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パラミタ・ビューティー・コンテスト

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パラミタ・ビューティー・コンテスト
パラミタ・ビューティー・コンテスト パラミタ・ビューティー・コンテスト

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コンテスト

 
 
「お待たせしました。それでは、いよいよ、空京大学プレゼンツ、第一回パラミタビューティーコンテストを開始いたします。まずはエントリーナンバー1番、アスカ・ランチェスター(あすか・らんちぇすたー)さんからです」
 シャレード・ムーンの紹介と共に、フィリッパ・アヴェーヌとステラ・クリフトンがステージの左右から中央にスポットライトをあてた。こちらは、デコトラのライトではなく、ちゃんとした照明だ。
「ふっふっふー。かつてミスコン荒らしのアスカと日本中の自治体で恐れられた、アスカちゃんの真髄を見せるときがきたようね」
 会場の観客に聞こえないようにつぶやくと、アスカ・ランチェスターが堂々としたモデル歩きで、観客席の中央へとのびた花道を歩きだした。
 彼女の衣装は、白いハイレグ水着に赤いハイヒールだ。一歩一歩に力強さを込めて歩き終えると、ついと軽く顎を逸らせて、たっゆんな胸を大きくそらして見せつける。クルリとターンすると、長い赤毛が弧を描くように翻った。
「おおっ、いい目の保養であります」
 花道を下から見あげながら、大洞剛太郎が思わず叫ぶ。
 アスカ・ランチェスターがステージに戻ってくると、音楽が鳴り始めた。それに合わせて、アスカ・ランチェスターが得意の舞踏を駆使して艶やかで激しいダンスを踊りだした。
 華麗なステップを踏みながら、長い脚を強調するように大きく蹴りあげたり、スッと腰を落としてステージ上でクルリと様々な角度に回転して見せたりする。赤毛が鮮やかに白い水着の上で踊って影を映し、のばした手足が綺麗な角度でポーズを作りだした。
 タンと音楽が終わり、パフォーマンスが終了する。
「アスカ・ランチェスターさんでした。では、武神審査員、コメントなどありますでしょうか」
「そうですね、まるで白く輝く浜辺に咲くハイビスカスの花のようでした。私はあなたを信じます」
 武神牙竜が花言葉を交ぜて寸評を述べた。
「ありがとうございました。では、審査の方よろしくお願いいたします」
 
    ★    ★    ★
 
「エントリーナンバー2番、天鐘 咲夜(あまがね・さきや)さん」
 呼ばれて、天鐘咲夜がステージに現れた。
 先ほどのアスカ・ランチェスターとは対照的に、天鐘咲夜はカジュアルな服装だ。上は女の子らしいピンク色のガーリーTシャツ。下は裾に白いレース飾りをあしらった若草色のスカート。短い白のアンクルソックスで、赤いパンプスの色が鮮やかに映える。長い黒髪は右側で一房を細い赤のリボンで縛り、左側には桜の花飾りをあしらっていた。
 ゆっくりとした足取りで花道を進んで行くと、突きあたりで軽く会釈をしてからターンする。
 ステージに戻ると、先ほどのアスカ・ランチェスター同様に、踊りのパフォーマンスを披露し始めた。実は、二人とも、同じダンスホール・エンドレスワルツというコミュニティに属している。
 とはいえ、踊りの質はまったく別の物であった。
 ゆったりとしたステップで、天鐘咲夜が優雅に踊っていく。のばした腕の右手首で赤と青の大きなブレスレットがカランと音をたてて触れ合った。左手にも紫のブレスレットを填めているが、これは手首にぴったりとした細い物なので動いたりはしない。
 ときおり混じるターンでスカートの裾がクルクルと広がり、縁のレースが朝霧のように風を描いた。
「ありがとうございました。では、樹月審査員、コメントをお願いいたします」
「実にスカートがひらひらして、見えそうで見えなくて……あっ、いや、こほん、すばらしかったです」
 いったい、どこを見ていたのだろうか。
 だが、彼以外にも、大洞剛太郎もしっかりとチェックを入れていたらしい。
 
