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続・悪意の仮面

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続・悪意の仮面

リアクション

 女性に無理矢理ビキニを着せる事件を起こすセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)
 彼女のパートナー、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)はそれを止めようと、同じくセレンフィリティの仮面を割ろうとする輝石 ライス(きせき・らいす)とそのパートナー、ミリシャ・スパロウズ(みりしゃ・すぱろうず)に協力していた。
「この辺にも爆弾が仕掛けられていそうね。……やっぱり、あそこにあった。回り道をしましょう」
「でもさっきから回り道ばっかりだな。そろそろ突破しないか? これじゃあいつまでも近付けないぜ」
 ライスは面倒になってきたのか、そんな意見を出す。
「一度爆発させちまおうぜ。ミリシャ、お前の光条兵器でもぶっ放してみろよ」
「あなたはいつもなぜそのようにずぼらなのだ。まあいい、今回ばかりは私も同意見だ」
 呆れつつも、ミリシャはやれやれと首を振る。
 そして、デリンジャーを模した小型銃、”クリムゾン”を爆弾と思しきものに向け、撃ち込む。
 爆発したものには殺傷力がなさそうな威力ではあったが、十分怪我をしそうなものであった。
「まあ、どうせそのまま避け続けても遠回りになりそうなものよね。早く被害が広がらない内に行くことが優先ね」
 セレアナも方針を変えることに決め、セレンフィリティの元に急ぐのであった。



「この辺を歩けば、セレンフィリティさんも出て来そうですわね」
 冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は夜のヒラニプラの裏路地で、囮として徘徊していた。
 無防備のようではあるが、実際にはいくつかの武器を非物質化して携帯し、パートナーであるエンデ・フォルモント(えんで・ふぉるもんと)も狂血の黒影爪で小夜子の影と一体化し、潜んでいる。
『小夜子様、何か足音が聞こえます』
 エンデはテレパシーで小夜子に注意を促す。
『そう。じゃあ、後は作戦の通りにやりますわよ』
 小夜子は足を止め、耳を澄ます。
 再び歩き出したところで、すぐ後ろから鋏の刃が合わさる音が聞こえた。
「きゃあっ!」
 もちろん、無害を装った演技であるものの、実際にも恥ずかしい小夜子の悲鳴はリアルなもの。
「ほら、こんな邪魔な下着もいらないわ!」
 セレンフィリティは疑うことなく、小夜子の服は全て切り刻まれてしまった。
「ひ、酷いですわ。なぜ私がこんな格好を……」
 涙目で見上げる小夜子に、セレンフィリティは笑みを浮かべてビキニを取り出す。
「あら、大丈夫よ。あなたに似合うビキニがあるもの。裸よりマシだと思うなら、これを着ることだわ」
「っ!」
 セレンフィリティの取り出したビキニに、小夜子はひくりと喉を引き攣らせる。
 しかし、確かにこの格好のままではいられないと、急いでそれを身に付けた。
(このビキニ……噂通りにひどい)
 作戦だったとはいえ、小夜子は心の中で後悔した。
「さて、後はその羞恥心が問題ね。それを取り払うために――」
『エンデ、今ですわ』
『了解です!』
 セレンフィリティが完全に油断した、その時。
 小夜子の合図でエンデが飛び出し、セレンフィリティにチェインマイトで攻撃を先制した。
「な……っ」
 驚きつつも、後方に飛び退いて攻撃を凌ぐセレンフィリティ。
「今ですわ……!」
 小夜子は物質化したスタンガンをセレンフィリティに向ける。
 しかし、セレンフィリティが持つマシンピストルに威嚇発砲され、あえなく距離を取った。
「ここは、逃げるために撃たせてもらうわ」
 セレンフィリティは二丁のマシンピストルを、それぞれ小夜子とエンデに向けた。
「セレンフィリティ、いい加減にするのよ」
 そこへ、セレアナの鋭い静止の声が響いた。
「そうそう、好き勝手するのもそれまでだぜ。俺が面倒になるじゃねーか」
 ライスも光条兵器の銃を構えて登場する。
「私のこれに免じて、その銃を降ろしてくれないか?」
 ビキニ姿になったミリシャは、若干恥じらいを残しつつ、セレンフィリティの前へと出た。
「え……っ」
 ミリシャの姿に目を向けた時、セレンフィリティの動きが止まった。
「もらいましたわ!」
 隙が出来たセレンフィリティを狙って、セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)が飛び出す。
 セシルが仮面に手を伸ばそうとするが、我に返ったセレンフィリティは素早く距離をとった。
「あら、あなたもビキニが似合いそうね。私が着替えさせてあげるわ」
 セレンフィリティの攻撃の矛先がセシルに向かう。
「その程度じゃビビリませんわ!」
 服を掴まれ、鋏を入れられてしまうが、セシルは臆することなく彼女を殴った。
「っ、大人しく着てくれないならこれで動きを止めさせてあげるわ」
 あまりに思う通りに行かなさ過ぎて、セレンフィリティはとうとう強硬手段に出る。
「あら、そんな豆鉄砲に頼らなくちゃ、私を止められないの? 私ならこの拳ひとつであなたを止められますわよ」
 セシルは真っ直ぐ懐に飛び込み、殴りかかった。
「いきなさい、フラワシ」
 セレンフィイティが倒れた所に、小夜子は粘体のフラワシに命じ、彼女の動きを止めた。
「んじゃ、仮面は俺がもらうぜ」
 仮面を狙ってエンデが攻撃しようとしたのが目に付き、ライスはそれに負けまいと銃で仮面を撃つ。
 仮面は呆気なく粉々に割れた。

「セレンフィリティ、今日どれだけ人に迷惑をかけたと思っているの。自分のしたことを反省しなさい」
「それはそうだけど……でも」
「いくら仮面の所為だとしても、私がそれで許すとでも思っているの?」
「う……ごめんなさい」
 セレアナはセレンフィリティに長々とした説教を始めた。
 延々と続きそうな剣幕のそれに、セレンフィリティはさすがに反応の態度を見せる。
「あ、そうですわ。セレンフィリティさん」
 思い立ったようにセシルがセレンフィリティに声をかける。
「なに……って、きゃあ!」
 セシルはセレンフィリティから無理矢理上着を剥ぎ取った。
「私、この格好のままじゃ帰れませんの。ですからこの上着は頂いていきますわね」
 そしてそのまま去っていくセシル。
 さすがにセレンフィリティは何も返す言葉がなかった。

「小夜子様、今日はお疲れ様です」
 エンデはリュックからマントを取り出し、小夜子に纏わせた。
「ありがとう。恥ずかしかったけれど、最終的に解決出来てよかったですわ。でも、演技はもう少し頑張れそうでしたわね……」
「いえ、十分でしたよ。セレンフィリティさんも上手く囮にかかってくれたではありませんか」
「ふふ……それなら良いんだけれど」
 そうして、二人はそんな話をしながら帰路を辿っていく。

「なあ、俺今日見てて思ったんだけど」
「何だ?」
 ライスの言葉にミリシャが問い返す。
「女ってこえーな。それがよく分かったぜ」
「まあ、そういうものだな」
 返す言葉はなく、ミリシャは相槌だけを打つ。
「それと、ほら。これお前の服じゃねーのか? 早く着替えねえと風邪引くぞ」
 ライスはミリシャに服を渡し、先に帰っていった。