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なし

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カノンを取り戻せ!

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カノンを取り戻せ!

リアクション


3


 そうして戦いの火蓋は切って落とされた。
 空母から真っ先に飛び出して行ったのは【ブレイズ小隊】。敵イコンの撃破を最優先とする部隊だ。
『【ブレイズ1】、【天魔】でる!』
 桜葉 忍(さくらば・しのぶ)がジェットを吹かしながら発進する。
 マントが付いた以外は一般的なイーグリット・アサルトだ。
「信長はイコンに乗るのは初めてなのに、動かし方を覚えるの早すぎだろ」
 忍がパートナーの織田 信長(おだ・のぶなが)に言うと、
「そうか? 私は普通だと思うのじゃが……」
 と返ってきた。
「まあ、なにはともあれ……」
「【ブレイズ小隊】出撃じゃ!」
『応!』
『こちら【ブレイズ2】の【ゲイル】。ワイバーンで出発する!』
 ポニーテールの黒髪を揺らし、金の瞳を光らせ、ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)がそう言う。
『応!』
 ウィングは笑顔で答える。そして三番機が発進する。
『こちら【ブレイズ3】の【レイヴン】。行きます!』
 ショートの黒髪に黒い瞳、小柄で可愛い少年レイヴ・リンクス(れいう゛・りんくす)がパイロットスーツに身を包みながら宣言する。
「よし、【ブレイズ3】、GO! だ!」
 誘導に従って発進する。
「敵と接触するまではパワーは押さえ気味で行くよ!」
 ロングの白髪に白い瞳、大人びていて顔立ちが端正なレイナ・アルフィー(れいな・あるふぃー)はそう言うとスロットルを慎重に握った。無駄な燃料は使えない。そんな配慮だろう。
『【ブレイズ4】、【突風】。準備よろし!』
「GO!」
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)がイコンを発進させる。格闘戦仕様のイーグリット・アサルトだ。
「それにしても、イコン……ロボットに乗れるのに、浮かれてないね?」
 パートナーのロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)の問にエヴァルトはこう答える。
「イコン戦では、『人を殺している』ことを忘れがちだからな……浮かれている場合ではない。人を殺しに行くという覚悟を決めなければな……」
「それもそうだね。でも、気負いすぎて操縦ミスらないでよ」
「分かっている。代理の聖像、神の化身たるイコンよ……友の為、仲間の為! その強大なる力を、我等に貸し与え給え!」
 エヴァルトはイコンにそう祈ると敵基地へと向かっていった。
「【ブレイズ5】、【ゴッドサンダー】準備よし!」
「よし、GO!」
 ショートの黒髪に青い瞳、かわいくて子どもっぽい鳴神 裁(なるかみ・さい)はイーグリットのコントロールをしながらパートナーのアリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)に言った。
「アリス、ディテクトエビルを頼むよ」
「了解」
 随伴飛行歩兵の人数がわからないのでスキルに頼って警戒をしていくしかない。今のところまだ会敵していないが時間の問題だった。
『【ブレイズ6】、【荒人】出る! 睡蓮、手のひらに乗れ!」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が甲板から発進する。手のひらにやさしく紫月 睡蓮(しづき・すいれん)を抱きながら。
「よし、最適化はこちらに任せておけ」
 エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が唯斗のくせに合わせてエネルギーの流れを効率化する。これがいざという時に役立つはずだった。
「マスター、現在オールグリーンです」
 魔鎧のプラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)が鎧形態になりながらイコンに同乗している。
「【ブレイズ7】、【グリーンアイズ】出撃します!」
 水橋 エリス(みずばし・えりす)はそう言ってアルマイン・マギウスの亜種を操作する。
「リッシュ、コントロールを渡すわ」
「了解! エリスは周辺に気を付けていてくれ」
「わかったわ」
 パートナーのリッシュ・アーク(りっしゅ・あーく)とこのような絵話をかわしながら索敵を開始した。やがてレーダーに感がある。
「10時の方向、下30度。敵機25機。リーダー機はコームラント。天御柱学院の元教官と思われます」
『了解。【ブレイズ8】【ビル】出ます!」
 ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)がワイバーンを操って飛び立つ。
「くっくっく、我をおいていこうなどとは甘い甘い。イコンに乗らずともイコンに対抗する手段などいくらでもあるであるぞ? 裁。なんだ、緊張しておるのかブライト。そんなことではあっちの小僧(ビル)に負けてしまうであるぞ?」
 メフォスト・フィレス(めふぉすと・ふぃれす) はそう言ってワイバーンに囁くと「【ブレイズ9】、【ブライト】出るぞ!」

