。だが、負けるものか!」
 少しひきつりながら、樹月刀真は厨房に駆け戻っていった。