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美緒が空賊!?

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美緒が空賊!?
美緒が空賊!? 美緒が空賊!?

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第3章 空賊をやっつけろ!

(たぶん……私はすごく怒ってるんだと思う。これ以上好き勝手はさせないわ、黒髭……!)
 美緒と共に空賊を退治しに出かけた事件より後、“黒髭”のことを追っていた『シャーウッドの森』空賊団の一員であるリネン・エルフト(りねん・えるふと)は、出現の報を聞いた。
「シャンバラに戻ってきたら……面白いことになってるじゃねぇか。ぶっ潰しなら任せろ。いくぜリネン!」
 フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)の声に、パートナーたちと共に、ワイルドペガサスやハヤブサの名を持つ小型飛空艇ヘリファルテに乗り、チャーター便などより先行して、空賊船へと向かう。
「念のため、連絡しておくわね」
 告げて、ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)は自分たちに何かあったときのために後のことを頼むため、フリューネヨサークへと連絡を入れておいた。すぐに返答は返って来ないが、何かあったときに気付いてはもらえるかもしれない。

 近くまで辿り着くと、空賊を相手にするのではなく、“黒髭”の乗っているだろう空賊船そのものに向かっていく。
 近付いてくる彼女らに、砲台の先が向けられた。
「遅い……!」
 飛んで来る砲弾を、ワイルドペガサスを操り避けたリネン。
「残念ですが……邪魔はさせませんわ」
 目くらましの如く、目映い閃光を放つのは、ユーベル・キャリバーン(ゆーべる・きゃりばーん)だ。
「いくぜ、リネン!」
 声を掛けるフェイミィに頷いて、リネンはブレスレットの形状をした加速装置に触れてその機能を起動させ、ハイランダーズ・ブーツを着用した足で踏み出し、甲板に向かって飛び立つ。
「お気をつけて、リネン」
 飛び立つリネンにユーベルは祝福を贈った。
「フェイミィさん! リネンを、よろしく」
 更に、フェイミィへも祝福を贈り、声を掛ける。
 甲板へと向かうリネンたちに、空賊たちが発砲するけれど、30倍速で移動する彼女の姿を捕らえる頃には、既に通り過ぎていて、銃弾は空を舞うだけだ。
「【『シャーウッドの森』空賊団】、見参!」
 甲板へと降り立つと、ヘイリーが声を上げる。
「リネンの敵はオレの敵だ…ぶっ潰させてもらうぜ!」
 楽しそうにフェイミィも告げた。
 向かってくる空賊に、リネンの必殺の拳が襲い掛かる。
 更に、天馬のバルディッシュを構えたフェイミィが大きく、彼らをなぎ払った。
「完全に叩き壊してやんなさい!」
 魔獣たちを走り抜けさせ、全体へと痛みを与えたヘイリーは、自分たちが上位存在であると悟らせる殺気を放ちながら、声を上げた。
「もちろん」
 頷き答え、リネンは次の空賊へと必殺の拳を繰り出した。


 上空から降りてきた鴉たちに、空賊たちが驚く。
 香奈から、白銀に光り輝く2メートルはある大剣型の光条兵器『ブレイブハート』を受け取った忍が仲間たちを守る術を展開し、皆の防御を上げる。
 アルティナは普段抑制している力を解放しながら、聖剣ティルヴィング・レプリカを構えた。
 向かい来る空賊2体に対して、続けざまに振るい、痛みを与える。
「私は、食料を確保してきますね」
 遅れて、正宗が乗り込んでくると、アルティナは空賊たちの間を縫って、食料庫を目指した。
 空賊たちに囲まれながらも背中合わせに立ち回る鴉と忍と和輝。
 ふいに和輝は懐かしい記憶を蘇らせた。
 それは幼い頃に見た、アニメの一場面だ。主人公は、信頼する仲間と共に、背中合わせで多数の敵たちと戦っていた。
 まるで今の自分たちのように――。
 自然と口元に笑みが浮かぶ。
「たまにはこういうのも、悪くないな」
 ぽつ、と呟いて、両の手に構えたマシンピストルの引鉄に力を込める。弾幕を張ることで、空賊の視界を悪くさせた。
「たまにはこう背中をダチに預けて戦うってのも悪くねぇな」
 和輝の呟きに、鴉も頷いて、告げる。
 空賊船の船尾で炎が上がった。小型飛空艇に残ったアニスが、自分たちが脱出した後、追いかけてこないよう、母艦そのものに攻撃を仕掛けているのだ。
「痛っ!」
「……っく」
 鴉や忍を空賊たちが容赦なく斬りつける。
「傷を治すね」
 香奈が傷口を確認し、癒しの魔法を発動させた。
 忍より深い鴉の傷を見た和輝は、纏うスノーの力を借りて、癒していく。

 一方で小型飛空艇に残ったアニスはというと――。
「攻撃〜♪」
 声を弾ませながら、酸の霧を呼び出して、母艦に向かって放つ。
 船尾にある動力部に向かって次々と魔法の力を駆使していると、異変を感じ取った空賊たちが小型艇を駆り、飛び出してきた。
「っとと……和輝たちを回収するまで、捕まるわけにはいかないんだもん!」
 空賊たちからの攻撃を交わしながらアニスは飛び回る。
 その間にも火炎や氷、電流を操って、追いかけてくる小型艇を落とした後は、再び、母艦へと攻撃を仕掛け始めた。

