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すいーと☆ぱにっく

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すいーと☆ぱにっく

リアクション

「でも、まだ確実な情報が手に入っていないし……」
 と、頭を悩ませるセイニィ。
 ドリアンと芳香剤で囲まれたパッフェルからは、何とも言えない匂いが漂うようになっていた。食欲をなくす匂いだ。
「方法が無いわけではないのですが……、一つ実証してみるとしましょう」
 と、それまで何事か考えていた様子のシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)が言った。
 セイニィがそちらに目を向けると、シャーロットは自分にも贈られていた呪いのチョコレートを躊躇いもなく口に入れてしまった。
 何てことをしているのだと誰かが突っ込みを入れる前に、シャーロットは自らチョコ化した。
「え、どういうこと?」
 困惑するセイニィにシェリル・マジェスティック(しぇりる・まじぇすてぃっく)が言う。
「私の予想が当たっていれば、シャルの呪いを解く為の条件はそろっているの」
 と、シャーロットの隣へ立ち、セイニィを見つめる。
「呪いを解く為の方法は、呪われた人が想いを寄せる相手からのキスよ」
 誰もが押し黙った。シャーロットの行為は大胆すぎた。
「それって、つまり……?」
「今まで恋愛経験がなかったシャルの言葉や態度じゃ、お前が気付かなくても仕方ないんだが」
 と、呟く呂布 奉先(りょふ・ほうせん)
「えっと……?」
 リアクションに困るセイニィの様子を『隠れ身』で姿を消した霧雪六花(きりゆき・りっか)がメモリーに記録していた。
 そうはさせまいとセイニィの前へ出る武神牙竜(たけがみ・がりゅう)
「確かにそれで解けるかもしれないが、駄目だ。まあ、セイニィがチョコ化していたなら、俺が責任を持って唇を奪わせてもらうが」
 チョコ化したシャーロットが動揺したように見えた。
「何言ってるのよ」
「え? 惚れた女に本音を隠さずに言ってるだけだが……俺じゃ、セイニィの王子様役には役不足か?」
 と、首を傾げる牙竜。
「ねぇねぇ、そんなことよりもセイニィさん食べたいなぁ」
 タイミング良く口を出す朝野未沙(あさの・みさ)
「ちょっとで良いからさ、ね?」
 と、セイニィへ迫る。
「ちょ、セイニィを困らせるなっ」
 すかさず牙竜が止めに入ったが、未沙はなおもセイニィを欲しがって抵抗する。
「えー、ほんのちょっと舐めるだけだから良いでしょ?」
「駄目だ!」
 そんなセイニィの奪い合いに気を取られることなく、ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は二体に増えたチョコレート像を見ていた。
 ふとひらめいた様子でボードを取り出し、ロザリンドはそこへ文章を書き込んだ。
『胸の部分にチョコを盛りつけて下さい(女性限定!)』
 そしてパッフェルの隣へ立つと、自分の横にボードを立てた。
 シャーロットの残したチョコをぱくっと口に入れ、あっという間にチョコ化してしまうロザリンド。溶けた部分を修復できるのであれば、盛ることも可能だと考えたのである。
「……増えたな」
 と、呟く佑也。
「さらなる対策が必要になりそうですね」
「芳香剤、買い足さなくちゃ」

2.ぞくぞくちょこか

 書斎へ入ったイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)は、机の上に置かれた箱とメッセージカードを見て叫んだ。
「ありえん!」
 差出人は気になる相手の名前だったが、その彼女がこんなことをするとイーオンには思えなかったのだ。
 ましてや、相手がこういった行事に疎いことは知っているし、わざわざカードを残していくなんて雰囲気のあることをするだろうか。いや、全くもってあり得ない。
 イーオンが怒りを露わに箱とカードを取り上げた直後、フィーネ・クラヴィス(ふぃーね・くらびす)が帰宅してきた。
「犯人を捕まえるぞ!」
「え?」
 戸惑うフィーネだが、その手に噂のチョコレートらしき箱を見つけてはっとした。ちょうど、その話を聞いてきたところだったのだ。
「彼女の名を騙るなど許せん! フィーネも協力しろ!」
 すっかり怒っているイーオンを見て、フィーネは仕方なく彼の後を追うことにした。

