天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

節分に鬼っ娘退治!?

リアクション公開中!

節分に鬼っ娘退治!?

リアクション



決着


 縛り上げられた牛頭馬頭の前に佇んだ諒は、彼らにの傍にしゃがみこんでいた。

「牛馬なぁ…結局は低俗動物霊ってことか? 牛や馬に憑依してタタキか馬刺しにでもなっちまえばいいんじゃないか? 大体裏切り者っていうのは慣れあってる奴同士が使う言葉だろ。あいにく俺には動物の知り合いはいないもんでな……」

真はひっそりと意識の片隅でつぶやいた。

「……豆ぶつけたり戦う人がやりやすいようにーとか言ってたけど、もしかして挑発したかっただけか?!」

 菫とともに来ていた、見た目はプチ閻魔さまといった風情の閻魔王の 閻魔帳(えんまおうの・えんまちょう)は本領発揮といった感じで牛頭馬頭に冷ややか口調で脅しをかけていた。

「久しぶりですね、牛頭鬼、馬頭鬼。しかし、ここはこの世……なぜ、あなたたちがここにいるのですか?閻魔さまから役を申し付けられていたはず。さてはさぼりですか?」

ものすごい上からな物言いだ。

「閻魔帳である私の役目は全ての罪を記録すること。あなたたちも例外ではありませんよ。しっかりと閻魔さまに報告しておくので、そのつもりで」

無論閻魔帳にそのような力はない。ハッタリである。

「……お、ほん。善行を積むならば、多少罪も軽くなるでしょう。たとえば鬼と言えば打出の小槌とか」

どさくさにまぎれて宝物の催促もしてみたが、牛頭も馬頭も心ここにあらずだった。なぜなら、信長がヒロイックアサルト、第六天魔王を発動してこちらにやってきたからだった。赤黒い炎のような禍々しいオーラと威圧感が信長の全身から沸きあがっている。一目見た牛頭、馬頭は縮み上がった。

「地獄の炎とのもに、ナラカへ送り返してやろうかの?」

『モォオオオオしませ〜〜ん、つい、出来心で……』
『仕事がきつくてストレス解消しようと思っただけで、ヒヒヒーーーン』

「もう十分反省されているようですし、ここらで勘弁して差し上げてはどうでしょうか?」

玲がすっと茶を手に現れ、牛頭と馬頭のいましめを解いた。それから牛頭、馬頭に向き直って言った。

「いやいや。豆をぶつけられるのは……大変な事だ。物をぶつけられて追われるのは精神的にくるものがあるのではないか? これで節分も無事に終わりましたし。季節物とはいえ鬼役お疲れ様である」

そういって二人の鬼に茶を手渡したのだった。

 涙目でお茶をすする牛頭と馬頭を見やって歩が、

「せっかく地上に上がってこれたんだから、悪さをしなかったら、期間限定で体を貸してあげても良いよ」と言った。
「仲良くするにはお互いを知ることが不可欠だと思うしね」

巡も言う。

「うーん、騙されたら騙されたで仕方ないけど、最初から疑ってかかってお互いに何もしないのは、悲しいことだしね」

『あいえ、結構です。モーー、仕事に戻ります』
『お騒がせしました。ヒヒヒーン』

帰ろうとする牛頭と馬頭に、陽太が声をかける。

「あ、ちょっといいかな。奈落人ガルーダのこと、何か知らないか?」

牛頭と馬頭は顔を見合わせた。

『ううーん。俺らは使役労働者担当だから、外のことには疎いんだモー』
『俺も聞いたことがない。役に立てなくてスマンな。ヒヒーン。』

「そうか、ありがとう」

牛頭と馬頭は憑依を解き、地面に開いた穴から残った小鬼を引き連れ、ナラカへと帰っていった。まるで穴などなかったかのように地面がふさがる。かくして遺跡は元通りの平穏を取り戻したのだった。

 おもむろに美緒と瑛菜のそばにやってきた菫が、ぐったりと倒れ付した美緒の胸を掴む。

「きゃっ!!」

美緒が顔を赤らめる。

「もう〜。こんな重いものつけてるから憑依されるのよ」

ついで瑛菜に向き直り、

「まあ、これはこれで?」

と、胸に手を伸ばす。

葵とフィリッパが鬼のような形相で、同時に菫を張り飛ばした。

「やめなさいっ!!!」
「おぅっ!!」

 憑依が解けた美緒を、ヴァーナーが満面の笑みを浮かべて抱きしめる。美緒が痛そうにうめく。

「美緒おねえちゃん良かったねえ、でもなんだか寒そうです、はい」

タオルをぽん、と渡す。
亜璃珠が黙って美緒にベルフラマントをふわりと巻きつけ、そっと囁く。

「これでボディラインは見えなくなってよ」

命の息吹でノーンが美緒、瑛菜の回復をはじめた。

「うーん、これはあとで痛みそうです!!」

「しかし……節分っていうのはとてもハードな行事なんだな」

ルーツがつぶやいた。

ミハエルが満夜に向かい

「ほう。節分には年の数だけ豆を食べるのか……なあ、満夜、一人前になりたくば、年の数以上に食べるのがいいんじゃないのか」
「……余計なお世話、です」

散らかった遺跡の床を見た玲がつぶやく。

「……豆を掃除すべきであろうな?」