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古戦場に風の哭く

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古戦場に風の哭く

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第三章 戦意、衰えず
「みんなを守る為の結界が裏目に出るなんて……ともかく、このまま放っては置けない。どうにかして、みんなを解放してあげよう」
 この『村』に入り村人達の様子を見た高峰 雫澄(たかみね・なすみ)は、そう思い。
「対話とかで何とか出来れば……と思うんだけど」
 言いつつ視線が向くのはパートナーシェスティン・ベルン(しぇすてぃん・べるん)だった。
「シェスティンが戦う気みたいなんだよねぇ」
 その推察通り、シェスティンは村人には一瞥もくれずに歩いている。
 向かうはそう……尋常でなく殺気が漏れてくる方向。
 おそらく、戦士たちが在る。
「本人は『ただ戦いたいだけ』見たいな事を言っていたけど、どうなんだろう……それだけじゃあ、ないような気もするんだけどなぁ……」
 迷いない背中を見つめた雫澄は、ちょっとだけ歩を早めシェスティンの隣に並んだ。
「まぁ、シェスティンだけだとやり過ぎるかも知れないし、僕も一緒に戦おう」
 その瞳に、こちらを認識した戦士……のなれの果てとでも呼ぶべき者達が映った。
 互いに争っていたと思しき彼らの気配が、雫澄達を認め、変わった。
 とてつもなく、物騒に。
「ふん、浄化がどうなどと我には関係ない。だが戦いを望む者が居るのならば、我が相手をしてやろうではないか」
 同時に、シェスティンは征服英霊のサーベルを抜くと地を蹴った。
 ぶつかり合う獲物。
 ドロリと濁った瞳に僅かに肌が泡立つ。
 それは歓喜か憐憫か。
 それとも……死して尚、戦う事しか出来ない相手に対する、同情か共感か。
「……まったく、お互い業が深いな」
 囁きつつ、シェスティンの振るうサーベルが狂った戦士達を突き刺す。
 知っているのだ、自分が戦いしか出来ない事を。
 戦う事でしか、彼らを救えないのだという事を。
「小細工など必要ない。敵ならば、切り伏せる……それだけだ」
 その身体が、既に遠い昔に朽ちた筈のそれらが、爆ぜる。
 嗚呼、それでも『彼ら』は止まらない。
 彼らもまた、それしか出来ない、戦う事でしか、在れない……シェスティンと同じように。
 だから。
「戦いを望む者が居るならば来るがいい!……その無念ごと、我が切り捨ててくれよう!」
 何度も何度でも繰り返そう、切り捨てよう。
 彼らの無念が、消えるまで。
「ごめん、これ位のコトしか出来なくて……でもせめて、その苦しみから解放してみせる!」
 そんな、突っ込みがちなシェスティンの援護をしながら、雫澄はライフル型にしたカラドリウスの引き金を引いた。
 【マインドシールド】を掛けていても尚、眼前の光景は酷いモノで。
 それでも、自分やシェスティンに対する者達がどこか嬉しそうに思え。
「戦士達の霊は、どうやら最後まで戦い切るのが望み……みたいだね」
 雫澄の頭に、退くという単語は浮かばなかった。

「こんな、一方的な虐殺が……住民を皆殺しなんて……此の村で一体、何があったというの?」
 襲い来る戦士達に、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)の顔には堪え切れない悲しみが宿った。
 小さいとはいえ、この村で暮らしていた村人達と、守ろうとした戦士たちと。
「大戦の折には、このような惨劇は頻繁に行われていたというが……」
 ローザマリア程ではないがグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)もまた沈痛な面持ちで。
「闘う前に奪われた民の無念は、如何程のものか……察するに余りある。せめて、この手で奈落へ送ってやらねばな」
 ただその哀悼を決意に変えようと剣を握った。
「此処は、人々の念が強過ぎまする……わたくしの生きた戦国の世でも幾度となく繰り返されて来た光景」
 上杉 菊(うえすぎ・きく)の脳裏に浮かぶのは、かつて生きた時代の記憶。
 高遠に散った五郎の兄君、天目山で北条の姉様と共に逝った勝頼兄様、魚津で最期の一兵まで闘い終ぞ軍門に下らなかった上杉家中の方々。
 長尾上杉家二代目当主の上杉景勝へ輿入れした甲斐國守護大名武田信玄の六女……菊の生きた時代では、眼前の光景もまた見慣れたもので。
 それでも、だからこそ慣れる事は出来ない、慣れては繰り返してはいけないと、菊は思うのだ。
「わたくしの力で、鎮める事が出来るのでしたら、存分に参られませ。我が夫、上杉権中納言景勝に代わり、わたくが御相手仕ります!」
 だから、菊は矢を番え、放った。
 戦場(いくさば)で相対した者への礼節を込めながら。
「奈落より迎えに来た――共に参ろうぞ。だがその前に……鎮めねばなるまいな、其方達の死して尚、剣を振るわんとする、その荒ぶりし魂を!」
 グロリアーナは【ファランクス】で攻撃を確りと受け止めると、返しの斬撃を繰り出した。
 剣戟を出来るだけ長く……死人を充足させ得るだけの時間をかけて剣を合わせたいと。
「或いは、何も知らなかった村人達よりも、この人達の無念は強いのかもしれないわね」
 パートナー達と自らに【武器の聖化】を施しながら、ローザマリアは思った……亡霊戦士の鬼気迫る姿に、。
 何も分からず命を失った村人たち。
 けれど、戦士たちは知っていた。
 何かが起こる可能性を、この村が襲われる可能性を知っていて……護れなかったのだ。
 そこにはどれ程の絶望があったのだろう。
「刃渡りの長い得物は得意ではないわ。ごめんね――私は、私のスタイルで貴方達と闘う!」
 ローザマリア無光剣は逆手に持って一人の戦士に挑んだ。
 グロリアーナと同じように守勢に徹しながら、隙を付く。
 彼らの無念をこの剣で受け止め、少しでも晴らす為に。
「そうでないと、この村は永遠にこのまま彷徨い続けねばならない……それだけは、駄目」
 それは悲しすぎると、ローザマリアは必死に剣を振るった。

