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ぶーとれぐ ストーンガーデン 黒と青

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ぶーとれぐ ストーンガーデン 黒と青

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Secret track 未来メモ

<ヴァーナー・ヴォネガット>

さいきん、むかしのことをよく思い出すです。
あのころ、ボクはいっぱいぼうけんしてたいたですよ。
空京のテーマパークのマジェスティックにもよくいったですね。
そうですね。
ボクもじぶんの過去のぼうけんをにっきにしてのこしておこうかと思いますです。
いろいろありましたけど、こんがらがった事件もあったです。
混乱といえば、そうそうストーンガーデンの事件はたいへんだったですよ。
あの事件のことをいっぺんにかくのはつかれるし、ぐちゃぐちゃになっちゃいそうなので、書くまえにようてんをここに整理しておくです。地球のライターのかわい家さんがあの事件についてまとめた、のんふぃくしょんがあるので、それを読んで細かいところを思い出して、じゅうようそうなところを抜粋するです。
でも、この記録はながすぎるですね。
とりあえず、事件の前半ぶぶんからだけぬきだすです。

◇◇◇◇◇◇

会場はIDEALPALCEの大ホールで、クリスマスパーティに参加したガーデンの住民と観光客、スタッフもあわせて約千名がいた。
PALCEの管理人のガーネット氏が知らせを受けて現場に駆けつけた時には、被害者のパール嬢はすでに絶命していた。(クレア・シュミット)


ストーガーデンの管理人は、FUNHOUSEのトパーズさん。
IDEALPALCEのガーネットさん。
CHEMELのエメラルドさん。
CATHEDRALのルビーさん。ですう。
全部で二千人くらいの人が住んでるんですよっ。(パティ・パナシェ)


アンベール男爵は、ガーデンの真の持ち主の代理人です。
私たち管理人の主は、そのお方です。
男爵の前の所有者は、存在しないのではないのではないでしょうか。
地球との関係もあって、マジェスティックにも書上の整理が求められ、結果、書類上の所有者が必要になって、美術や芸術に造詣の深い彼が名前を貸してくれたのだと思います。
しかし、申しわけありませんが、この件については、これ以上はお話できません。私もくわしくは知りません。
ガーデンの住人の中で、真の所有者についてよく知っていたのは、亡くなったパールだと思います。(ガーネット)


ストーンガーデンは元来、シャンバラ人の四つの部族が集まってつくった集落です。
マジェスティック地方の一部落と呼べばわかりやすいかしら。
石工と一口に言っても、建設、装飾、いろいろ種類があるでしょう。
それぞれ違う技術を得意とする石職人たちの四つのグループがここで共同生活をはじめたのが、ガーデンのはじまりです。
ガーデンが部族ごとの四つの区域、棟で構成されているのは、当時からいまも続く伝統。
そういう場所なので、伝説や昔話もたくさんあります。
ガーデン全体、それに部族ごとにも。
私は、直接、今度の事件を連想させるような言い伝えは知りませんが、メロン・ブラックがマジェスティックを支配していた頃には、彼の部下や時には彼自身がガーデンを訪れたりして、一部のものたちを相手に怪しげな講義を開いていたとの話はきいています。
彼らなら禍々しい話をたくさん知っていたでしょうね。
なんの講義をしていたのか、実体はわかりません。
住民の避難については、いまお話したようにガーデンは部落です。
ここの住民たちは、みんな、この地に住みついた石工たちの子孫、血族なのです。
私たちは先祖代々、住民全員でこの地を守ってきました。
ここを襲う危機があるのならば、四棟の住民全員で団結して戦います。(ガーネット)


CHEMELは異常だ。
二千六百もの個室のあるアパートなんて実用性に欠けると思わないか。
他の三つの棟の部屋数をすべて合わせても、CHEMELの部屋数にはかなわない。
当然、使われていない空き部屋もいくつもあるらしいし、設計の基本計画もないままに思いつきで増改築を繰り返したんで、このCHEMELの住人でさえ、自分がよく行くフロア以外では、迷子になっちまうらしい。
ガーデンの四つの建物はどれも奇妙だが、CHEMELが一番、見るからにいきあたりばったりな感じがする。
七階、四階、三階、二階、五階、十二階、高さも内部構造も違う建物を強引にくっつけて、一つにしてるんだ。
しかも、いまでも年中無休、二十四時間、建設工事は継続していて、日々、CHEMELは変化し続けている。
ストーンガーデン入り口で売っているガイド(俺は自腹で買った)によると、CHEMELは、元来、ガーデンの死者たちの住居として建設されたらしい。問題は、墓ではなく、住居、ってとこだ。
ガーデンの言い伝えでは死者は、生者には見えない存在として、普通にこの世界で生活していると考えられている。普通に暮らすんで、死者の住居にも家具もベットもトイレもフロも必要なんだと。
だから、部屋もたくさんいるし、増やし続ける必要があるわけだ。CHEMELに住む石工たちは、死者への畏怖と尊敬の念を持って、それぞれ勝手に日々、工事をしている。(シン・クーリッジ)


