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なし

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もっと知りたい、百合園

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もっと知りたい、百合園

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●今回はほのぼのカオスです・4

 べたべたする、と言って身を捩るローラの服を手早く脱がせると、シャワーを強めに出してローザマリアは彼女を壁に押しつけた。
 無論ローザも一糸まとわぬ姿だ。
 さすが百合園のシャワー室、大理石づくりの立派なものがあり、ミストサウナまでついている。もちろん個別になっているのだだが、二人は脱衣ももどかしく一緒の個室に入ったのだった。
 頭上から滝のようにシャワーが注ぎ、ローザの黄金の髪と、ローラの黒い髪が濡れていった。
「ローザ、そんなにくっつくとヨーグルト、付く」
 ローラはそういって指摘するのだが、ローザは気にしない。
 ふくよかなローラの胸、それから腰のあたりへと視線を落としていく。
 ローラは羨ましくなるくらいスタイルがいい。大きい乳房は上を向いて張りがあり、腰のくびれも芸術的なカーブを描いている。近くで見ても、そのカフェオレ色の肌はくすみひとつなかった。
「すぐに綺麗になるわ……きゃっ!」
 さすがのローザマリアもこれには驚いたらしく、普段は滅多にださない高い声を出した。
「ついてた。ヨーグルト」
 と言ってローラが舌を、ローザの首筋に這わせたからである。
「もう……急にやめてよね……私、首は弱いの……じゃなくて」
 空咳してローザマリアは、平常の口調に戻った。
「ヨーグルトは口実、あなたのこと、調べたかっただけ」
 ローザの右手に、音もなく無光剣が現れた。
 その切っ先で、そっとローラの下腹部に触れる。
「この辺りかしら……」
「あはは、くすぐったい、やめて」
 言葉を無視して、今度は左指で触診していく。同時に屈み込んで、ローザのヘソのあたりに自分の顔を持っていった。
「怖がらなくていいのよ? 私、初めてじゃないから」
「ローザ、それ、なんの話?」
 ローザはこたえず、なおも左指、および剣の先端でクランジΡの身体を調べた。
「焦らしてるみたいだけど気にしないで……すぐに具合が善くなるから。ただ、ちょっとだけ痛いわよ?」
 だが、やがて濡れた前髪を払い、ローザマリアは要領を得ぬ顔を向けた。
「あなたもしかしてないの……?」
「ある。……ナンの話か?」
「いえ、自爆装置よ」
「ああ、それなら」
 蒼空学園の医師が摘出した、とローラは背中を見せた。小さな縫合痕が残っていた。
 考えてみれば、なされていて当然の処置だ。ローザは彼女の縫合痕を人工皮膚で隠すと、
「そう……できればあなたの自爆装置を摘出し、その部品の一部を持ち帰って調べたかったのだけどね。うちの『茨姫』に適合するかどうか知りたくて」
「いばらひめ?」
 カイサ・マルケッタ・フェルトンヘイム(かいさまるけった・ふぇるとんへいむ)のことを言うべきかどうか、ローザは少し考えたが、ここは伏せておくことにした。
「ごめんなさい。気にしないで」
 タオルでローラの身体を拭いてやりながら言う。
「せっかくだから、私が用意した服でも着てみる?」

