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なし

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 そしてひらめく。戦国の智将としてのカン。一種の賭け。
「媛花。おまえ、ブラウを担いで逃げるとか言ったな?」
 信長の確認を不思議がる媛花。なぜそのようなことをと言う顔をする。
「ああ、ブラウを部隊から失うわけにはいきませんので」
「なら逃げるが良い。いいかどんな事をしてでも、“夜になるまで”逃げるのじゃ! おおかた陽が沈むまで後30分じゃろう」
「――、わかりました。そうさせていただきます」
 媛花は信長の意向を読み取り、ブラウを担いだ。ブラウが「何やて! なんでワイが逃げなあかんねん!」とうるさかった。
 媛花は「足止めを頼みます」と言い残して、全力で逃げた。
「ちっ――!」
 鬼崎も媛花がブラウを連れて逃げようとしているのを感づいた。しかしさせない。
「真人! 派手に魔法をぶっぱなせ! ブラウが逃げきるまで、時間を稼ぐ!」
 忍も信長の考えていることがわかった。今は媛花の位置を鬼崎の有視界以外にやることだ。
「任せてください!」
 真人が杖を振るい、《サンダーブラスト》を連射する。ブラウが「電気技でワイ以外の活躍すんは許さん!」と、連れていかれる最中に《サンダークラップ》を放った。更に「我も手を貸す!」とゴルガイスの《サンダーブラスト》。真人とゴルガイス雷撃の束とブラウの雷か重なり、鬼崎の視界を奪った。彼が眼を開けたときには媛花とブラウはすでに街角に消えていた。
 続いて、菜織が復帰し、《ヒプノシス》で眠気を誘う。美幸も同時にだ。いくら肉体を強化していても、眠気という欲求に勝つのは難しいと踏む。当たりだった。
 杏のフラワシと陽子のアンデッドが鬼崎の足を掴む。
「ああ、もう! 私の眼鏡どうしてくれるんですか! 弁償してください!」
「足を使わなくても、私にはまだ利き手があるんだもん!」
 白い世界から戻った早苗の蹴り《則天去私》と透乃の左拳《等活地獄》が交差する。眼鏡のない早苗を見て「あの美人誰だ?」と思う者いた。
 怯む鬼崎に、悠美香に支えられた要の【レーザーガトリング】と智宏の《スナイプ》。弾幕を背に、セルファがパイルバンカーで、距離を開かせた。
 更に生まれた隙を逃さず、信長が宣言した。
「皆逃げるぞ! 恐らくこやつは“日の出ている合間にしかスキルを使えん”!!」
 当たりだ。それが今まで、ブラウを襲えなかった最大の理由。
 教師故に、授業の終わる夕方まで学院にいなければならない。今日のように早上がり出来なければ、空京でブラウを襲うことは出来ない。かつ、ブラウをおびき寄せるための作戦も結構できない。パラミタ化した代償。だから、キュゥタを利用した。アレもまた、昼間は学校で鬼崎と共にいなければならないが、キュゥタは教員ではないので、早めに上がれる。よって、夕方から夜にかけての犯行が可能だった。そして、意外にキュゥタは狡猾だった。自分がパートナーにも行動が疑われない為に、鬼崎が家に帰ってくる時間までにしか犯行を起こしていなかった。だからこその、あの犯行時刻の狭さと現場範囲の狭さだった。
 ここからは、怒涛の“鬼ぃごっこ”。夜まで、ブラウを逃しきれば勝ち。
 無論鬼1に対して、多勢でブラウを庇う。人気のない曲がり角だらけの、住宅街が舞台。
 力では鬼が最強に強くても、逃げること一点では逃走者の方が遙かに上手だった。鬼は《光学迷彩》をみやぶる手段を持っていなかったのだから。

 そして、日が落ちると、鬼崎にボコボコにされた者たちの反撃が開始された。
 信長の予想通り、鬼崎はスキルをしようしてこなかった。それどころか、その身体能力までもを著しく低下させていた。
 夕方とは違い、魔法も剣も超能力も拳も銃弾も、容易にその肉体へのダメージに変わった。
 ほどなくして、鬼崎はお縄となった。