ミレイユもシェイドも、自分の身の安全のために黄色の竜を本当に探した方がいいと思うな。(ベスティエ・メソニクス)


「殺されたパールの場合は、六月が誕生月で、ガーデンを代表する文官でなければならない、となる」
「文官でなければならない、って、名前で仕事が決まってるの」
「誕生石の名前は、前の者が役割から退く時に後任者に引き継がれる。
死んだパールも、以前はもっと普通の石にまつわる名前だった」
「名前は世襲制なんですか」
「違う。ギルドが候補を選抜して住民会議で襲名するか否かを決めるんだ。
このへんの話は、ガーデンの住民だけが知ってる家庭の事情みたいなもんだがな」
「教えてくださってありがとうございます。
私、早く事件が解決して仕事を再開したいんです。ですので、ガーデンを調査してきますね」
「注意しろ。
ガーデンの要人が不審な死に方をしたり、運命の子供を捜すように人さらいが横行してるのは、ガーデン内で戦争が起きているためかもしれん。
俺たちの人生は、おとぎ話じゃないからな、幸福な結末になるとは限らん」(キューレット&月美あゆみ)


東にあるIDEALPALCEは、外壁には青っぽい塗装がされていて、設計図なしに材料を組み合わせ、個々の職人たちの技術だけで高層建築物にしてしまった、外も、中も、歪んでいる幻想的な宮殿。
西のCATHEDRALは、色は白。
大小十数本塔を組み合わせいて、イメージとしては巨大なパイプオルガンのようにもみえます。
こちらは、IDEALPALCEとは違い設計図はあるんだけど、超複雑、繊細なその図面をもとに数百年後の完成を目指して、現在も新しい部分の建築と、老朽化したところの補修工事が同時に行われているの。
ステンドグラスをはめた無数の窓のせいもあって、CATHEDRAL(大聖堂)の名前にふさわしく、厳かな建物よ。
南のCHARNELは赤っぽいレンガ造りで、四つの棟の中で最大の大きさをほこる洋館です。
ぱっと見は、クラシカルなゴシックホラー小説にでもでてくる西洋のホテルみたいなんだけど、とにかく、広くて、大きいの。
しかも、建設開始以来、ずっと増築中で、どんどん大きくなり続けているんですって。
ガーデンの死者たちの住処だそうです。
当然、幽霊話なんかは無数にある、洋風お化け屋敷よ。
最後に、北のFUNHOUSEは、外観からしてどうかしていて、外壁の一部が鏡張りだったり、周囲の風景にとけこむように絵が描いてあったりします。
建物自体は黒っぽくて、夜になると闇にまぎれてしまってみえなくなるところもあるくらい。
他の棟もそうだけれど、ここも全然、アパートメントっぽくなくて、小屋に小屋をのせて、つなげて、みたいな奇妙なつくりになっていて、とにかく屋根がたくさんあります。
形や大きさの違う小屋を数十軒、てんこもりにした感じです。
屋根が下や横、斜めについてる小屋もあるの。
FUNHOUSEは、建設開始当初の工事責任者が設計図を無視して勝手な指示をいろいろだして、かなり工事が進んだ時点で、その責任者が狂気に蝕まれているのが発覚し退任させられたそうです。
外部も内部も人を脅かすような仕掛けがたくさんある(現在でもそのすべては解明されていない)ので、一時はここは居住区にしない方がいいという意見も住民さんたちからでたそうですが、それでも、結局、いまも人が住んでいます。
住民数は、四棟の中で最小です。
これら四棟に、色石にまつわる名前を持つ管理人と住民のみなさんが住んでいて、マジェスティック内のみならず、パラミタ各地で主に石工の仕事を引き受けることで、生活している。
ストーンガーデン(石庭)は、このアパートメントの正式名称ではなくて、実は通称らしいんだけど、ぴったりの名前ね。(月美あゆみ)