    ★    ★    ★
 
「出番です、急いでください」
 楽屋で天真 ヒロユキ(あまざね・ひろゆき)のスーツの衿を直しながら、外岡天が言った。
「うう、いったい、どうしてこうなった。だいたい、いつ俺までエントリーしたんだ、貴音」
 きちっとした黒のスーツ姿でサングラスとネクタイも黒で統一した天真ヒロユキが、貴音・ベアトリーチェ(たかね・べあとりーちぇ)の方をむいて言った。ぱっと見は礼服のようでもあるが、わずかにグレー味を帯びたスーツは、これはこれでおしゃれでもある。普段の眠たげで気の抜けた顔と比べれば、今日の彼は緊張のせいかキリッとしまって見えた。
「よろしいではありませんか、たまにはこういうものも」
 剣の花嫁としての純白のドレスを身に纏った貴音・ベアトリーチェがあっさりと答えた。
「そういえば、白衣以外の服装を見たのは初めてな気がする……」
 ちょっとまじまじとパートナーの姿を隅々まで眺めなおしながら天真ヒロユキが言った。
 普段の貴音・ベアトリーチェは、ほとんど白衣姿でそこらを歩き回っている。メガネが似合うこともあって、その姿はどこかの研究所の研究員といった感じだ。それゆえ、せっかくの豊かなプラチナブロンドも無造作にのばしっぱなしでいることが多く、あまりおしゃれをしているという感じがしない。まあ、それに関しては、天真ヒロユキもあまり人のことは言えないのではあるが。
 文字通りの花嫁衣装という感じのドレスは白いワンピースで、全体にレース模様のような光の燦めきが浮かびあがっていた。広がったスカート部分は、すっぽりと脚をつつみ隠してはいるが、うっすらと中にある脚のラインを透かし見せてもいる。袖のない肩の部分は、薄いショールが下にある肌を透かして見せつつ覆い隠し、両腕は白い長手袋に被われていた。
「さあ、行きましょう。皆さん待っておられますわ」
 天真ヒロユキの腕をとって、貴音・ベアトリーチェが言った。頭につけた、大きな白い花飾りが振りむいた天真ヒロユキの鼻先でゆれる。
「頑張ってくださいね」
 外岡天が、二人を送り出した。
 そのままならんで、二人がステージへと出ていく。
「これじゃ、まるで……」
 つぶやきかけた天真ヒロユキを、貴音・ベアトリーチェがつついて黙らせた。
 花道を往復すると、ステージ中央で、貴音・ベアトリーチェが光条兵器のクアンタムを召喚した。はっきりとした形状を持たない光の粒子のような光条兵器だ。正確に言えば、手首から先一メートルほどの空間に円筒形に光条の粒子が収束している。その範囲内に合致する武器であれば、擬似的にその武器があたかも光条兵器であるかのように光条を纏わせるものだ。もっとも、つつみ込む実体武器の部分が光条兵器の特殊効果を阻害するので、非常に癖がある光条兵器だとも言える。
 二人が手を添えた先の空間に集まった光条は、あたかもキャンドルのように光を放っていた。
「おい、これじゃまるで……」
 また突っ込もうとする天真ヒロユキを、貴音・ベアトリーチェは再びつついて黙らせた。
「ありがとうございました。では、立川審査員、コメントがありますでしょうか」
「綺麗だけど、やっぱりドレスだと野性味にかけると思うんだよね。男性の方は、ちょっとヤーさんっぽくてステキだったかも」
 まだパラ実的美的感覚の抜けない立川るるが、自分の好み全開でコメントした。
「そうです。派手な物はいけません。敬虔なれ。でも、神の前で愛を誓うのであれば、このテスタメントがそれを認めてさしあげます!」
 なぜか口をはさんできたベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが、両手を組んで祈りを捧げる。
「だから、これはそういう……」
 言い返そうとする天真ヒロユキを貴音・ベアトリーチェがつついた。