「なぶら殿、ここは我輩に任せて欲しいのだ。きっとこの者達の魂を成仏させてみせるのだ」
 相田 なぶら(あいだ・なぶら)はそう告げた木之本 瑠璃(きのもと・るり)の顔をじっと見つめた。
 真っ直ぐで強い、真摯な眼差しだった。
 正直、瑠璃がどうやって死者の魂を救うのか、詳しい事は分からない。
 ただ、パートナーの事は信じられるから。
「まぁ、ここは瑠璃を信じて任せてみるかな」
 頷いてやると、瑠璃は嬉しそうに破顔し、堕ちた戦士達へと向き合った。
「魂が救われない戦士達、、、自らの守るべきものを守りきれなかった無念、、、凄く、、、凄く悔しかったに違いないのだ。その悔しさ、我輩にぶつけるのだ!」
 それが呼び水のように、亡者が動く。
「さぁ、我輩をその敵だと思ってかかって来るのだ! 我輩も手加減はせぬのだ」
 ぶつけられるのは、憎しみ・無念・悔しさ……哀しさ。
「そうだ、それで良いのだ。……皆を守るために培ったその力、存分に発揮するのだ」
 ぶつけられるのは、戦い敗れて誰にも知られることが無かった、力・信念。
 それらを瑠璃が受け止めるのを、なぶらは確りと見届け。
「我輩がこの拳でしっかりと覚えておくのだ」
 そして、瑠璃は願う。
「だからどうか、心安らかに眠って欲しいのだ」
 と。
「俺の武器はこの身一つ……そして拳しか無いが、戦士達の無念が晴れるのであれば喜んで相手をしよう」
「ちょっ、ちよっとエスフロス!」
 村主 蛇々(すぐり・じゃじゃ)は、言いつつ無造作に亡霊戦士に歩みを進めるパートナーエスフロス・カロ(えすふろす・かろ)に慌てた。
「相手がどれだけ強いか分からないでしょ!? っていうか、向こうは獲物持ってるじゃないの!」
 剣を構えた亡霊戦士に対し、エスフロスはいつも通りだ。
 即ち、両腕に付けた愛用の白金色の籠甲(ガントレット)である。
「リーチが違うし不利でしょ、強がってる場合じゃ……」
「向こうがいかなる武器で来ようとも、俺はガントレット(と掌)で全て受け止めてやるぞ!」
 ちょっとだけ心配だし援護するわ、という蛇々の気遣いは、だが、遮られた。
「勇猛果敢な戦士達に憐れみなど必要無いのだ。ただ俺も戦士として、戦士としての方法で相手に礼儀を尽くさねばならん……! 蛇々よ、介入は許さんぞ!」
 そうしてエスフロスは蛇々の援護を拒絶すると、真っすぐに亡霊戦士へと駆けた。

 カキィィィィン。

 剣とガントレットがぶつかり合い、甲高い音を立てた。
 それはまるで、亡霊戦士の歓喜の雄たけび。
 受けてエスフロスの口元にもニヤリ、不敵な笑みが上がり。
 互いに無言のままで、攻撃を繰り出した。
「……何なのよアイツ」
 おさまらないのは、怒られた蛇々である。
 心配しただけ損ではないか……あんなに楽しそうにやり合って。
 見ている内に怒りは徐々に別のモノに……戦意へと変わっていった。
「……でも私だって少しでも戦えるわよ! 傷付くのはイヤだし、怖いけど……今日は逃げないんだもん。頑張ってみる」
 だって他にも在るのだ。
 途切れた想いを、無念を、受け止めて欲しいと切望する魂が。
 それが、蛇々にも分かるから。
「……か、かかって来なさいよ!」
 挑発はこんな時でなければ笑ってしまうくらい、震えていたけれど。
 蛇々は対象と間合いを取り、愛用の銃の引き金を引いた。
 熱の塊が亡霊戦士を焼く、が、まだ倒れない。
 当然だ……相手は最早、死から遠いモノ。
 それでも。
「付き合って上げる……あんたの気が済むまで」
 対象の足を止め一定の間合いを保ちながら、蛇々は何度も最古の銃を撃ち込んだ。



