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古代兵器の作り方

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古代兵器の作り方

リアクション

「美雪!?」
「そこを……どきなっ………!」
 美雪の名を呼ぶ愛羅の背後から、再び苦無が飛んでくるが、ラナロックの弾丸によってはじかれる。
「随分とひ弱にナッチマッタなぁあああ、ねぇえちゃんよぉお!」
「なぁ、こっからは…………サシでやらせてくれよ………」
 ふらつきながら戻ってきた未散の言葉に、リアトリスが反論する。
「そんな、無茶だよ! まずその体じゃあ――」
「わ、私の回復魔法で」
 ミスティが駆け寄ろうとするが、それを未散が止め、拒んだ。
「あんたらだって………満身創痍、だろ………此処は良いから、体制を立て直せ……よ」
 苦無を握り、それを更に放る。撃ち落とされても、撃ち落とされても、それを投げ続けた。
「皆、行きましょう………確かに体制を立て直さないと、まずそうですからねぇ…」
 更に未散を制止しようとしてたリアトリスたちに声をかけ、レティシアが未散の後ろへと走る。
「無茶は駄目ですからねぇ………良いですか?」
「ふん…………無茶を通しゃあなんとやら、ってな………」
 全く、と苦笑したレティシアが、彼女に背を向け走り出す。美雪を抱えた愛羅を囲むようにしてリアトリス、ベアトリス、メアトリスも走った。戦略的撤退――。
「おいおいおい、往生際がワリィイィイイってんだぜぇぇそいつぁあアアヨォお!!」
「くっそぉ………思いっきし膝入れやがったなぁ………肋何本かイッてなきゃあいいがよ…………」
 未散は痛みの患部を擦りながら苦無を片手で持ち、よろめきながらラナロックの方へと構えをとった。が、そこでラナロックの後ろから叫び声が聞こえる。未散は不思議そうな顔をしながら構えを緩めるも、ラナロックは叫び声のする方へと一切見向きもせず、後ろ手で銃を撃った。勿論、その声の主が誰かなど、確認もしなければ興味もないらしい。見向きもせずに未散に銃を突きつける彼女を前に、未散が慌てて構えた。
「待てよ、なんだよ今の――。何で平然と命奪えんだよ!! 相手と対峙してやっても良いだろ!? 死んだ奴に尊厳はねぇのかよ」
「…………………………」
 返事は――ない。
「そうかよそうかよ!………じゃあいいよ、とっとと正気に戻って今撃ったやつに謝れ」
 一層目付きを鋭くした彼女は、軋む体に鞭打って足を一歩踏みしめる。が、ラナロックの背後に影を見た彼女は、そこで足を止めた。
「死ね――」
 樹月 刀真(きづき・とうま)はそう呟き、手にする光条兵器、黒の剣を振りかぶった。ラナロックは気付いていないのか、未だに未散へと向いている。
「全く違う。そうじゃあないの。そういうのとは違うのよ。でもだからって――私の首をあげることは出来ないわ」
 片手に握られた銃をホルスターに納めた彼女は、降り下ろされている刀真の腕を握り、それを自分の下に引き付ける。形としては背負い投げに近い形でもって、彼を投げたのだ。
「ん? 今のって――」
 苦無を下ろした未散は、目の前の彼女の口調に違和感を覚えた。
「ちぃ!」
 投げられた刀真は地面に叩きつけられる前にゴッドスピードで体勢を立て直すや、一回転して地面を蹴り、大幅にラナロックと距離を取る。
「刀真、……………ゼクス!?」
 先程ラナロックに撃たれ、倒れていたラグナ ゼクス(らぐな・ぜくす)を見付けた漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が慌てて地面に突っ伏しているゼクスへと近付いて行った。
「…………何故ゼクスを撃った」
「知らないわ、知らないの。私だけれど私じゃないわ。だから知らないし、知る気もない」
「貴様………」
 ギリギリと歯軋りをしながら、刀真が黒の剣を握り締める。
「降りかかる火の粉は払う」
「勝手な言い分。勝手よね、私は何もしていない。貴方たちには何もしていない。貴方たちが来たのよ」
「しかし殺意を向ける」
「向けていない。向ける気もない。殺意って何かしら」