リンゴは神様の食べ物なんだって。
でね、豆は死んだ人の食べ物らしいよ。(ノーン・クリスタリア)


マジェの飯には、ハナから期待していないが、ガーデンのマップによると、どうやら、ここはウェールズ料理の店だろ。少しは楽しめるかと思ってな。他にも、イングランド、スコットランド、北アイルランド料理の店もあるし、ガーデンの四つの棟、住民の四グループの色分けは、United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)を象徴しているかも、だ。
となると、共通の枠に収まりながら、それぞれの文化や言語があるのも了解できる。
それでいて、全体をつらぬく歴史や伝説があるのもな。(斎藤邦彦)


「わたしの名前は、ファンシー・インテンス・モリガン」(ファンシー・インテンス・モリガン)


容疑者の犯行時の記憶喪失。
死体の消失。
子供たちの行方不明。
怪物の目撃談。
数々の伝説。
この事件の裏には、尋常でない人物がいるはずだわ。
常識の範疇にない力を持つ者。(ブリジット・パウエル)


「なるほど。それか。
それを伝えにここに呼ばれたか。まだ、それくらいか。
上へ。
本物以外は殺すな」(クリソベルことアレキサンドライト)


でもね、ガーデンの人たちはそこでの戦いの後、石工としてみんなでマジェに移り住んだっていってるんだよ。つまり、ガーデンの歴史のはじまりはそこにあるんだ。(ミシェル・ジェレシード)


どんな敵と戦ったのかはよくわかっていないんだけど、いまのガーデンの住人の先祖の人たちは、みんな、その戦いを最後に、これからは四つの部族が一つになって協力して生きていく決心をしたんだって(ミシェル・ジェレシード)


「戦いは、いまも続いている、だそうだ」
ぽつりと、銀がつぶやきました。ミシェルが横で頷きます。
「住民の人がね、昔と同じことが起きる、とか、偉い人から殺されるのは敵の作戦だ、って言うから、くわしく聞いてみたの。
そうしたらね。
いまのところ、その、遥か昔の決戦の後、大きな戦いはないけれど、戦いはいまも続いているはずだって、だから、長い時を経て、敵がまた攻めてきてる、ガーデンを滅ぼしにきてるって、思ってる人がけっこういるんだ」
「ガーデンは、ただの住居ではなく、城、砦、要塞と言っている者もいた」
「どうも、ガーデン内で流れている、皆殺し、連続殺人の噂の根本はそこらへんにあるみたいなんだ。
僕は、かって彼らと戦った敵の勢力が、いま、どうなっているのか知りたかったんだけど、みんな、それについては知らない様子なんだよね」(影月銀&ミシェル・ジェレシード&清泉北都)


「両軍の大将同士が相打ちした場所に石碑があると聞いたが、雪の下か」(影月銀)


僕は、一番重要な殺人はやはりここ、Camlannで行われると思ってね。(ベスティエ・メソニクス)


戦いはあった。
それは、はるか昔の未開の時代のシャンバラ人の歴史のヒトコマさ。
ガーデンの敵は、ガーデンをよく知る者だね。
でなければ、ここまで手の込んだことはしないし、できないだろ。ある意味、世間と隔絶されたマジェの中の、さらに隔離されたガーデンの内情、それを知る者はガーデンの中の者にしかいないと思わないかね。(ベスティエ・メソニクス)


「ルディ。石碑を見つけたよ。こっち、こっち」
ミシェルが私たちを呼んでいます。
ミシェルがいるのは、野原の中でも比較的高くなっている丘のような場所でした。
二人は、Camlann内で一番高いそこに目をつけ、銀が雪をどけたら、丘の上に、厚みのある平たい長方形の石がおかれていました。石の表面には、文字が彫りこまれています。
「King son‘s grave.王様の息子の墓?
ガーデンの王様の、それとも敵の方の、どっちだろう」
北都の吐く白い息。ここに着いた時よりも、ずいぶん、気温がさがっているようです。
ふと、私は、粉雪が舞っているのに気づきました。
「本当に王族の墓なのなら、骨はなくとも、埋葬品くらいはあるかもしれないな。
掘り起こすか」(ルドルフ・グルジエフ&ミシェル・ジェレシード&清泉北都&影月銀)


