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オオカミさんにご用心

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オオカミさんにご用心
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リアクション

 ホイップが出ていった露天風呂では、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が残っていた。
「な、なんかすごすぎたかも……!」
「は、はい……」
 美羽とベアトリーチェは温泉の中で顔を真っ赤にしていた。
 そのちょっと離れたところにコハクが入っている。
 混浴なので、3人ともしっかりとタオルを巻いて。
 それよりもさらに離れたところにはオルフィナがお酒を楽しんでいた。
(コハクの方をちゃんと見たい……でも、恥ずかしい! 別に裸が見たいんじゃなくて……その……もっとコハクを見ていたくて……)
 ちらりと目をやると、たまたまこっちを見ていたコハクと目が合い、2人とも目をそらす。
 思いはコハクも一緒のようだ。
「うぉぉぉぉ…………!!」
 突然、雄叫びを上げるオルフィナ。
「な、何!?」
 オルフィナを見ると、オオカミの耳としっぽを生やし、生け垣を飛び越えどこかへ行ってしまった。
「おかしいよ! 行こう!」
「はい!」
「うん!」
 美羽の掛け声に3人は更衣室に駆け込む。
「なんでコハクと鼻探偵がこっちに来てるのー! こっちは女子更衣室!
 美羽がつっこみを入れると、2人は慌てて外に出て行った。
「って、あら? 橙歌さんと火焔さん? いらしてたんですね」
「たまたま……ですの。オオカミ化、気になる……ですの」
「そっか、じゃあ一緒に急いで着替えよう!!」
 美羽が取り出した浴衣に着替えると、なんとミニ丈の浴衣だった。
 急いでいたベアトリーチェと橙歌はあまり気にせず(美羽はわかっていてやっている)、そのまま誰でも入れる大きな庭へと出て行き、男性たちと合流。
 そして、何故か庭にカレンたちもいたのだった。


 温泉に行こうと廊下を歩いているカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)
 そして、その後ろをジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が付いていく。
(ホイップが温泉にいたらどうしよう〜♪ 一緒に背中の流しっことか出来るかな)
 カレンはによによと笑いながら妄想と続ける。
(混浴に行ったら……もしかして青太君にも会えるかも!? そしたら、そしたら……『おねえちゃん』って呼んでもらえるように頑張っちゃおうかな! ……本当に呼ばれたらどうしよう! 嬉しすぎて鼻血が出るかもしれないよ!)
 カレンの後ろをついて行っているジュレールは軽くため息をついた。
(また変なスイッチが入ったのか……温泉とは違う方向なのだが……楽しそうだから、しばらくそのままにしておくか)
 そのまま歩いていくと、いつの間にか広い庭へと出てしまっていた。
「あ、あれ!? 温泉は!?」
「……場所がまったく違うのだよ」
「ええっ!? ……ま、いっか。なんかこのお庭も素敵〜。池に映った月も……」
「カレンどうした?」
 池に映った自分の姿を見て固まったカレンを心配し駆け寄る。
 すると、カレンの頭からはオオカミの耳が、お尻からはしっぽが生えている。
「事件の匂いがするよ!」
「ああ、そうだな!」
 どうやら、カレンには襲うというより知的好奇心を満たすために暴れるという方向に作用したらしい。
 そこへ美羽たちが到着したのだった。


「ふふふ♪ ちょっと遠出の出来る温泉旅館をタノベさんに聞いて〜、夫婦と2人で……うん、良いですよね〜!」
 楽しそうに妄想しているのは御神楽 陽太(みかぐら・ようた)だ。
 タノベさんの部屋へ行こうと廊下を歩いていたその時だった。
 前からオオカミの耳やしっぽを付けたセフィーたちがやってきて、走り抜けていった。
「な、なんですか!?」
 陽太は追いかけようとしたが、見失ってしまう。
「いったい何が原因であんなことに……」
 どうしようかと悩んでいると、旅館の玄関に出た。
 そこにいたのはこれから事件の犯人を捜しに行こうとしている美羽たち見つけた。
「どうしたんですか?」
「オオカミ化した人たち……見た? その事件の犯人を捜しに行こうと思って!」
 カレンは拳を握りしめた。
「俺も手伝います!」
 陽太はそう申し出て、みんなと一緒にとりあえず外に出た。
「外に出たのはいいが、どうするつもりだ?」
 ジュレールがカレンに質問する。
「それならオレが鼻で――」
「どの匂いかわかいやがらないでしょう……ですの」
「う……」
 火焔は橙歌に言われ、がくりと肩を落とした。
「それなら俺がダウジングで方向を探し当てるので、その方向に向かっている匂いを探れば……」
「そうですね! それで行きましょう!!」
 火焔はすぐに復活した。
 さっそく陽太の案が採用され、ダウジングで犯人がいる方向を探す。
「……こっちでしょうか」
 的中率の低いものだけあって、断定はできない。
 示した方向はちょうど旅館の真裏。
「ちょっと待っててくださいね……ふんふん…………旅館の匂いが……って、これを旅館にまき散らしたからこの匂いなんですね! わかりました! こっちです!」
 火焔は匂いを探り当て、駆け出す。
 しかしぐるっと旅館の反対側へ回ると、そこにいたのは――。
「むふふぅ……色々美味しすぎた」
 生け垣から旅館の部屋を覗いていた薬屋のおやじことシャガを発見した。
「またか!!!」
 全員が叫ぶとビクッと体を震わせ、恐る恐るこっちを見る。
「ぎゃっ!」
 シャガは脱兎のごとく逃げようとしたが、陽太が機晶スタンガンを打ち、痺れさせ動けなくしてしまった。
「みんなの楽しい時間を邪魔するなんて許せないよ!」
 カレンは痺れて地面に転がったシャガの顔をかかとでぐりぐりと踏みつける。
 ほのかに喜んでいるようで、気持ち悪くなり、カレンはすぐに足をどけた。
「気持ち悪い!!」
 美羽はお尻をゲシゲシ蹴っていたのだが、さっきの反応を見て、美羽もやめてしまった。
「困った犯人……ですの」
 橙歌はちゃくちゃくとロープで縛り上げる。
 それを火焔が担ぎ、タノベさんに事情を話すと、物置に置かせてもらうことになった。
 早朝には村長へ引き渡そうということだ。


 翌朝。
 タノベさんに旅館の情報を聞きに行くついでに、物置を確認しに行った陽太がシャガがいなくなっているのを見つけたのだった。