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リアクション
「ああもう! 先生! 狩られる側の気持ちも分かってくださいぃ!」
そういって、早苗は真正面から【則天去私】の回し蹴りを繰り出す。
「恨みはないが、早苗が珍しくやる気ね! だからぶっ飛ばす!」
杏は《降霊》したキャットストリート(嵐のフラワシ)で攻撃する。早苗との同時攻撃。
しかし、どちらも躱される。
「――回し蹴りは、敵に背中を見せるため隙の大きい技だ。元来その使い方は、蹴りの軌道を相手に読ませない為にあるッ!」
「えっ……」
側面に回った鬼崎の《神速》の回し蹴りがフラワシを砕き、早苗へと突き刺さった。早苗の体は民家の塀を貫通し、家の外壁にぶつかって動きを止めた。杏の顔が真っ青になる。眼鏡が壊れて真っ白になったパートナーへと駆け寄った。息はある。
「何がやる気だ。その程度ッ! 殺る気で掛かってこい! 次からは手加減はせんぞッ!」
警告ではなくそれは宣言だ。
「殺る気ってなら私の拳ならどう?」
霧雨 透乃(きりさめ・とうの)が跳びかかる。《軽身功》と《疾風突き》による連続攻撃で強襲する。鬼崎はガード。
「透乃ちゃんに加勢してくださし朧さん――」
緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)はアンデットのレイスを使役する。
「殺るか殺られるか、このスリルがたまらないよね!」
久々の強い相手と戦えるとなって透乃は大喜びだった。陽子にもそれがひしひしと伝わった。
「殺る気はおまえが一番あるようだな。殺す事も殺される事も厭わない姿勢は大いに結構ッ! だが、単純、あまりにも単純ッ!
お前、足技を使ったことがないだろう?!」
「!?」
一瞬の動揺。鬼崎は透乃と会ったことはない。なのに、自分の特徴、戦闘スタイルを、数秒で言い当てられた。その隙に透乃の拳が大きな手に覆いかぶさっていた。右手がそこから抜けない。ラッシュのダメージも受けた素振りもない。
「蹴りを使わない故に、綺麗な足だ――、しかし、戦いに向いている足とは違う! 飾りだ――! 拳に頼る戦闘に特化しているだろうが、拳だけの戦闘のパターンなんぞ、たかが知れるッ! そして、拳を砕かれればお前は終わる――」
「ああああああ――っ!!」
透乃の右手に万力で潰されていくような痛みが走る! 《龍鱗化》しているはずの右手が、ただの手に握り潰されていく。同時に敗北に心が自信が潰されていく。
「透乃ちゃん!」
駆け寄る陽子に不可視の力が働く。鬼崎が左腕を横に凪ぐと同時に、陽子の体も薙ぎ飛ばされた。 使役していたアンデッドが砕け散る。陽子は幸い。星渡 智宏(ほしわたり・ともひろ)にキャッチされて、壁にぶつかることはなかった。
「そいつを離せ!」
変わるように、シオンと桜葉 忍(さくらば・しのぶ)が透乃を助けに走る。
「気をつけい! そいつは《サイコキネシス》を使うぞ!」
織田 信長(おだ・のぶなが)の見解。注意を二人に促す。しかし、それでは足りない。鬼崎の《サイコキネシス》の使い方のそれを理解しないと、戦うことに値しない。斬りかかる二人に、透乃を投げつけて、寄せ付けなかった。透乃の右手はしばらく使えないだろう。痛みで痙攣している。骨にヒビが入っているかもしれない。
「どういうことでよ! 鬼ぃって人間のグラップラーでしょう! なんで私たち強化人間みたいに……!」
霧島 悠美香(きりしま・ゆみか)は「私たち強化人間見たいに、《サイコキネシス》が使えるのよ!」と言おうとして言葉が詰まった。自分の疑問がすでに答だったからだ。
「ああ、この前、極東新大陸研究所の奴らに頼んで、パラミタ化して貰った。復讐にはコレくらいしないと釣り合わないんでな」
と鬼崎が答えた。
「復讐ねえぇ。 ブラウたちに復讐ていうと、あれか? 先生暴走事故の被害者か――!」
月谷 要(つきたに・かなめ)が質問と一所にケリを繰り出す。しかし、足を捕まれる。両手で挟むように握り、握撃――!。鬼崎の異常な握力で要の液体金属の義足が破裂した。
「見当違いだ。俺は被害者ではない」
「ではなぜだ!」
智宏が続きを問う。
「俺の親友が、暴走事故で二人殺された。二人とも俺と同じ教員だった。理由はそれだけだ」
「つまり、これはその親友二人を弔うための復讐てわけ?」
とセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)。鬼崎は肯定する。
その親友とは、レクイエムが持ってきたゴシップ誌に載っていた二人の事だ。
「ああ、二人ともイイヤツだった。幸せになって欲しかった。――、だけどよ。二人とも幸せになる前に殺されるなんて、いや殺すなんて、あまりにも酷過ぎるだろう。二人を殺した奴を殺して、あの世で二人に土下座させないと、俺の気が済まない」
「じゃあ、2018年の暴走事故、その犯人がブラウ……」
御凪 真人(みなぎ・まこと)の推理。鬼崎がブラウを狙う理由はそうじゃないのか。