「ガーデンの連中は、マジェに住んでいるシャンバラ人の中でも、そのう、特殊な人たちなんだ。
俺たちは、なんていうんだっけ、そう、自主的っていうかさ、別に観光のためだけでなくて、実際、自分たちの感覚にあっているから、地球の近代イギリスの文化、スタイルで暮らしてる。
正直、二十一世紀の文化よりも、この十九世紀流のやつの方が、先祖代々、この地に住んできた俺たちには親しみやすいんだ。
でも、ガーデンの連中は違う。
あそこはね、ちょっと前まで俺が住んでたイーストエンドやマジェのダウンタウンのみんなには、博物館って呼ばれてるんだよ。
石工の職人としての腕はたしかさ、パラミタ一だろ、それは誰だって認めてる、でも。
なんか、古いんだ。
時間がとまってる。(アリトタス・カリオストロ)


「クロウリーが、メロン・ブラックとしてここ、偽りのロンドンであるマジェスティックに君臨していられたのは、ここの真の支配者である一族に、かって地球で祖国に力を貸した大魔術師としての実績を買われ、協力を依頼されていたからではないのかしら。
第二次大戦の時のイギリスのように、マジェスティックの領主はクロウリーの力をなにかのために使おうとした。
博士がガーデンによく出入りしていたのも、その仕事となにか関係があるのだとしたら。
ガーデンには、なにが隠されているのかしら」(ピクシコラ・ドロセラ)


「ストーンガーデンの複雑機構。
それについてトパーズ管理人から話を聞きたかったんだけど。
鍵がみつかっても、なにが起こるかわからないと、おそろしくて、おちおち使えないよね」
「ラウールや春美は、無事に鍵を手に入れられるのか」(黒崎天音&ブルーズ・アッシュワース)


「四年に一度しか使われることのない場所。四年に一度しか表にあらわれない隠れ場所。
そう聞いた気がしますけん。
乱戦の中、自分は他の一部の連中とこの区域に逃げ込んだんじゃが、たしか、誰かがそういっとったような。(ルメンザ・パークレス)


「思い上がりもはなはだしい若造よ。
我が物語を生きる糧にするなど、貴様の分ではないわ。
我が名は、マーリン」(マリーン)


今回のお話は、選ばれし者が石から剣を引き抜く英雄譚だ。
私たちは、運命の子を見つけなくてはならない。
敵は、その子を守護者たちごと葬るつもりさ(ラウール)


「そうだね。お話が真実なら、せっかくだし、僕も英雄王に会いにアヴァロンへ行ってみようかな」(黒崎天音)


とにかく、四人の管理人。
東西南北の方角に表をむけてたてられた四つの建物。
これらに意味を求めるのなら、全体の構図を眺めるのが必要かな、と思って。
四つの建物の配置で図形や記号を作ってあっても、それは地上から見れない、つまり、地上にいる人はその意味に気づきにくいものでしょ。(霧島春美)


あの女に、言われたままに動いただけなんだ。弱味を握られてて。
まさか、死体が消えちまうなんて。
魔術師同士が戦ってるのか。
あいつら本気で十二人を皆殺しにして、ガーデンをむちゃくちゃにするつもりか(ベファーナ・ディ・カルボーネの犠牲者)


「ようするに、その赤いペケ印の場所で子供が姿を消しているのだな。
切り裂き魔事件といい、ファンションの域にとどまらない魔術趣味、奔放すぎる性風俗産業、マジェスティックはつくづく子育てにはむかない街だとリリは思うのだよ。
それはさておき、問題は、ペケ印の集中しているストーン・ガーデンだ。
それもここ数日で件数が、飛躍的に増えているのだ。(リリ・スノーウォーカー)


「ストーンガーデンの四つの棟は、いわゆるイギリスを構成している四つの国をあらわしている気がするの。
そこに住む人々の言語的にもね」
「それが貴女を喜ばせるのなら、よかったです」
「でもね、住民たちの話を収集してみると、言語だけでなく、伝説までイギリスのものがほぼそのまま、まかり通っているのは、人工的な、誰かの作為を感じずには、いられないわ。ここの創始者たちの意志なのかしら」(鳳フラガ&ルートヴィヒ・ルルー)