 戻ってきたローラは、いくらか季節外れな扮装ながら、彼女のイメージに近い衣装をまとっていた。
 緑のビキニ姿、キウイの中身のように濃い緑のパレオ、ビーチサンダル履きである。
「今日は天気がいいから、これでもなんとかいけそうね」
 これがローザマリアの用意した着替えだったのである。
「うん。いい。これ、なんて服装?」
「組み合わせから言えばキウイガール……なんてね? でも、ローラは体型が大人っぽいから、『ガール』というより『お姉さま』と呼びたいわね。ふふ」
「ねえ、ところで」
 ビキニになってセクシー度のアップしたローラにリーズが問うた。
「ローラって、苗字ないの?」
「あまり気にしないでくれ。むしろ募集中だ」
 涼司が応えた。するとリーズは、はい、と手を上げて、
「なら、『ローラ・ローラ』とかどうか……」
「駄目だ」
 即否定。磁楠がリーズにぴしゃりと言った。
「え、なんで?」
「白いヒゲがどうこうの呪いにひっかかるのだ。あまり深くは言えない」
「ヒゲ?」
「ともかく、禁止と言うことだ」
 磁楠は譲らず、
「できたぞ。もう食べごろだ」
 さっさと話題を転換してカレーをよそいはじめていた。
 こうしてわいわいとカレーを食べる運びとなった。
「いよいよ食べられます。うん、いい匂い。味もおいし……」
 と、シーフードカレーを一口食べたバロウズは、
「うっ……うわああああああああああああ!
 いきなり火を噴いた。
 いや、誇張でも何でもなく、ショックのあまり爆炎波を天に向けて放射してしまった。
「わっ! ……あ、わかった、それ、伝説のアジオー様とかいう人のモノマネね☆ うーまーいーぞー、ってやつ☆」
 アリアがぴしりと親指を立て、
「一発ギャグとしては気が利いてるじゃない☆」
 などと褒めるのだがそんな騒ぎではなかった。
「うお、うおおおおおおおおおん」
 あきらかに尋常ではない様子でバロウズは転げまわっている。今日は服装が服装だから、パンツ丸見えになっているわけだが構っていられない様子だ。これを見て、
「なに? そんなに美味しいの?」
 アリアもシーフードカレーを一口……そして、
「うん、美味しいじゃな……あーーーーーーー!!
 と、泣いた。泣きながらリアンズに『食え。食え』というポーズをした。
おまえらがそんな異常な反応をしているものを素直に食うと思うか!? だがまあ、想像はつく」
 リアンズはきちんと水を用意して、それからほんの半口ほどカレーを食べた。
「うん。極悪なまでに辛い
 水を飲んで汗をふく。
「しかし美味いではある。こう見えて私は辛いもの好きだ」
 リアンズは平気なようだし、涼司も辛口好みゆえ、
「おお、これはいいな。アクリト前学長はどこかな? 彼もインド出身なのでこれくらいのカレーが好きなはずだ」
 と上機嫌であった。ちなみにビーフカレーは中辛のままである。
無理無理無理、無理ですわ。無理
 試しに一口した美緒は早口言葉みたいに告げて水を飲むことになった。 
「でも誰がこんなに辛く……?」
 真奈が怪訝な顔をすると、
「私は……最初にギャザリングヘクスのスープを作りそうになったから後は料理に手を出していない」
 朔は首を振り、
「自分と美空様もちがうであります」
 スカサハは即否定した。
「ちゃうちゃう、俺ちゃうって。ほら、今メールしてる途中やしそんな暇ないって」
 陣は電話を片手に否定した。
 彼は今日、何度か呼びだしたが一度も返事をくれない小山内南に、『こんなカレーになったで』と写真つきのメールを打っている最中だったのだ。
「む?」
 カリンは自分の足元を、なにやら小さい生き物が全速力で駆けていくのに気づいた。
 ちびあさにゃんだった。うひょひょー、などと甲高い声を上げている。楽しくてたまらない様子だ。
「まあ要するにそういうことみたいね……まったく。まあ、激辛好きもいるみたいだし、よしとしましょう……って、ほんとに辛いわねー、これ!
 ほんの少しだけ口にして、それでもルシェンは思わず大きな声になってしまうのであった。
 この凄まじい辛さは、実は焙煎嘩哩『焙沙里』の特製カレースパイス(激辛の素)を、特大ひと瓶全部入れたという所行がもたらしたものだったという。

 しかし激辛好きはどこにでもいるもので、やがてこのカレー鍋の前には、多くの百合園生、あるいは本日のゲストが行列を作ったとか。