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魂の器・第3章~3Girls end roll~

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    第2章・挿話【5】〜ぱじゃまぱーてぃー☆〜

 解散前に春夏秋冬 真菜華(ひととせ・まなか)が言ったこと。それは、お菓子や小物、リボンやコスメを持ち寄って――

 各自、可愛いパジャマで集まること!

「ちーちゃんのパジャマは羊さんなのー♪ めぇめぇだよー☆」
 てことで、ホテルの一室で女子(?)5人が集まって。日下部 千尋(くさかべ・ちひろ)は長袖の口をちょんっと持って膝立ちで自分のパジャマを披露する。
 ナイトキャップにくるんとした羊の角がついた可愛いデザイン。淡い色のタオル地のふわふわパジャマだ。
「うん、ちーちゃん超かわいいよ!」
「真菜華ちゃんはなんだか大人だねー♪ ケイラちゃんは綺麗だよー♪」
 真菜華のパジャマ……? は、胸元のばっちり開いたホルターネックキャミソールだ。黒レースに紫の透け素材の生地の下から、同系色の横紐ぱんつにブラをつけている。一方、ケイラ・ジェシータ(けいら・じぇしーた)はワンピース型のすらりとした上下パジャマだ。
「この動物パジャマ、ピノちゃんと選んだんだよー♪ ピノちゃんはその猫耳が可愛いよね♪」
「えへへー、猫さんのフードがついたミニワンピだよっ!」
 フリルつきのワンピースの下にショートパンツを合わせて。そんな彼女の手には白いマカロン。
 輪になってはしゃぐ彼女達のまんなかにはたくさんのお菓子。ポッキーにマカロン、鼻の形をしたメレンゲ。色とりどりのマシュマロやクッキーが並んでいて。
「このマカロンおいしーね! どこで買ったの?」
「あ、それ、手作りしてみたんだ」
「「てづくり!?」」
 ケイラに言われ、ピノと千尋はびっくりした。お互いの動物耳をくっつけるようにしてマカロンに目を近づける。
「すごいねー♪ とってもおいしいよ☆」
「ファーシーちゃんが作ったのとは全然ちがうよ!」
「そうかな? わたしが作ったのもいい感じだったと思うけど……」
「ファーシーちゃん、味見してないよね、あれ絶対してないよね!」
「味見? なにそれ」
 そこから……!?
「……今度、一緒に作ってみようか。ファーシーさん、パジャマはネグリジェなんだね。すごい似合ってるよ」
「そう? ありがとう!」
 そんなファーシーは、さらさら生地のネグリジェをまとっていた。胸のアンダーのあたりがきゅっとしぼられているタイプで、肩紐と上下の裾にフリルがついている。彼女は、ちょっと自慢げだ。
「可愛いのって言ってたから、ちょっと本気出してみたわ」
「うん、ファーシーちゃん、ピンクで可愛いよ♪」
「ファーシーちゃん、こっちこっち!」
「? なに? ……きゃっ!」
 呼ばれて振り返る彼女の頭を、真菜華が胸でぽわんっ、と受け止める。やわらかい胸の感触にファーシーが目をぱちぱちさせていると、頭上から声が聞こえてきた。
「銅板以来のじょしこーせー胸マクラだよーーーっ! ファーシーちゃん寝てみてーー!」
「う、うん……」
 そうして胸に頭を預け。
「真菜華さん、またおっきくなった?」
 あの時より気持ちいいかも、と思いながら、ファーシーは言った。

「え! 好きな人!?」
 持ち寄ったコスメでお互いにメイクをしあったり、おしゃれの話をしてみたり。その頃にはお菓子も半分くらいに減っていて。
 そして、話はコイバナに。
「うん! みんな、どんな人が好きなのかなーっ、て! ちなみに、マナカの好きな人はナイショ☆ ケイラちゃんは?」
 大きなクッションをもふもふしながら真菜華がふる。同じくクッションを両手で抱えていたケイラはえっ、と少しびっくりした。
「今は本命とかいないなー。ピノさんとか千尋さんはどう?」
 自分の長い髪を編んでみたりピンで留めてみたりといろいろといじっているピノ達を見上げ、聞いてみる。好きな人はまだいなくても、2人なりに何か考え方とかあると思うし。
「ちーちゃんはねー……うーん、楽しい人がいいな♪」
 いつも、やー兄のおよめさんになるよ♪ と言っているけど。けどけど。
「あたしも! まだよくわかんないけど……でも、優しくっていつも笑ってて、そんな人がいいな。あと、スポーツが出来てね! すきだよってちゃんと言ってくれてね、あとあとー……」
 ピノの理想はかなり高いらしい。
「そーだ! みんなでらぶらぶポッキーゲームしよー! あ、5人いるからローテーションね!」
「えっ! 自分はいいよ!」
「「「ポッキーゲーム?」」」
 真菜華のその提案にケイラは慌てた。そして、他の3人はきょとんとして。
「あのねー、ポッキーゲームっていうのはねー……」
 楽しそうにやり方を説明するマナカを眺めながら、ケイラはさっきのコイバナを思い出す。
(春夏秋冬さん……内緒って事は、いるにはいるのかなあ……)