ガーデンには、各棟の代表的な人物だけでも、
ガーネット。(一月)
アメシスト。(二月)
アクアマリン。(三月)
ダイヤモンド。(四月)
エメラルド。(五月)
パール。(六月)
ルビー。(七月)
ペリドット。(八月)
サファイヤ。(九月)
オパール。(十月)
トパーズ。(十一月)
ターコイズ。(十二月)
石の名を持つ十二人がいます。(月詠司)


「聖杯です。
遥か昔の伝説から、騎士は、仕える君主に聖杯を捧げるもの。
自分のもとにきたこの杯は、シメオン様に捧げるのが正しいと思いまして」(シメオン・カタストロフの信者)


「聖杯伝説関係は、瞬殺がつきものだから、ヘタに手をださない方がいいよ。救世主様の対処は正解だね」
「そうですね。私の知っている二、三の伝説でも、聖杯はかなり人を選ぶアイテムですからね。
ここにいる人たちに、災いが降りかからないといいですが」(ウォーデン・オーディル━ロキ&月詠司)


ルルが俺から剣を受け取ると、剣はじょじょに輝きはじめ、すぐにその刀身はまぶしくて直視できないほどの光に包まれた。
光の剣かよ。マジか。
この光景に歓声はさらに広がり、大きくなった。
ラウールさんが俺の側まできて、肩を叩いてくれた。
「メルシー。ムッシュ。
そして王は、騎士の力を借りて身の証を立てた。
我が祖国の詩人Robert de Boronが、かの「メルラン」の中で詠った言葉を、真に目にしようとは。
伝説も神話もすべてを飲み込んでいる、パラミタはおそろしい場所だよ」(皇祁光輝&ルールタビーユ&ラウール)


「それは、後で自然に答えのでる問題ね。さあ、イーストエンドへ。死の杯を探しに行きましょう」(シェリル・マジェスティック)


どっかから手に入れた、危ねぇ水を飲み続けて人間じゃなくなっちまったらしいな。(パラケルスス・ボムバストゥス)


いまでも十分に怪しい振る舞いはしているのですけれども、まだ、ラムズ・シュリュズベリィとラヴィニア・ウェイトリーの二人が怪しい、おかしいと感じている人は少ないでしょう。
二人があきらかに犯人側の人間である、捜査陣にそう確信させる動きをして欲しいのです(シャーロット・モリアーティ)


ニトロが容疑者になったのは、彼の犯行の目撃者がいたからだが、衆人環視の中での暗殺事件においては、よほど信用にたる証拠がない限り、目撃者の証言も疑ってかかる必要がある。
ようするにはじめから、ウソだと思ってきかなければならない、という意味だ。
考えてみよう。
自分自身が、千人でも、一万、二万でもいいが、その群集の一人として、非日常的な状況下で、興奮状態にあった時に、正確に自分の言動を記憶していられるか。
混雑した電車の中で人にもまれながら、特にそうする必要もないのに、正しく周囲の人の行動を把握、観察できているか。
そういうことだ。
俺は、日記という自分でどうとでもできる証拠まで用意して、ニトロを告発した目撃者に疑問を感じる。
ラムズ・シュリュズベリィ。ラヴィニア・ウェイトリー。
この二人を調べる必要があるな。(レン・オズワルド)


「水を飲んでいるから、俺は死なないんだ」(病院の男)