 そして一同は会敵する。
「くっくっく、あちらさんは随分多いであるな。だが、それでこそやりがいがあるというものぞ。我らの初陣にはふさわしいである、さぁ、気合をいれていくであるぞ、ブライト」
 メフォストは余裕の笑みで敵を見つめると、小隊長の指示を待った。
 此方9機、彼方25機。まともに戦っていては勝ち目などなかった。
 織田信長の英霊である信長は当然のことながら戦国随一の戦名人織田信長の記憶を受け継いでいる。その勘が告げていた。敵の数は多い。持久戦になったらこちらが不利になる。と。
『狙うなら指揮官じゃな。それと敵は5個小隊に分かれてこちらを包囲しようとしているが、包囲網が完成したわけではない。全速前進し中央の敵部隊を叩け! ものども、合戦ぞ!』
 信長の指揮に従ってブレイズ小隊はこちらを分散して包囲しようとしている敵の一個小隊に向かって突撃した。各ユニットの機動力がほぼ一緒なのも幸いした。ブレイズ小隊は一糸乱れることなく中央の小隊と突撃する。
『コームラントは射程が長い。撃ちあっても潰されるだけじゃ。各機、回避行動をとりながら前進!』
 信長の指示が飛ぶ。
 コームラントの大型ビームキャノンとシュメッターリングの機関銃の弾が飛んでくるが、パイロットたちはそれらをギリギリで回避しながら敵に肉薄する。
『ワイバーン部隊と格闘戦イコンはコームラントを叩け! 他の機体は射撃で援護じゃ!』
『了解!』
 【グリーンアイズ】はすでに高度をとって敵集団に狙いを定めていた。
 睡蓮は敵イコンの手のひらから飛び出した随伴飛行歩兵相手にセフィロトボウで遠距離射撃をしかけていた。何しろサイコキネシスで速度や射程距離が上がる。おかげで非力な彼女でもなんとか敵にダメージを与えていた。
 【荒人】もイーグリットのビームライフルの照準をすでに敵にあわせていた。
 【天魔】もすでにロックオン済みだ。
「バンディットWVR(敵目視内射程)ブレイズ3、エンゲージ(ブレイズ3、交戦開始)」
 【レイヴン】もアサルトライフルを構えてすでに発射体制に入っている。
 【ゴッドサンダー】も上空からマジックカノンの発射体制に入っている。
 【ゲイル】もワイバーンながら火砲を搭載しており射程距離は十分だった。
 5つの銃口が一斉に火を噴く。
 その5つが一斉に一機に集中するからたまらない。避けることもできずにシュメッターリングは爆発する。
 弾を避けて離散した敵小隊のリーダーである元教官機のコームラント目がけてワイバーンと格闘戦仕様のイコン。
 【突風】が同人誌で殴りつけ敵のセンサーの視界を奪っておいてから、レーダーに反応しにくいブライトとビルのワイバーンクローがコームラントを襲う。
 関節系を破壊し操縦不能に追い込むことに成功。元教官は仕方がなくコームラントを捨てて脱出する。パラシュートが二つ、中国の空に舞った。
 その後ブレイズ小隊は時計回りに進路を転身しながら敵集団の後背をついた。
「墜ちてよね!」
 【ゴッドサンダー】のマジックカノンがコームラントのジェネレーターに直撃する。
『しまった。脱出する』
 一撃必殺の念を込めたその弾丸は文字通り一撃で敵イコンを破壊してさらに二つ、パラシュートの花が咲いた。
 残敵の掃討はしない。ただ逃げるにまかせるのみ。たまに果敢に立ち向かってくるシュメッターリングもいたが9対1ではいかんともしがたかった。
 ブレイズ小隊は勢いにのって残る右翼の敵小隊を片付けようとする。しかしその小隊との交戦状態に入ったときに左翼の二個小隊も戦場に到着してしまったので、今度は数の劣勢を強いられることになる。しかも指揮官たる元教官はイコンとはなにか、イコン戦における戦術とは何かを知り尽くしており適切な機動でコームラントを被弾から守ると大型ビームキャノンで3方向から砲撃してきた。これに対してブレイズ小隊がとった対応は垂直落下である。