 船内へと向かったアルティナは、見回りの空賊たちの目を避けながら、食料庫を目指していた。
 角を曲がるため、そっと顔を出す。
 空賊の姿はなさそうだと確認してから歩き出すと、通路の先の別の角を曲がってきた空賊に見つかってしまった。
「待てっ!」
「待てと言われて待つ人は居ません」
 駆けて来る空賊に対し、反対に向かいながら、アルティナは答える。
 先の角を曲がると、残念なことに行き止まりであった。
「追いついたぞ……」
 息を切らしつつも短剣を構えた空賊が斬りかかる。
 その瞬間を狙って、アルティナは聖剣ティルヴィング・レプリカを繰り出し、斬り返した。
 何度も打ち合う音が響く。けれど、元の大きさも違うのもあって、空賊の短剣が弾かれ、遠くへと落ちた。
 そこへアルティナが踏み込み、空賊を斬る。
 倒れた空賊を越えて、彼女は再び、食料庫を目指して、通路を駆けた。


 前回の騒動で、逃げ延びた空賊たちに捕らわれていたアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は、メイドとして彼らに使われていた。
「今日もいい身体してんなぁ」
 卑しい笑いを浮かべながら、彼女の奉仕の合間に、胸や尻などを撫で、揉み上げてくる空賊たちの行いに耐えながら、脱出のチャンスが来ることを信じ、彼女は健気に彼らに尽くす日々を過ごす。
「もう……許してください……」
 小さく呟くように救いを求めるも、彼女の言葉は空賊たちに届かない。
 けれど、そんな日々に訪れたのが、此度のチャンスだ。
 外の騒ぎに、いつもであれば彼女を扱き使ってくる空賊たちも手伝うよう、声がかかったのだ。
(この混乱に乗じて、何とか……)
 そう考えたアリアだったが、空賊たちにも抜かりはない。
 彼女の全身に鎖を巻きつけ、吊るし上げて身体の自由を奪ってから、部屋を出て行く。
 ここ数週間の間、扱き使われて疲弊している彼女に、拘束を解くことなど出来ない。
「あぁ……」
 船そのものも攻撃されているのか、轟音が響くと船が揺れ、吊るされた場所から鎖が全身を締め上げ、彼女に痛みを与えた。

 甲板の上空へと辿り着いたセシルは、空飛ぶ魔法↑↑で飛行状態になりながら、そこに出ている空賊に向かって、両の手に構えた魔銃から銃弾を放つ。
 突然、降って来た銃弾に撃ち抜かれたことにより、セシルの接近に気付いた空賊は、慌てて、周囲の仲間へと知らせた。
 空を飛んでいるセシルに対し、弓や銃などを手にした空賊たちが番える矢の先や銃口を彼女へと向けてくる。
 次々と放たれ、飛んでくる矢や銃弾をセシルは舞踏のような動きで、回避した。
「敵数が多いですね。グラハムさん、力を借りますわ」
 空賊たちの数を確認したセシルは纏う鎧――グラハムに対して、声を掛け、彼の持つ力を引き出した。
 鎧の形状がビキニアーマーのようになり、防御を捨てる代わりに速さを得ると、空賊たちの間に向かって急降下し、旋回しながら乱射する。
「うわっ!?」「おおっ!?」
 空賊たちはその動きに驚き、回避するより前に、手足を撃ち抜かれて、痛みを負う。

 魅華星も影で出来た翼をその背に生やし、飛行しながら空賊たちと向かい合う。
「これでも喰らいなさい、銀雪嵐!」
 声を上げる彼女が指差す先、空賊たちを包み込んで辺りの空気が急激に冷えたかと思うと、氷の嵐が彼らを襲った。
「っく!」「冷てぇっ!」
 氷嵐に包まれ、痛みに声を上げる空賊たちに向かって、魅華星は翼をはためかせながら近づくと、手にした妖刀村雨丸から闇黒を放ち、更なる痛みを与える。
「観念なさい!」
 刃の先を突きつけて、降伏を試みるけれど、空賊たちは尚も己の武器を構えて、向かってくる。

 黒い翼を羽ばたかせ、己に害意を持つ者を避けて見張りの空賊の死角をついて、空賊船へと降り立ったグラキエスは、エルデネストを召喚した。首筋をなめるような炎の形をした契約印を光らせながら、彼が何処からともなく現れる。
 一方、飛行船で待機していたベルテハイトは、エルデネストが召喚されるという連絡を受け、スズメの名を持つ、空飛ぶ箒スパロウに乗り、空賊船へと向かった。
 船内から出てきた幾人かの空賊をエルデネストとグラキエスの2人が相手していると、遅れてベルテハイトが合流してくる。
「ベルテハイト、殺気を振り撒かないで下さい」
「そのようなもの振り撒いてなど……!」
 エルデネストの言葉に、ベルテハイトが返そうとしたところで、奥から空賊たちが束となって出てきた。
「大人しくしていれば、余計な怪我をせずに済んだものを……!」
「ほら……」
 殺気につられてやって来たのだと言わんばかりのエルデネストの表情に、ベルテハイトは顔をしかめる。けれど、今はケンカしている場合でないと、古いリュートを構えた。
 エルデネストもグラキエスより前に出た。
 空賊が手にした銃の引鉄を引く。エルデネストはそれをブルーラインシールドで止め、反対の手に構えた最古の銃の引鉄を引いた。熱の塊が撃ち出され、空賊へと襲い掛かる。
 ベルテハイトがリュートをかき鳴らす。音色は衝撃波となり、空賊たち全体に痛みを与えた。
 グラキエスは構えた怯懦のカーマインの引鉄を引くと見せかけて、脚に着用したファイアヒールへと念じた。ブーツに取り付けられた銃から弾が発せられ、空賊を襲う。