簡単に説明しますと、マジェスティック内にある複合アパートメント、ストーンガーデンは、四つの建物から成り立っています。
青の宮殿IDEALPALCE(東)、大聖堂CATHEDRAL(西)、死者の棲家CHARNEL(南)、化け物屋敷FUNHOUSE(北)の四つです。
名前の前についているのが、それぞれの異名というか通称です。
ボクはそのうちの一つのIDEALPALCEへ捜査へ行きました。
殺人事件の現場でもあり、心霊スポットとしても有名なここで、ボクは驚くべき事実を知ったのです。
IDEALPALCEの現在の管理人(責任者)は、女性の方なのですが、彼女の父親である先代の管理人は、かっての戦の後遺症で足が不自由で、性格もふさぎこみがちな方だったそうです。
管理人の心情を反映してか、アパートメントの内部は荒廃し、住民たちはその日暮らしのならずものの職人ばかり、当時、完成のめどが立っていなかったここは、ガーデンで一番治安の悪いアパートメントになってしまいました。
ところが、ある時、管理人が、ガーデンの住民が持ってきた杯で水を飲んだところ、治療不可能だった足は完治し、心身ともに精彩を取り戻した管理人の指揮のもとで、この設計図のないアパートメントは、IDEALPALCEと名づけられ、無事、完成しました。
計画的な運営がなされるようになり、内部も平穏になったのでした。
IDEALPALCEの管理人は、代々、ガーネットと名乗ることがストーンガーデンの規則で定められています。
現在のガーネットさんの以前の名前は、ガラハッド。
静香様。彼女のこの名が持つ意味はご存知ですか?
ここまで話、名称を総合して考えて、ボクは聖杯伝説を連想しました。地球の中世の騎士道文学の有名なエピソードの一つです。
ロンギヌスの槍によって足に傷を負い、落ちぶれたWounded Kingが、勇者ももたらした聖杯で傷をいやし、国を再建させる物語。
この時、用いられる魔法の力を持つ聖杯は、西洋では実在すると考えられ、その在りかをめぐって、様々な調査、考察がなされました。
そのうち一つが、フランスの画家ニコラ・プッサンの絵画「アルカディアの牧人たち」に描かれている墓石の文章です。
そこには、Et in Arcadia ego(私は理想郷にいるOR私は理想郷にいる)と書かれています。
一部の聖杯研究者たちは、この私を聖杯と解釈して、絵画の意味を、聖杯は理想郷にある、と読み解きました。
IDEALPALCEとは、単純に意味を考えると、理想宮ですよね。
謎めいた杯の力で、健康を取り戻した先代の管理人は、その杯を安置したここをIDEALPALCEと名づけたのかもしれません。
ガーデンの幽霊たちは、再び生者になれる力を求めてIDEALPALCEに集うのだと、噂されています。
(クリスティー・モーガンの手紙)


インクルージョンは、ある種の科学者である、と言えなくもないですね。
私の得た情報をまとめると、彼は聖杯を研究していたようです(レギーナ・エアハルト)


彼は聖杯と同等の力を持つ杯の製作に挑戦します。
ギルドが持ち去ったのか、現物はここにはありませんが、杯だけでなく、桶、柄杓、花瓶などいろいろな形で作り、それにくんだ飲み物を人に飲ませたりしたようです。
何個かは売ったり、あげたりもしたらしいです(レギーナ・エアハルト)


「ワウワウ。ワウウウン」(魔法の水か。スポーツマンらしい冗談だな)
「バウウバウウウウバウンバウン」(冗談じゃねぇこの水は可能性を開放する水なんだ)
「バウバウバウバウ。バウバババ」(こいつをくんでくるここの職員が魔法にかぶれててな。自分のくんでくる水にだけこっそり魔法をかけるようになったんだよ)(ロウ・ブラックハウンド&競争犬たち)


旦那が行方知れず。はあ、それは困るよな。
ガーデンの七不思議。それの調査に行って、そのまま帰らないんだ。心配だよな。
他にも一緒に行った連中が全員、帰ってないのか。
ふーん。で、その七不思議って、なんなの?(ヴェッセル・ハーミットフィールド)


ガーデンが四つの部族の集まりだってのくらいは、知ってるだろ。
部族それぞれに伝説があるんだよ。
まあ、四部族全部まとめて信じてる伝説もあるんだが。
ちいっと前に、メロン・ブラックの野郎が、ガーデンのどこかにあった伝説のお宝を見つけちまったって話が流れたんだ。
そのせいでガーデンの平穏が崩れるみたいな、な。(競争犬トレーナー)


信心深いやつらは、自分の部族の神様や英雄をそれぞれ崇めて、救いを求めだした。
ブラックの手下の力を借りて、英霊を召還しただのっていうヨタはずいぶんきいたよ(競争犬トレーナー)


彼の名前は、インクルージョン。
本人は、現在、行方不明だ。
彼は、魔法を研究したらしい。彼が犬たちに用意していた水や食べ物には、特殊な呪いや薬物が混ぜてある恐れがある(三船敬一)


「一筆書の六芒星だ。インクルージョンは、やつが自分のものだと思っていたものには、自らの血でこの印を記していたらしい。調べさせてもらったところ、この競技場で印が記されているのは、この桶くらいだ」(競争犬トレーナー)


ガーデンには地下があるんです。そこは、MOVEMENTと呼ばれています。(ヴィゼント・ショートホーン)


MOVEMENT関係は、ガーデンでも上の方の人間しか知らない情報です。(ヴィゼント・ショートホーン)


