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太古の昔に埋没した魔列車…御神楽環菜&アゾート 後編

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太古の昔に埋没した魔列車…御神楽環菜&アゾート 後編
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「ヴァイシャリーの駅を自分の手で作ってやるぞーっ、ていう意気込みある者たちはいないんかー!?契約者がないからって、気にすることはないぞ!パラミタの地にいるヤツなら誰でも大歓迎や!!」
「うん、見向きもされないね」
 大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)が街角で演説をしている傍ら、フランツ・シューベルト(ふらんつ・しゅーべると)は往来を眺めながら言う。
「くそぅ、こうなったら…!おーい、そこの連中!!ただなーんとなく生きてるだけだと、後々めちゃくちゃ後悔するんやぞっ。自分の名が残るような、大きなことをやりたかったー!って、断末魔の声を上げたってもう手遅れなんや。はい、お終い〜ちゃんちゃんってつまらん人生で終わってしまうんや」
「すごーくシカトされているよ?」
 重労働は疲れるし、知らない人の中にポンッて飛び込む勇気も、あまりないんじゃ?、と彼に視線を移す。
「それどころが、笑われたり睨まれたりしてる気がするし…」
 通りすがりにクスクスと失笑する者もいれば、うざったそうに2人を睨む者もいる。
「おっとそこの兄ちゃん、建設に興味あったりせんか?見るからに体力ありそうやし、たまには汗まみれになって働くのも健康にええかもしれんしな」
「建設…?長期間重労働とかマジありえないし」
「ちょ、ちょっと待たんかい!そうはいっても、あのヴァイシャリーやで!?その事業にかかわった者として、自分の名が残るかもしれないんやぞ」
 立ち去ろうとする彼の腕を掴んだ泰輔は、逃がすものかと必死に引きとめようとする。
「ここで稼いでおかないと、後々後悔するのは自分やぞ?それに今の職場に飽きて、あの時建設に関わっていたらそういう仕事にすぐ就けたかも〜て思ったりもな!あぁっ、ちょ…待てって!いいか…よーく聞くんや」
 手を振りほどかれそうになりながらも諦めずに、仲間に引き込もうとする。
「ただのニートになったら、彼女とかにもポイッて捨てられるっていう危機感はないんか!?」
「はぁ〜…そんなにやりがいがあるなら、自分がやったらどうだ?」
 と、言い放った彼は泰輔の手を振り解き、去ってしまった。
「たくさん稼いで楽したいと思わないんかぁああ!?そこの兄ちゃんたちも、ぼやぼやしていると人生のマケ…イテッ!?」
 イラついた人々の空き缶が、パカーンッと泰輔の頭部にクリーンヒットした。
「うぜーぞ、現場に帰れーっ!」
「何でうちらが重労働しなきゃいけないんだ!」
「アイタタッ、こらっ。バナナの皮を投げるなっ。ぶはっ!?」
 ベチッと顔面にババナの皮が直撃する。
「―…石じゃないだけマシだと思うけど」
 フランツの方はというと、巻き込まれないように…というか、仲間と思われたら何されるかわかったもんじゃないから、彼から離れて“僕は無関係だよ”っという態度を取る。
「あぁっ、裏切り者ーっ」
「人聞きの悪いこと言わないでよ。だって、犠牲になるのは少人数のほうがいいじゃない?僕しーらないっと♪」
 傍観を決め込んだ彼は、若者たちにキレられている泰輔を見捨てるように、視線逸らした。
 放置された彼には……。
 少し潰れた空き缶や食べかけがくっついたバナナの皮…、怒りのあまり握り潰した空き缶や丸められたバナナの皮の攻撃をくらってしまう。
「ちょっとフランツ…。助けてっ。ぎゃぁああ、ヘルプミィイイッ」 
 断末魔を叫び大泣きするものの、それでもパートナーは手を差し伸べようとしない。
 しかも結局、演説や説得に応じてもらえず、立ち去られてしまったが…。
「なぁ、頼むから…現場に来て…くれ、ぐふっ」
「(とりあえず行くだけ行ってやるか…)」
 道路に突っ伏した彼を哀れに思った数人の人々が、仕方なく手をかしてやるこにした。
 だが、ちゃんと協力してくれるかは……謎だ。
「はぁ〜、やれやれ。ここで寝られても困るし、運んであげるか」
 倒れたパートナーに肩を貸してやり、現場に運んでやる。





「ずっと運営していくなら、やっぱり人員を募集しなきゃいけないと思うの」
 茅野 菫(ちの・すみれ)は列車の運行に必要な運転手、整備士などを確保しようと、エリザベートたちに協力を頼む。
「5000年前のことですよねぇ」
「えぇ、今も存在するか分かりませんわ」
「まぁ、探すだけ探してみるわ」
 エリザベートやラズィーヤ、環菜は探すだけ探してみようと協力してあげる。
 おそらく1回走らせて終わり、というわけではないだろう。
 鉄道を運行させていた者の子孫が適任だろうと、所在を探してもらう。
「こんなの滅多にないチャンスよ!興味があったら、1度面接に来ない?」
 彼女のほうもただ待っているのではなく、鉄道会社が出来たとしたら、その役職につきたい人などを集めようと、街で求人表を配る。
 しかし、日が沈んでも…月が昇り始めようとも、1人も呼びかけに応じない。
「今日はもう無理そうね……」
 しゅんと項垂れてヴァイシャリーの別邸へ戻った。
「あの、菫さん。ちょっといいかしら?」
「何?ラズィーヤさん」
 後ろから声をかけられ、振り返ろうとする。
 もしかしたら列車を運行させていた子孫が見つかったのかと、期待に満ちていたが…。
 だが、その望は彼女の表情を見た瞬間、なくなってしまった。
 ラズィーヤは申し訳なさそうな顔をして立っている。
「ごめんなさいね、手はつくしたんですけど。どうやら魔列車に関係していた子孫はいないみたいですの。エリザベートさんや環菜さんも同じく、そのような方々は発見出来なかったそうですわ」
「こっちもまったく人手が集まらなかったのよね…」
 すでに血縁が絶えてしまっていることを伝えられ、菫は口元に手をやり困り果ててしまう。
「今回の計画に参加していただいた中の人では、いけませんの?」
「ちゃんと続けてくれる人なら問題ないわ。でも、途中で職務を放り投げられたらって思うと不安なのよね」
「運転する方でしたら…環菜さんの旦那さんに頼んだらいいとも思いますわ」
「そうね…一応、声をかけてみるわ」
 環菜命の彼ならひとまず任せられるか、と思い声をかけてみることにした。
「長距離運転になるでしょうから、募集は引き続き行うわね」
「はい、お願いしますわね」
「あっ、それと鉄道会社を作ろうと思っているんだけど…」
「申し訳ありませんが、少し待ってもらえます?判断するまでの時間もいりますから」
「分かったわ」
「後、菫にはいろいろとお仕事を頼むかもしれませんから。その時はよろしくお願いしますわね」
「えぇ、私で出来ることなら任せて!」
 大抵のことなら何でも引き受けるわよ、とラズィーヤに言う。