 問答をしている意味もないと感じたのか、刀真は口を紡ぎ、ラナロックへと再び斬りかかった。
「おかしな話、不思議な話。でも――面白くは無い話」
 刀真の攻撃が嫌になったのか、ラナロックは銃を両方ともホルスターにしまう。
「ナメられたもんだな………」
「もう興味がないのよ。本当に、何もかも」
 彼の攻撃の悉くを避け、再び彼の腕を着かんで投げようとしたラナロックの腕に打撃を加える刀真。ラナロックの腕がその攻撃によってあらぬ方向へとひしゃげた。
「…………片手を封じた」
「そうね、腕が折れたわ。残念ね」
 反応は何もない。棒読みで自分の腕を見詰める彼女は、涼しげな顔のそれだった。
「これで掴めないだろ」
 更に刀真が追撃しようとしたところで、彼の攻撃を美羽とベアトリーチェが現れて二人の間に割って入り刀真を止めた。
「駄目だよっ! ラナ先輩苛めちゃ!」
「大丈夫ですか? …………先輩」
 刀真の攻撃を美羽が止め、ベアトリーチェはラナロックに駆け寄った。
「あらぁ………お二人ともごきげんよう」
「あれ……………?」
 刀真の攻撃を止めた美羽がバックステップしながらラナロックの横にやって来ると、首を傾げながらに呟いた。
「ラナさん、普通……………?」
「???」
 ほんわかとした笑顔を浮かべる彼女は、いつものラナロックその人である。
「あの………ウォウルさんからお話しを伺って来たんですけど………」
「そうですの? すみませんわね」
「なぁんだ、やっぱりあれ、演技だったんだ! もぉ! 後で絶対文句言ってやるんだからぁ! あんなに心配して損したぁ!」
「でも、美羽さん。何かおかしくないですか? 確かに此処に来るまでの道のりで空になった薬莢とかありましたよね………」
「うん、そうだけど………でもラナさん全然おかしくないよ?」
 そのやり取りを見ていた未散は、しかし未だに首を傾げたままである。
「んー、何か違ぇーんだよなぁ……………あいてててっ」
 脇腹を押さえながら、しかし彼女は「ま、いっか」と踵を返す。原因はわからず、何がきっかけで良くなったかもわからないが、元に戻ったのであればよし、と結論付けて、その場を後にしようと足を進める。と、「あぁ、そうだ」等と、誰にでもなく呟くと、未散はにっこりと笑ってラナロックに向いた。
「また、今度はちゃんとした場所でやりあおうぜ、絶対だかんな! 確かに今、約束したかんな!」
 そう言うと、すっきりした顔つきになり、その場を後にする。
「だって、ラナさん。何やったの?」
「内緒、ですわ」
「気になりますねぇ」
 美羽、ベアトリーチェもニコニコしながらラナロックへ問う。と、異変に気付いたのは、ベアトリーチェが何気なくラナロックの顔を見たときの事。
「あれ――、ラナ先輩の目………赤かったですっけ?」
「えぇ、変わってませんわよ」
「そうだよ。ベアちゃん、不思議な事言わないでよぉ」
「そ、そうですよねぇ………そんな目の色が変わるなんて事――」
 そこで、ラナロックの両脇を抱えて二人が飛び退く。
「もぉ………まだヤル気ぃ!?」
「こちらの用は済んでない」
 そう言うや、刀真が再び攻撃のモーションをとって動く。今度は二人の事も視野にいれて攻撃をしてきているらしく、三人は回避するより他なかった。
「避けてばかりか。……まぁいい」
 刀真の呟きに対して、「だったら――と、美羽が彼の腹部に蹴りを放つ。横へと振り抜く蹴りではなく、前に突き出す蹴りである。横からの蹴りより隙が小さく、コンパクトな技が故、牽制にはもってこいの攻撃。刀真はそれを腕で防ぐと、三人から離れた。
「邪魔をするな――!」
「邪魔するよ! だって先輩なんだよ!? 大事にするよ、普通!」
「知ったこと、立ちはだかるならお前とて――」
 言い終わる前に、ベアトリーチェがその大きな刃で地面を穿つ。刀真が避けていなければ、おそらくは彼とて無事ではなかったろう一撃。
「貴方の強さは知っています………知っているからこそ――先輩を守るため、全力でいかせていただきますね」
 指で眼鏡を押し上げ、ベアトリーチェは事も無げに呟いた。
「………べ、ベアちゃん………?」
「ちぃっ……!」
 刀真は数歩下がり、三人を睨み付ける。