死の杯は、偽りの聖杯の一つ。
死の杯を仰いだものは、死を体内にいれる。
死を己の中に取り込んだことになるの。
ようするに、生きながらの死人みたいになってしまう。(シェリル・マジェスティック)


ガーデンは、石と人柱によって支えられている、石柱の盛られたの大皿だ、って言葉も住民のじいさんから聞いてな。(高崎悠司)


「ここはさ。
ヘンな柱や、石版や歯車がごっちゃごちゃにある、機械装置の中みたいな部屋? だろ。
この装置つうか、部屋全体がな、突然、動きだしたんだ」
「装置ならいまも動いておるぞ。
そこもここもあれもこれも。
ちゃんとみておればそれほど危険ではあるまい」
「逆回転したんだよ。
俺も一定の規則にしたがって動いてから心配ないと思って、探索してたんだ。
そしたら、急に二倍、三倍速ですべてが逆に動きやがった。
俺は可動式の石柱に足を払われ、回転する菱型石版にのせられて、歯車にまきこまれたんだ」(ヴェッセル・ハーミットフィールド&木曾義仲)


石庭には、上にも、下にも、真ん中にも秘密があってね。
きみらはその下の方の秘密の核心にいるんだよ。
これはなにかと問われたら、レトログラードと答えよう。
その力は、逆回転。
さて、すると、残りはどんな秘密なのかな。
すべてを見つけなくても、秘密が示唆する全体を把握できれば、いつまでもMOVEMENTにいない方がいいと思うな。(ベスティエ・メソニクス)


雪だるまの中には一体に一人ずつ、銀の髪の男の人と、赤い髪の女の人が入っていた。(エルム・チノミシル)


◇◇◇◇◇◇

みんながそれぞれに見つけたりしたこれらの情報をもとに、じけんは捜査されていったです。
ほかにも情報はいっぱいあるですが、とりあえず、これくらいあれば、自分なりの考えかたでなんとなく事件の真相がみえてくる気がするです。
こうしてみると推理げーむみたいでなかなか楽しいですね。
ボクももう一度、事件の謎にちょうせんしたくなったですよ。
まえとはべつの角度から、真相にせまりたいと思うです。
そうですね、執筆するまえにこしおもいでにひたるです。

◇◇◇◇◇◇

<ベスティエ・メソニクス>

やあ。自分でも、自分が何者なのかわからなくなりつつあるベスティエ・メソニクスだよ。
とりあえず、長い長いこの事件も前半戦は、終了らしいね。
まだなにも終わっていないってのは、言わないお約束だ。
さて、ここで情報を整理しておくとしよう。
僕があちこちに出入りして、目にし、耳にした情報の数々だ。
もし、よかったら読んでみて欲しい。

と思ったら、未来のヴァーナーの創作メモがネットに流失しているらしい。
ガーデンはいま、目に見えるところも、見えないところも混乱の極みだから、そんなことがあってもしかたがないかもしれないな。
内容的にも重複しているようだし、僕の方はやめておくとするかな。
もし、きみが未来のヴァーナー・ヴォネガットの創作メモを読む機会があったとしても、それを信じるかどうかは、きみの自由だ。
そもそも、メモを書いたヴァーナーのいる未来が、いまきみのいる世界の未来とは限らないからね。
おっと、久しぶりに最後まで言えたな。
それでは、諸君、またどこかでお会いしょう。

◇◇◇◇◇◇

マスター・コメント

<かわい家>

ごきげんよう。かわい家です。
このたびの大遅延、誠に申しわけありませんでした。
御心配、御迷惑をおかけして非常に反省しております。
今回のシナリオに参加してくださった方、いつも私のシナリオに参加してくださった方に、申しわけない気持ちで一杯です。
ごめんなさい。
運営の方々ともお話しましたが、今後も実生活とおりあいをつけながら、ゲームマスターを続けていきたいと思っておりますので、プレイヤーのみなさま、なにとぞよろしくお願いいたします。

シナリオの方は、後編のシナリオガイドをこのリアクション公開から一ヶ月後くらいに公開したいと思っています。
後編は、前編の内容を受け、PCそれぞれが自分なりの事件の解決、真相を求めてゆく(創ってゆく)展開になる予定です。
ストーンガーデンで、あなたのPCだけの真実を見つけて欲しいと思います。

本当に申しわけありませんでした。
参加PLの方、全員に直接、謝りたいのですがそれもできません。
本当に申しわけありませんでした。
失礼します。