 翼をすぼめ、あるいは動力を切って引力にまかせるままにしたのだ。
 おかげで敵の攻撃を完全に回避できた。だが、こんどは空戦で良い状況とは言えない上を取られるという状態になる。
 騎兵隊が登場したのはその時だった。
「おらおらー、蒼空小隊の登場だ!」
 涼司だった。
 涼司と美羽、加夜、大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる) の5機――4機のイーグリット・アサルトと1機のコームラントだった。
「二時の方向から敵部隊が接近」
 鏖殺寺院のパイロットがレーダー反応を読み上げる。だが、
「おせえ!」
 対電波シールドコーティングは電波を遮断するということで敵のイコンから発せられている電波も遮断していたのである。おかげで敵は増援の到着に気づくのが遅れた。
『トマス、大型ビームキャノンや!』
 泰輔が叫ぶ。
 敵の集中している空域への大質量のエネルギーの掃射が行われる。まとめて爆発するシュメッターリングが5〜6機。パラシュートは見えたり見えなかったり。戦死したものもいるのだろう。泰輔はコームラントのエネルギー量の大きさに驚いた。
『全機、機関銃一斉射撃!』
 涼司の指示でイーグリット・アサルトのアサルトライフルとコームラントの汎用機関銃の弾幕が敵に降り注ぐ。ロックオンをしていない射撃なので狙いはバラバラだが敵の行動を狭めるという目的は果たした。その間にブレイズ小隊が敵の上空と背後をとっていた。ブレイズ小隊を包囲するために円陣を組んでいた敵を、垂直方向と水平方向から同時に捉える。
 教導団で軍事訓練を受けているトマスは判断が早かった。
『全機、一斉攻撃!』
 その判断でこちらのほうが早く弾を撃てた。上と横から降り注ぐ弾幕に、敵は下に回避するしかなかった。そこに加夜から敵に通信が入る。
『おねがいです。殺したくありません。引いてください……逃げれば追いかけません』
 10秒。
 10秒の間があった。
 その間に敵はどれほど逡巡したのだろうか。果たして彼らは逃げ出した。
「山葉、助かった」
 ウィングが涼司に謝辞を述べる。
「いいさ。お前は俺の味方なんだろう? だったら味方のピンチに駆けつけるのが仲間ってものじゃないのか?」
「……フッ。そうだな。しかし、お前は設楽カノンのことで暴走するかと思ったが、わりかし冷静なようだな」
「指揮官が冷静じゃないと周りがやっていけないだろう。俺はこれでも今すぐカノンのところに飛んでいきたい気分なんだ」
「そうか。であれば、敵の第二派を待つべきだろうな」
「ああ」
 敵の第二派はきっとカノンも来る。ミレリアも来るだろう。今のうちに弾倉を取り替えたりエネルギーパックを取り替えたりして残りの味方が到着するのをまとう。そうして時間を過ごしているうちに平等院鳳凰堂 レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)率いるリベレイト小隊と、S@MPが到着したのであった。
フレイ・アスク(ふれい・あすく)アポロン・サン(あぽろん・さん)だったな?』
 とは涼司の言葉。
『はい』
『ミレリア・ファウェイの『歌』に対抗出来るのはおまえたちの『歌』だけだ。これからは基地に接近するから対空ミサイルが湧いてくるだろう。そんな中でのライブになるが、ちゃんとミレリアの『歌』を打ち破ってくれよ』
『了解です。S@MPメンバー、全員スタンバイできています』
『私もいますよ。こんどこそミレリアを倒してあげるんだから、覚悟してなさい』
 ミレリアとの因縁を持ち完全にミレリアを敵対視してしまった葛葉 杏(くずのは・あん)がそう宣言する。
「杏さんちょっと怖いです……」
 パートナーの橘 早苗(たちばな・さなえ)がそんなことを言う。
「早苗、私、焦り過ぎかな?」
「そうかも知れません。のんびり行きましょう」
「ええ……」
 そして第二波がやってきた。