 その頃。ラスと日下部 社(くさかべ・やしろ)はホテルの廊下を歩いていた。
「……って、本当に行くのか?」
「そうや! 何してるのか気になるやろ? それに、やっぱ皆で遊ばんとなーーー♪」
「…………まあ、もう時間も遅いしな……」
 ラスはぼそりと呟いた。迎えに行くという口実を自分に作りつつ、女子5人のパーティーなるものに好奇心が無いわけでもなく。むしろ一目くらいは見てみたいとか思いつつ。
「……ん?」
 そこで、2人はフリードリヒ・デア・グレーセ(ふりーどりひ・であぐれーせ)と行き会った。
「あ、何だ、お前らもこのホテルにいたのか。こんな時間にどこ行くんだー?」
「ちー達がパーティー開いてるんや! 何や楽しそうやからお邪魔しようと思ってな!」
 社は、簡単にパーティーの参加メンバーを説明する。
「へー……、俺様も行くぜ!」
「おっ、ノリいいなあ!」
 そんなこんなで部屋の前まで行くと、そこにはエミール・キャステン(えみーる・きゃすてん)が立っていた。
「……何やってんだ?」
「そちらこそ」
「「…………」」
 妙な沈黙の後に、エミールは言う。
「安心してください、護衛とかじゃありません。脳内桃色が問題を起こさないか備えているだけですので覗く人を止める義務はありませんし、報告する気もありませんよ?」
「覗くって……! いや、それは断じて違うからな! 違う……」
「よっしゃ! じゃあ早速突撃や!」
 躊躇の欠片もなく社がドアを開ける。さて、中で繰り広げられていたのは――

 とても下着っぽい服装した真菜華が、フードを外したピノの頭に胸をむぎゅ! と乗っけている。そして、千尋は(逃れられなかった)ケイラと、ピノはファーシーとポッキーゲームの最中だった。ポッキーの両端はお互いに食べすすめられていて、あとちょっとでキッスしそうな――
「「「…………」
 男3人はそれぞれの場所をつい凝視し、固まってしまう。
「……お前、なんつーカッコして……」
「んにゃ?」
「むー? ……む!(訳:何……? あっ!)」
 ファーシーが慌てて顔を赤くした。肩紐がずりおちかけている。ポッキーが真ん中から折れた。肩紐を直して正座して。
「ちょ、ちょちょちょ、な、なんでいるのよ! ていうか、なんで入ってきてるのよ!」
「あ、やー兄だーーー!」
(た、助かった、かも……?)
「あれ? おにいちゃん、何しに来たのーーー?」
「何しにって……!」
「覗きだーーーーーっ! 出てけっっ! マナカ☆アタック!」
 その途端、真菜華が持ち込んでいた飛空艇、ピンク号でアタックをかけてきた。最大時速である。
 どがどがどがっ! ばたんっ!
「「「…………」」」
「ご愁傷さまです……」
 追い出されて色々な意味で目を丸くしている3人に、エミールが労いの言葉をかけた。そこで再びドアが開き、ケイラが出てきた。
「えっと……皆、無事かな」
「「「…………」」」
「ピノさんや千尋さんを迎えに来たんだよね。寝る前に部屋まで送るから大丈夫だよ」
「そ、そうか……」
 何とか体勢を立て直したラスは、余計な事は言わずに頷いた。何を破廉恥なことやってんだとか抗議しようと思ったが、ケイラに言ってもまあ詮無いことだろう。女同士だし……いいものが見れたことは否定できず。アレでピノに同性愛とかに目覚められても困るが。
「じゃあ、よろしくな」
「うん。……あ、ラスさん。今回は色々とお疲れ様」
「……?」
「憎まれ役だったり、お父さんだったり、お兄ちゃんだったり大変だったと思うし」
「……! だから、そういう事を平気で言うなよ……! ……思ったこと言ってるだけだし……」
「……うん、まあそうだろうけど。いつも何かお世話してる感じがするからさ」
 もっと自分の為に動いてもいいのになあ、と思いながら、ケイラは部屋に戻った。
 そこでは、千尋がクッションを枕に寝息を立てていて。
「また遊ぼうねぇ……むにゃむにゃ…」
 それはなんだか、とても幸せそうな寝顔だった。

「ハッハッハ! 怒られてもうたな〜! ま、妹らのかわええ姿が見れて良かったな♪」
「……ちょっと驚いたけどな」
 お互いの部屋の前。そう答えるラスに、社はふ、と真面目な顔になって言った。
「お互いこうして知りおうたのも何かの縁や。今後も何かあった時は声掛けぇや?」
「あ、ああ……」
 突然何だ、と戸惑う彼を残し、社は部屋に入っていく。
 1年前――ファーシーが巨大機晶姫を作り上げた日から、自分の周辺も少しずつ変わっていっているような気がした。自身が変わったのかどうかは判らないけれど――