 陽光の当たるリビングでエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)は、受け取ったばかりの包みを開けた。その中にはもちろん、チョコレート。
 近くに誰もいないのを確認してから、うきうきわくわくとチョコを取り出す。
「いっただきまーす」
 ぱくり。口の中に入れて甘みを味わっていると、背後に人気を感じた。
「エリー様? 今、玄関にいらしたのは何方ですか」
 上杉菊(うえすぎ・きく)だった。慌てて振り返るエリシュカ。
「むぎゅっ?! は、はわ……っ」
 菊は彼女の手にチョコレートの箱があることを見て取ると、呆れた様子で言った。
「摘み食いとは、感心いたし兼ねますよ。それは、御方様の物では御座いませぬか?」
「え、エリーは、つまみぐいなんか、してない……の」
 と、口をもぐもぐさせるエリシュカ。しかし、どう見てもそれは明らかだった。
「……菊媛も、食べる?」
「それは……そうですね、いただきましょうか」
 エリシュカを見ていたら不憫に思えてきて、菊は差し出されたチョコレートを受け取ってしまった。
 そして口の中へ運ぶ菊。すると間もなく、異変が起き始めた。
「はわ、ローザっ……!」
「不覚っ……御、方様……!」

「あれ、こんなの買ってきてたっけ?」
 と、テーブルの上に置かれた箱を手に取る久世沙幸(くぜ・さゆき)
 桐生ひな(きりゅう・ひな)はそれを見て、特に怪しむ様子もなく言う。
「もらい物か何かじゃないですか?」
「ああ、そうかも。きっと買い物した時にもらった、試供品か何かだねっ」
 と、何故か納得してしまう沙幸。
「二人が戻ってくるまで暇だし、食べちゃおう」
「ですね、そうしましょー」
 そして蓋を開けると、沙幸とひながそれぞれチョコレートを手に取った。口を開けて、ぱくりと食べる。
「なかなかしまりの良い味なのですー」
「うん、そうだね……って、あれれ?」
 飲み込んだチョコレートから嫌な感覚があふれ出してきた。
 はっと顔を見合わせる二人だが、それを確認し合う前にチョコレート化してしまう……。

 いつの間にか届いていたチョコレートとメッセージカードを見て、城紅月(じょう・こうげつ)はぼやいた。
「カードの宛名はレオン? 先越されちゃった。【愛してます、私だと思って食べてください】って。俺のこと食べちゃうの間違いだろ」
 と、照れつつ箱を開ける紅月。自分が食べられるところを想像して頬を赤くさせるも、すぐに首を振って思考を切り替えた。
 そして紅月がチョコレートを食べると、身体に異変が起きた。
「ふわ……ぁ……ああっ! 来るっ……何か来るっ、ひああぁーっ!」

「っ、チョコになっても可愛い……!」
 と、ふざけたことを口にしながらも冷房を付けるレオン・ラーセレナ(れおん・らーせれな)
 紅月はリボンを巻かれて愛らしく飾られていたが、表情は悲痛そのものである。幸いにも紅月の意識ははっきりしていたのだが、友人に連絡を取るレオンを見ていて胸が痛んだ。可愛いと言われるのは恥ずかしいけれど、本当に想われていることを嫌でも実感してしまう。
 状況を理解したレオンは紅月を見つめてから部屋を出た。
「呪いの解除方法を聞き出してきます!」
 冷えた室内で、紅月は寂しさを覚えた。――本当は……いつだってそばにいて欲しいのに。もしかして、これが好きってこと?