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続・悪意の仮面

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続・悪意の仮面

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 そして、少し時間を遡り。
 コアをアイリスたちに任せ、託はドラゴランダーに立ち向かう。
「アンギャアアアア!!」
 ドラゴランダーが足を上げる。
 そのまま踏みつけるように下ろした足を、託は走って避けた。
「これは……仮面を取るには苦戦しそうだねぇ。誰か引き付けないと」
 そこへ、陽の小型飛空挺オイレが登場し、ドラゴランダーの周りを旋回し始めた。
「これで、少しは気が引ければいいんだけど。フィリスが上手くやってくれれば……」
 地上にいたフィリスはブラックコートで闇に紛れながら、ドラゴランダーを見上げた。
「よし、いっちょぶっ放してやる!」
 そして、ドラゴランダーの仮面を巡る戦いが開始する。

 陽はドラゴランダーから付かず離れずの距離で飛行する。
 上下、左右、斜めとジグザグに動き回り、たまに威嚇するようにとドラゴランダーの自分に対する注意を絶やさないように工夫する。
「これ……結構酔いそうだな――っと、っわあ!?」
 しかし、鬱陶しさに痺れを切らしたのか、ドラゴランダーの巨大な爪が陽の乗る小型飛空挺に振り下ろされる。
 陽は飛空挺の走行スピードを上げ、その手から逃れる。
「アギャアアアアア!!」
 ドラゴランダーが苛立ちの咆哮をあげた。
「あ、これは本当に早くしないと……フィリス!」
 陽の呼びかける声が聞こえたのか、フィリスは影となっていたところから飛び出し、黒い翼で飛翔した。
「アルティマ・トゥーレ!」
 フィリスは仮面に向けて攻撃する。
 それは苛立ちで振った尻尾に当たり、その尻尾がフィリスを掠った。
「いってぇ! この!」
 フィリスはドラゴランダー目掛けて機関銃を撃った。
 しかし、最高値にまで防御力を高めたドラゴランダーにはほとんど効いていないも同然だった。
「……嘘だよね」
 飛空挺内で、陽はさすがに驚きを見せた。
「どうやら、これは直接仮面を壊しに行った方が良さそうだねぇ」
 しばらく様子見していた託は、氷雪比翼で飛び上がる。
 そして、光条兵器である蒼いチャクラム「流星・光」を取り出した。
「いくよ!」
 託はチャクラムを仮面目掛けて投げる。
 だが、それは軌道が外れてしまった。
「もう一回……!」
 今度は接近戦にしようと託はドラゴランダーに近付く。
「アンギャアアアアア!!」
 ドラゴランダーが咆哮と共に手を振り上げる。
 託は攻撃をまともに食らってしまい、地面に叩きつけられた。

 一方、ドラゴランダーたちから少し離れた場所にて。
 ハデスはビシリとドラゴランダーたちに指を突きつける。
「フハハハ! 現れたな、蒼空戦士ハーティオン! 貴様らの悪事は、我ら悪の秘密結社オリュンポスが阻止してみせる…って、やっぱりなんかおかしい気がするな……。まあいいか」
「兄さん、聞いてないみたいですよ。というより、聞こえてないようですが……」
 コアは戦闘中、ドラゴランダーは小型飛空挺や託たちの相手に夢中になり、ハデスの存在に気が付いていないようだった。
「な、なに……。まあいい。それなら今の内に仮面を破壊するまでだ! 行け! 我が部下、改造人間サクヤ! 人造人間ヘスティア! 我らの力を示すのだ!」
「兄さん! だからいい加減私のことを改造人間というのは……いえ、いいです」
 咲耶はハデスの言い様に、諦め混じりに頷いた。
「ドラちゃんに接近されたら、ひとたまりもありません。 ヘスティアちゃん、遠距離で一気に決めますよっ!」
「了解です!」
 早速、咲耶が雷術をドラゴランダーに向ける。
「や、やったか?」
「駄目ですね。防御力が無駄にすごいみたいで、私ひとりの術ではダメージがないようです……って、兄さん。こういう時、『やったか』は禁句です!」
 ハデスの頼りなさに、咲耶は突っ込みを入れてしまう。
「そ、そうか。なら、ヘスティア、咲耶と同時に撃てるか?」
「はい!」
 ヘスティアはハデスの指示に頷いた。 
「じゃあ、ヘスティアちゃん。行くわよ」
 視線の先には、いまだ陽たちに気を取られている様子のドラゴランダー。
「ドラゴランダーさん、すみません。 本気で行かせていただきます。 追加武装ユニット、リミッター全解除! ……はわわっ、ロックオン不能ですっ?!」
 気付いたときにはもう遅く、ヘスティアの機晶キャノンは目標を定められないまま発射されてしまう。
「あ……!」
 だが、打ち込まれた先は偶然か、ドラゴランダーの仮面がある場所で。

 誰にも予想しきれないタイミングで、ドラゴランダーの仮面は壊されたのだった。



「あ、私は……」
 仮面が外れて、我に返ったコアに、行人が真っ先に抱きついた。
「ハーティオン! 良かった! 元のハーティオンに戻ってくれたんだな」
「あ、えっと……私は何をしていたんだ?」
 どうやら、仮面事件には珍しく、ハーティオンは仮面を被っていた時の記憶がないようだった。
「あの……ハーティオン。えっと――」
 そんなハーティオンに仮面を被せた負い目があったのか、ラブは正直に顛末を話す。
 話を聞き終えたハーティオンは神妙な表情で黙り込んでしまった。
「そうか、私はヒーローとして、失格なことをしてしまったんだな……」
「ガォオオン」
(それを言うなら、我も同じだ。しかも我は暴れたいだけ暴れて、怪我人もその分多いんだ)
 ドラゴランダーは後悔しているようだった。
「悪意の仮面、か。それを付けて私が人を傷つけたということは、そのような悪意が私の中にもあったということ。やっぱり私は……」
「な、何を言うんだよ! ハーティオンは立派なヒーローだよ!」
 コアの言おうとしたことを感じ取り、行人は言葉を遮った。
「それに、怪我した人たちだって大した事なかったから大丈夫だぜ! それに、それに……ハーティオンは俺の呼びかけに応えてくれたし!」
 必死に言い募る行人を見て、コアはふ、と笑みを零した。
「ありがとう。だが、私は今回のことで自分が許せないんだ」
「あ……」
 行人の表情が固まる。
「だけど、これからは行人が誇れるようなヒーローになれるよう、頑張りたいと思う」