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学園祭に火をつけろ!

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学園祭に火をつけろ!
学園祭に火をつけろ! 学園祭に火をつけろ!

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「わかった。それにしても聖夜、すっかり様になってるね。何だか意外だけど」
 注文を受けてコーヒーと紅茶を入れる神崎 優(かんざき・ゆう)は、聖夜の働きぶりを見て何処か嬉しそうに言った。
「何だか楽しくてよ、結構やり甲斐あるんだぜ」
「それは良かった」
 と、コーヒーをカップに注ぎながら、少し残念そうな顔でティセラを見る優。
「紅茶とコーヒー……ティセラさんにご馳走したかったんだけど………このコーヒーと紅茶があるのは誤算だったかな、また今度、またの機会に――」
決して誰に聞かれるでもないその言葉。呟き、苦笑しながら聖夜に頼まれた注文の品物を揃え、彼へと渡す。
「頼んだよ、聖夜」
「おう、サンキューな」
 それを受け取った聖夜は再び客席へと向かっていく。と、今度はそれと入れ替わるようにして陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)が走って入ってきた。
「優! 紅茶とヨーグルトが注文されました! お願いします」
「あぁ、わかった。紅茶はいくつなの?」
「えっと、三つです! ヨーグルトも三つです!」
「わかった、だってさ。零」
 聖夜とは反対に、随分と焦っている刹那の様子に笑いながら、彼は後ろでデザートであるヨーグルトの数を数えていた神崎 零(かんざき・れい)へと注文を伝える。
「えぇ、今準備しちゃうから待ってて」
 そう言うと、零は手際よく出来ているヨーグルトを皿に盛り付けて行く。作り置き、とは言え、ヨーグルトは全く盛り付けや装飾がされていない質素なものである。故に注文が入る都度、零やジーナが盛り付けをして客に提供している。このときはジーナがヨーグルトの作り置きを調理場で作っているので、れいが担当している。
「もう少し簡素な物かと思ったけれど、しっかり作り込んであるのねぇ。ジーナたちのお陰だわ」
 こちらは随分と余裕があるらしく、涼しげな表情で次々に注文されたヨーグルトを盛り付ける。
「はい、刹那。出来たからこれよろしくね」
「飲み物も出せるよ。一人で持っていける?」
「大丈夫です、ありがとうございますー!」
 そう言うと、持っていた盆に今二人に出されたヨーグルトと紅茶をそれぞれ三個ずつ乗せて客席へと向かっていった。
「お待たせししましたー、ご注文のヨーグルトと紅茶でございます」
「あ、来た来た」
「なんか結構いろんな人が、此処のものが美味しいって言ってたし、楽しみー」
「わぁー、良い匂いぃ」
 刹那が客に前に順々に紅茶とヨーグルトを並べて行くと、客席に座る女性三人が盛り上がっていた。
「(私も食べたいですけどねぇ、まだいただいてませんし………およよ)ごゆっくりどうぞ」
 顔で笑って心で泣いて。 刹那は改めてその言葉の恐ろしさを実感しながら、心無し肩を落として調理場へと戻って行った。
 一方、調理場ではヨーグルトやそれを乗せる為の食器を零と、それを手伝う優が黙々と支度していた。と、調理場の方から漂ってくる香りに、思わず後ろへ振り返る。
「あら、この匂いは………?」
「良い匂いだね」
 調理場から出てきたのは、大きな皿に乗った大量のクッキー。少し恥ずかしそうにしながら、アンネ・アンネ 三号(あんねあんね・さんごう)が二人に言う。
「これ、作ったんだよね。今調理場の皆に食べてもらってるんだけど……外の皆にも食べてもらいたいな、と思って。もし良かったらメニューに並べようかなって思ったんだ」
「まぁ! それは名案ね。優いただきましょうよ」
「そうだね、貰おうか。あ、レキとカムイもこっちに来て一緒に食べようよ」
「あ、美味しそうですね、いただいても良いんですか?」
「わーい、クッキーだぁ」
 優の言葉に反応したレキとカムイがやって来て、四人でクッキーを頬張った。
「うん、美味しい!」
「ですね」
「どうだろう、零」
「えぇ、美味しいわ。でも、材料があるならミントを混ぜたり紅茶を混ぜるともう少し面白い味になりそう………」
「なるほど! ちょっと作ってみるよ! ありがとう」
 零の助言を聞いたアンネは、元気よく調理場へと戻っていく。
 客室では、紅茶やコーヒーを楽しんでいる客の元へ占卜大全 風水から珈琲占いまで(せんぼくたいぜん・ふうすいからこーひーうらないまで)が行き、声をかける。
「どうですか、お姉さん方。此処の紅茶とコーヒーは」
「美味しいです」
「ねぇ、他のお店より味もいいし、店員さんも、ねぇ」
「良かった。ならこんなのはどうだい? の見終わったカップの底を見てごらんよ」
 彼の言葉に思わずカップを覗き込む三人の客。
「残ったコーヒーがカップのそこで何かしらの形をなしているだろう? 何に見える?」
「ほんとだー………鳥? 鳥に見えるかな」
「ほう、君は今、想い人がいるのかな?」
「すごーい、何でわかるの!?」
「それだけじゃないぜ? その想い人は年下だ。彼は忙しくて声を掛けられずにいる、違うか?」
「…………………」
 客の一人が頷いた。
「だけど平気だ。恐らくは近いうち――そうだな、だいたい一週間後、ってとこか。向こうの方から飯の誘いがくる、とみたね」
「本当にっ!?」
「あぁ、俺の占いは結構当たるもんさ、まぁ、ゆっくりしていってよ。じゃあね」
 そう言うと、彼は次のテーブルに向かっていった。

 店の前ではウォウルが、途中で出会ったセレンフィリティとセレアナ、ミルディア、真奈を連れて戻ってきていた。
「ご飯、食べれないのかな…………人が」
「まぁ、暫く待っていても」
「お腹空いたよぅ!!」
 ミルディアが駄々を捏ねてみたりしている。が、ウォウルは気にせず中へと入っていく。
「相変わらず、空気は読まないわね」
「いや、自分の出してる店だから良いんじゃないのかしら?」
 暫くウォウルがやって来るのを待っていた四人だが、すぐさま彼に店の中へと案内される。
「ねぇ、ウォウルさん。あらしたち順番待ちしなくていいの………?」
 おそるおそる訪ねるミルディアに、ウォウルはあっけらかんと返事を返した。
「どうやら占い待ちをしている人の様ですよ。あの列は」
 空いている席へと通された四人は、ウォウルからメニューを受け取った。
「少々忙しない所ですが、ごゆっくりと」
「はーい」
「ありがとうございます」
「んじゃ遠慮なくそうさせて貰うわ」
「いや、あんた少しは遠慮なさいよ」
 セレンフィリティにツッコミを入れたセレアナと、そのやり取りをみて笑うミルディアと真奈は、メニューに目を落とした。