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【じゃじゃ馬代王】少年の敵討ちを手伝おう!

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【じゃじゃ馬代王】少年の敵討ちを手伝おう!

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 涼介とアリアは隣の部屋へ続く扉へ向かう蛮族の後を着いていった。2人の気配に気付いている様子は無い。鉄格子の中ではライルから聞いたままの容姿をした少女達が肩を寄せ合っている。理子と首領のやり取りはここからでも聞こえる。姉妹の眼には複雑な色が浮かんでいた。
 アリアはショットガンへ指を掛け、息をつめた。意外な人物が待ち構えていたのだ。
エッツェルが牢屋を背にこちらを睨んでいる。
――気付かれたか。
左手からずるりとオールドワンを抜き出す。奇剣と謳われる理由は、その異様な外見だけでなく発せられる妖気によるものだろう。
「何のつもりだ。そこをどけ。女を連れて行く」
「お断りします」
「はあ? 何言ってんだてめえ」
「雇って頂いた身で申し訳ありませんが、私は彼女達のために生きると決めました。あなた達のように薄汚い男と可憐で美しい姉妹……どちらを選ぶかなど、考える必要も無い」
 男が構えたアーミーショットガンがバターのように切り落とされた。
「うッ……!?」
「その植木鉢の後ろに地下へ行く階段があります。捕まっている生徒も居ます。自力で出て来て居るとは思いますが、はやく!」
 やはり気付かれてはいたのだ。驚いている間もなく、涼介とアリアは急いで地下へ向かった。

「何だ! どうした!?」
 突如聞こえたうめき声に、ギロンゾが顔を隣室へ向けた。その場に居た誰もがその瞬間を見逃さなかった。陽一が拘束している用心棒の腹へ肘打ちを食わせる。よろめき、手が緩んだ所へ身を翻しついでとばかりに蹴りを突き入れた。
 鉄心が理子へナイフを押し当てる男の手へ銃を打ち込む。悲鳴を上げ、ナイフを落とした隙に踏み出した(もちろんきっちり肘討ちを決めておいた)理子の手を引いたのはフェンリルだった。背後にかばい、肩越しに理子の状態をうかがう。
「大丈夫ですか」
「大丈夫よ。ありがとう」
 その瞳はギロンゾや用心棒へ向けられている。全くこの人は……とフェンリルは諦めのような、でも好感を覚えずにはいられない「らしさ」に苦笑を混ぜた手で胸を撫で下ろす。あっという間に用心棒達は押さえつけられた。
 舌打ちしたギロンゾの元へエッツェルが姉妹をつれて戻ってきた。エウリカの背に銃口を押し付け、ルカは姉のスカートを掴み俯いている。
「姉貴! ルカ!」
「エッツェル、そいつらを殺せ」
 呼びに行かせた男が気になったが、何より今は不利な状況を立て直すことが先だ。
「ふざけんな! 言ってたこと違うだろ!」
「はやくしろ!」
 エッツェルは沈黙したままだった。その目を見てギロンゾは気付いた。
「てめえ……寝返りやがったな」
 もしくは初めからそのつもりだったのか。懐から銃を引き抜き、姉妹へ向けようとして――上手く手が持ち上がらないことに気付いた。震えて銃を握ることすら難しい。それどころか膝が笑い、立っているのがやっとだ。
「くそっ! くっそ――何だ急に……手が……」
 信長の撒いたしびれ粉だ。それでも何とか銃を扱おうと無理やりに指を動かすも、ついにその手から銃が落ちた。ブラックコートで身を隠していた忍がギロンゾの喉元へ剣を滑らせ、羽交い絞めにする。
「下手に動かない方がいいぜ。骨が折れる」
「そう来ると思ったぜ」
「忍!」
 信長が叫ぶ。忍が振り向くと竜造が長ドスを振り下ろすところだった。蛮族なんて邪魔なだけだ。全部拘束させてから、契約者と思いっきりやり合う。それが一番遠慮なく楽しめる。そう胸躍らせた竜造だったが――。
「おっぱいの気配に俺様登場! がははは! おっぱいの気配がするぜー! どこだ〜?俺様を呼んでるおっぱいは〜!」 
 ゲブーが手をモミモミしながら現われた。その後には巽とティアや苦く笑っている英虎、ユキノの姿もある。
「おお〜あっちにもおっぱい、こっちにもおっぱい!」
 その場にいる女子の胸を見比べ、最後に理子の胸へじーっと目を凝らしたまま、ゲブーは考え込むように唸った。
「推定A」
 しばらく沈黙が流れる。呆けていた理子が内容を飲み込むにつれ、不穏な空気が漂い始める。ぶるぶる振る出した理子の背中にフェンリルが声を掛けるか迷っていると、ついに爆発した。
「ふっざけんじゃないわよ! 良く見なさいよ、あんた! どこがAなのよ! それに女の価値は胸じゃないっての! ねえ、そうでしょランディ!?」
「えっ!? あ、あの……」
「何!? あんたも巨乳好きなわけ!?」
 曖昧に視線をそらしたランディへ理子はどうなのよあんたもおっぱい星人なのどうして男ってやつはと詰め寄る。がはがはおっぱいおっぱい言いながら近づいてくるゲブーはリカインとガートルードに一撃で沈められた。
「……萎えた」
 理子に絡まれ困りきっているランディ、その場に居る女性陣からフルボッコにされつつも手がわきわきと動いているゲブー。一気に緩んだ空気に、竜造はドスをおさめた。

 その隙にコートを脱いだアリアが姉妹とライルを引っ張り、部屋の外へ駆け出した。階段を下りたところで、4人に気づいた亮司が手招きをしている。
「こっちこっち。逃げ道確保したから」
 亮司たちが広間から姿を消したのを確認したヴァルが声を張り上げる。
「皆、今までよく我慢してくれた。さあ、反撃の朗煙だ! 勝利の女神は我々に微笑んだ! 最後に思いっきり暴れてやろう!」