「いあ、あの事件の犯人は結局わからなかった。上がずっと隠している。ただ、分かっているのは初期強化人間6人の内の5人。エキスパート部隊長の5人の誰かだ。なら、5人全員殺すのが手っ取り早い」
「マトモにみえて、結構狂っていますねあなた――」
有栖川 美幸(ありすがわ・みゆき)が鬼崎を非難する。
「狂っているさ。でなければ、パートナーがいるのに自らすすんでパラミタ化なんぞせん!」
「そうであろうな。マトモな人間なら復讐が答えに行き着かないのだよ
綺雲 菜織(あやくも・なおり)が更に痛烈に批判した。
「復讐のために人生を投げるか。ばかばかしいの」
「“人間五十年 化天 のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり 一度生を享け、滅せぬもののあるべきか” 人生は短いのだから、殺れるものは殺るべき。そうだろう信長公?」
今度は鬼崎が問う。更に信長が歌を続けて詠む。
「“これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ” と続く。 私の好む敦盛の節じゃが、うぬには復讐の歌か何かに聞こえるか? むなしいじゃのう」
信長は、自らの趣ある敦盛を汚された気分だった。
「何にしたって、俺はあなたを許せない。“強化人間狩り”はあなたのパートナーがやったことでも、それはあなたが自分の為に仕組んだことだ。強化人間を襲わせたのは不安定な精神状態と暴走の可能性をあなたが一番危惧しているからじゃないか」
グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)が【ヴァジュラ】叩き込む。アウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)は主からの怒りと殺意が伝わってくるのがわかった。グラキエスは自身と強化人間の境遇と重ねているために、このような感情をもっているのだろう。アウレウスは無言で《パワーブレス》を主に掛けた。グラキエスが多少暴走気味ではあるが、止はしない。
しかし、剣は《肉体の完成》に阻まれ、へし折られた。《鳳凰の拳》がグラキエスの腹に叩き込まれる。魔鎧がひしゃげ、グラキエスもまた飛んだ。
屋根を壊し落ちた先は民家の二階だった。ゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)はグラキエスの落ちたところに行き、半開きの彼の朦朧とした眼を閉じさせた。「貴公らは無理をするな。暫し眠れ……」と、気絶する寸前の二人に言い聞かせた。どちらも命に別状がない事に安心する。
「さて、ウォーミングアップはここまでだ。一切の容赦はないここからは皆殺しだッ!!」
《神速》で動く鬼崎を足止めしようと真人が《ブリザード》を撃つ。止まらない。速度と破壊力の乗ったストレートが迫る。セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)がパイルバンカー内蔵シールドで、真人への攻撃を防ぐが、真人と一緒に後ろへと飛ぶ。鬼崎の背中を菜織とみゆきが襲う。【マシンピストル】を容赦なく背中に浴びせ、【長巻】切る。が。切り傷は浅く、銃弾は筋肉の表層でその威力を失っていた。二人の頭が両の手に捕まる。二人とも別々の民家の壁に叩き込まれて、室内へ放り込まれる。
「なんだよ! あんなスーパーなグラップラーはどうなってるんだ!」
桜葉 忍(さくらば・しのぶ)の嘆き。あんなのに勝てるのか? と。媛花がそれに答える。
「鬼崎先生は、自分の肉体を《サイコキネシス》で倍の力に強化してますね」
「そんなことができるのか?」
「可能よ。《サイコキネシス》が“使用者の腕力に相当する不可視な力を発揮する”ことだから。私も同じようなことをするけど、元の腕力の高い鬼崎先生だと最悪の組み合わせね」
「ワイらあんなのに狙われとったんか……マジ勘弁や」とブラウもさすがにビビる。
「最悪、あなたを担いで逃げるわいいわね」
「てか、なんでこれだけ強いの、ササッとブラウだけを殺さなかったんですか! こんなに強いなら回りくどい事せずとも瞬殺だろ!」と智宏の意見。「なんやて! もういっぺんいってみー!!」とブラウが猛抗議。
智宏は遠距離から《スナイプ》で応戦するが効果は薄い。鬼崎の有視界に入り、《サイコキネシス》で吹き飛ばされる。
「なにか手があるはずじゃ。あやつは契約者であるのに、自らをパラミタ化した。“パートナーロスト”のペナルティーを受けているはずじゃ!」
パートナーを無くした契約者に訪れる枷。鬼崎のそれが何かわかれば勝機を見い出せるとのこと。
「もしかして、そのせいで、パートナーに“強化人間狩り”をやらせてたんじゃないか?」と思い浮かぶ意見を忍が述べた。
復帰しした透乃の利き手の《チャージブレイク》に忍も《ヒロイックアサルト》を重ね攻撃。《閻魔の掌》で押し返される。透乃は「まだやれる」と強気。
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