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美緒が空賊!?

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美緒が空賊!?
美緒が空賊!? 美緒が空賊!?

リアクション

「色々乗り込んできそうだが……知り合いはって、あれは確か雅羅だったか」
 空賊の襲来に、辺りを見回したシオン・グラード(しおん・ぐらーど)もまた、雅羅の姿を見つけた。
 駆けていく彼女の後を幾人かの学生たちが駆けて行く。
「……絶対乗り込もうとしてるよな、空賊の船に」
 彼女たちの様子を見て、シオンはぼやく。
「おい! 待てよ!」
 声を掛けるも急いでいる彼女たちの耳に届かなかったのか、足を止める気配はない。
「こっちの声聞こえてないな、これ。こうなったら追いかけて護衛をしよう」
 自分に言い聞かすように頷いて、シオンも駆け出す。
(何人か彼女を追いかけていたけど、全員が味方とは限らない……気は抜けないな)
 そう思いながら、シオンは彼女を追いかけるべく、その姿を探した。

「ああっ、折角の紅茶が……!」
 飛行船の展望台にて、景色を見ながら紅茶を楽しもうとしていたセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)は、急な震動に、手にしたカップごと揺れ、中の紅茶をソーサーや床へと零してしまう。
 雅羅の姿を見かけていたため、この後、彼女へも紅茶を淹れようと思っていたというのに、外を見れば、空賊船が襲い掛かってきていて、それどころではない。
「邪魔ですので落としてしまいましょう」
 ティータイムを邪魔されたとあっては、黙っていられない。
「あーあ……あのアホ共、セシルを怒らせやがった。まあ、ちょっと暴れりゃ落ち着くだろ」
 セシルのパートナー、グラハム・エイブラムス(ぐらはむ・えいぶらむす)がぼやく。
 そうしている間にもセシルは彼を魔鎧――黒いハーフプレートメイルとして纏い、展望台の非常口を開けた。
「お客さん、何を!?」
 慌てたスタッフが彼女を引き止めに来るけれど、彼が辿り着く前に、セシルは空へと身を投げる。
「ちょっ!」
 驚き、開け放たれたままの非常口から落ちないように手すりをしっかり持ち、覗き込んだスタッフの視線の先――空中で、セシルはツバメの名を持つ、空飛ぶ箒シュヴァルベへと跨ると、空賊船へと向かった。

 子牛のロースト、海老とタイのマリネ、南瓜のポタージュ……などなど。
 飛行船内の食堂で、優雅で豪華なランチを武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)がパートナーのヒルデガルド・ブリュンヒルデ(ひるでがるど・ぶりゅんひるで)と共に食べていると、飛行船がぐらりと揺れた。
 何事だと窓から外を見る他の客たちを他所に幸祐が食事を続けていると、食堂の扉が勢い良く開けられて、柄の悪そうな男が数名、入ってくる。
「この船は、俺ら、“黒髭”空賊団が占拠した! 大人しくしろぃ!」
 リーダーらしき男が声を上げると、反射的に他の客たちが悲鳴を上げる。
「……もうこんなところまで来てるの!?」
 そこへ雅羅が、学生たちを引き連れて、食堂へと入ってきた。
 何処かへ向かう途中だったのか、足を止めず、そのまま駆けていく者たちも居る。
「何だ、嬢ちゃん?」
「やあ、雅羅じゃないか……」
 男が食堂を訪れた雅羅たちに気付き、声を上げると、幸祐もそれが彼女であることに気付いて、手を上げた。
「どうかしましたか?」
 ヒルデガルドが雅羅へと訊ねる。
「どうもこうも見てのとおりよ。この飛行船が空賊に襲われたわ」
 告げる雅羅と、彼女に同行していた学生たちが食堂を占拠したという空賊を相手するべく、各々の武器などに手をかける。
 他の客たちを襲おうとしている空賊たちに、雅羅以外の学生たちが向かった。
「ふむ……」
 理由を聞いた幸祐は、手にしていたナイフとフォークを置く。
 応戦するのかと思いきや、別のナイフとフォークを手にして、残る料理を食べ始めた。
「!?」
 呆気に取られる男――空賊たちと雅羅たちを他所に、出された料理、全てを食べ終えた幸祐は、ナプキンで口元を拭う。
 その姿は、まるで襲撃など何もないとき同様、とても優雅だ。
「雅羅、一つだけ言わせて貰おう」
「え、ええ……」
 思わず彼の食事光景を見入ってしまっていた雅羅は、何を言われるのか、と身構える。
「実に美味であった」
「……はい?」
 身構えていた雅羅は、その一言を聞き、眉を寄せた。
「ヒルデガルド。目障りな奴らを排除しろ。雅羅、微力ながら攻撃と戦略を援護させて戴きます」
「敵、空賊を確認。排除します」
 先ほどまでの彼とは打って変わって、ヒルデガルドへと指示を出した幸祐は、雅羅へと声を掛ける。
「……っ! ……お願い、するわ」
 文句も何も言い返せず、口を動かした後、雅羅はそう返して、愛用のバントラインスペシャルを握り直した。
 幸祐は、船内に入ってきただろう空賊を倒すため、指揮を執るためにブリッジへと向かう。
「警告します。貴方では私は倒せません」
 一方のヒルデガルドは、立ち向かってきた空賊たちに、機関銃のように銃弾をばら撒いて、全体へと一度に攻撃した。