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イコン最終改造計画

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イコン最終改造計画

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第9章 そして、合体へ……

 要の離偉漸屠に次々とパーツが組み込まれていき、その外観は確かに強烈なものとなっていた。高さだけでも、離偉漸屠、ちくわサーベル、琴音ロボが重なり、その上に喪悲漢ブーメランとビームサーベルである。それ以外にも外部スピーカーだのソニックブラスターだの、あるいはシールドが2枚あるだのと、本当にこんなイコンで大丈夫かと聞きたくなるようなカスタマイズが施されていた。
「うんうん、だいぶいい感じに仕上がってきたんじゃない?」
「そうか? 俺には今にも崩れそうなバベルの塔にしか見えないけどな」
 何しろ溶接はおろかボルトとナットによる結合さえ行われていないのだ。あるとすればせいぜいがワイヤーロープ程度。敵の攻撃を受けるどころか、数歩歩いただけで完全に崩壊してしまいそうだ。
 だがそんなことを気にするようなパラ実生ではない。今ここにいる彼らは、大した根拠もなく魔改造の成功を信じていた。特に夢野久など、失敗しそうになったら無理矢理成功させるとでも言い出しそうな勢いだ。
 そんな時、新たなる魔改造の援軍なのか、1体のイコンが会場にやってきた。両手と頭にドリルを装着した【ギガキングドリル】に乗った、神楽月 九十九(かぐらづき・つくも)とパートナーの装着型機晶姫 キングドリル(そうちゃくがたきしょうき・きんぐどりる)である。
「おやおや皆さん、やってますね〜」
 キングドリルを残し、イコンから降り立った九十九は魔改造中の離偉漸屠を見て目を輝かせる。
「えっと、もしかして改造の参加者だったりする?」
「はい。私も参加者です〜」
 念のためと要が確認する。どうやら九十九は、このイコン魔改造に参加するつもりで来たらしい。
「ところで要様、イコンのサイズについてはどの程度までおわかりですか?」
「ん、サイズって、パラ実のイコンがSサイズで小さいってことくらいはわかってるけど?」
「なるほど、でしたらちょっとイコンのサイズからおさらいしてみましょう〜」
「おさらい?」
 一体何を目的にそんなことをするのか。よくわからないまま要は九十九が取り出した小冊子に目をやる。そこには「マニュアル」と書かれていた。
「何それ?」
「イコンの基本情報が書かれたマニュアルですよ〜。はい、ではこのページをご覧ください〜」
 九十九が示したページには、イコンのサイズについて書かれていた。
「見ての通り、イコンのサイズにはSSからLLまでの5段階があります。それぞれ人間代、これはペガサス等の巨大生物も含まれますね。次に8メートル前後、10メートル前後、最大20メートル、そしてそれ以上」
「……あれ、思ったより差が無い?」
「その通り。実は思っているよりは差が無いのが現実です。で、これを元に考えれば、パラ実イコンの8メートルが3つあれば、単純計算8メートル×3台=24メートル。縦に3台あるだけで、事実上LLサイズになるわけです」
「おお〜!」
 確かに単純に考えればそうなる。現時点でも離偉漸屠の8メートルにまたがる形で10メートル前後の琴音ロボが乗っているのだ。仮に琴音ロボの分が5メートルだったとしても、合計13メートルでMサイズまでは十分確保しているのだ――琴音ロボが立っており、しかも喪悲漢ブーメラン+ビームサーベルまで合わせれば20メートルは稼げるだろう。
「というわけで、合体です〜!」
「え、また合体!?」
「……『また』?」
「もうこの時点で3回も『合体』の単語を聞いたんだけど……」
 前の2人――高崎悠司と和泉猛が提案した合体方法「他のイコンを胴体にする」というのは、その胴体役のイコンの調達という点で失敗しているのだ。果たして九十九はどういう合体を考えているのだろうか。
 要から事情を聞きだした彼女は、納得したように頷く。
「ははぁ、なるほど。それは確かに厳しいですね〜」
「でしょ? そんなうまく胴体用のイコンなんて見つかんないよ〜」
 すでに2回も挫折しているのだ。これが3回目になるのはできれば避けたいところだ。
「しかしそうですか〜、要様も合体を考えられていたのですか〜……」
 その九十九の言葉に要が違和感を覚える。
「ねえ九十九ちゃん、今なんて言った?」
「え、要様も合体を?」
「『も』? 今、要『も』って言ったの?」
「ええ、言いましたよ?」
「改造に協力してくれるのにどうして『も』なの?」
「ああ、だって私は知り合いの方々と合体するつもりでいたんですから」
「はい?」
 九十九の目的とは、自分の知り合いであるパラ実のイコン乗り――通称「パラ実威崑四天王」のイコンと合体することだった。
 彼女の計画に含まれていたのは、

・頭――ナガン ウェルロッドの【キングクラウン】
・右手――ゲブー・オブインの【宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢】
・左手――御弾知恵子の【雷弩璃暴流破】
・右足と左足――誰かの出虎斗羅、あるいは輸送用トラック、合計2台
・胴体――神楽月九十九の【ギガキングドリル】

 というものだった。
「ちなみに私のギガキングドリル、変形できるんですよ〜」
「へ、変形? 可変型なの!?」
「あ〜、可変型というのとはちょっと違うんですけどね〜。変形といっても、頭身がちょっと伸びるだけで、別に性能に変化とかは無いんですよ〜」
 その状態で各イコンを揃え、ギガキングドリル自慢のドリルアーム&ヘッドで無理矢理接合するのだそうだ。
 だがここで1つだけ計算違いの出来事があった。キングクラウンとその持ち主であるナガンがこの場にいないのである。
「頭がいないんですよね〜。まったくナガン様ったらどこで油売ってるんでしょうか……」
 頭役がいなければ九十九の合体計画は水泡に帰する。どうやら3回目の挫折が訪れたらしい。
「……いや、ちょっと待って。もしかしたらいけるかもしれない……」
 その言葉が出てきたのは、要の口からだった。
「いける、とは?」
「その頭役ってさ、どうしても、その【キングクラウン】じゃないとダメなの?」
「一応、私の計画ではそうなっていますが……」
「代わりを用意するってことは?」
「は?」
「だから『代わりに他のイコンを使う』のは絶対にNGなの?」
「……まさか!」
 その時点で九十九も気がついたらしい。
 そう、要はキングクラウンの代わりに、現在改造中の自分の離偉漸屠を使ってくれと頼んでいるのだ!
「もしかしたら面白そうなことが起きるんじゃないかって思ってたんだよ〜!」
「そ、それは素晴らしいアイディアですねっ!」
 次の瞬間、要と九十九はがっちりと手を組んだ。
「というわけで……、合体!」