「土地の浄化ねぇ? ふん、何かしらの調度品でも手に入るなら興が乗るんじゃが……」
 ファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな)は頬杖をつきながら、目を眇めた。
「まぁ、このまま放っておいて何かしら悪影響を及ぼしても面倒じゃし、ちょうどヒルダが欲求不満で五月蝿いからのぅ。あの戦闘狂共々発散させてやろうじゃないか」
 その眼差しの先には、パートナーであるヒルデガルド・ゲメツェル(ひるでがるど・げめつぇる)の姿がある。
「なァ、アネゴォ? 未練だなんだっつってるけどヨォ、よーするにコイツら全員暴れたりなくて欲求不満ってことっスよネェ?」
 気付いたのか、振り返るヒルデガルド。
 伊達眼鏡越しの青い瞳に浮かぶ狂的なまでの歓喜、ファタは肩を竦める事で肯定を示し。
「OKOK、そーいうことだったらアタシに任せなァ。丁度アタシも溜まってんだ、全員纏めてヌいてヤるから道具もってかかってきナ? 昇天するまで相手してヤっからヨォ!」
 途端、口の端をニィッと釣り上げ。
 ヒルデガルドは楽しげな雄たけびと共に、拳を打ち合わせたのだった。
「ハッ、随分とタフな事だ、いいネいいネェ」
 一対いっぱい上等!、次々と戦士たちを打ち倒すが、所詮彼らは死者。
 だがヒルデガルドは臆する事無く、寧ろ楽しげで。
「ふむ。あちらは回復はいらぬか……便利なものじゃのぅ」
 さすがは死したるモノ、ヒルデガルドを回復させつつ、苦笑をもらすファタ。
「じゃが、変化は確実に訪れておる」
 ヒルデガルドと戦士と戦っているのを、ファタはのんびり傍観し続けた。
 パートナーを信じ、彼女たちの気が済むまで。

「家には子供がいるんだから、呪いなんかシャレにならないわ」
 赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)は文字通りパートナー……妻であるクコ・赤嶺(くこ・あかみね)に真剣な面持ちで首肯した。
 二人の自宅はツァンダ付近にある。
 そういう意味でも放っておくわけにはいかなかった。
「勿論、彼らの無念を昇華して上げたいのも本当ですが」
「むねん……ですか」
 その言葉に戦闘舞踊服 朔望(せんとうぶようふく・さくぼう)は小さく首を傾げた。
「むねん……よくわかりませんが、霜月とクコは付き合ってあげるみたいですね。なら自分も付き合いましょう」
 言いつつ、無意識に朔望は霜月に身を寄せた。
 此処は怖い処だ、と自分の内側が囁いていた。
 或いはそれは、護りたかったのに護れなかった戦士達の無念を、本能的に感じ取っていたのかもしれない。
「前に出なくて良いですから、いつものようにサポートお願いしますね」
 霜月はだから、朔望にそう告げてから孤月を抜き。
 【先制攻撃】を正面から仕掛けた。
「戦いたい? なら思いっきり相手してあげるわ、そっちが嫌っていうまで相手してやるわよ」
 同時にクコもまた、【クライ・ハヴォック】……雄たけびを上げてから軽やかに身を躍らせる。
「やった!……あっ、まだ」
 霜月の攻撃は確かに相手を捉え、斬り抜き。
 だが、相手は倒れない。
 クコの【アイアンフィスト】を駆使した拳も、また。
「あれが、むねん……一体、どれほどの……」
 朔望が思わずもらす間も、霜月とクコの攻撃は続いていた。
 正面から堂々と挑み、受け止め打ち据える。
「あなたは何の為に戦っていた……戦いたかったのですか?」
 打ち合いながらの霜月の問いに、だが、戦士は答えず。
 ただ、その動きが僅かに鈍った。
 永き永き時を経て、思いは擦り切れ欠片しか残らず。
 だから『彼』は答える事が出来なかった……今は、まだ。

「あたしも戦死の端くれだから、その無念は……一戦を交えて晴らしましょう」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は何時になく真摯な面持ちで、戦場に立った。
 国軍の正装に身を包み、普段の陽気さを微塵も感じさせないセレンフィリティに、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)も自然とその表情を引き締めた。
 今でこそ技術官僚となったセレンフィリティだが、今は戦士に立ち返っている。
「彼らに全力を出して戦い抜くことが、最大のリスペクトであり慰霊になるはずだから」
 だから文字通り全身全霊で、彼らにぶつかる。
「反則気味かもしれないけど、貴方にとって剣が自分の誇りであり存在意義ならば、戦士としての自分のそれは銃だから」
 【女王の加護】で固めた守り。
 その上で、【サイコキネシス】【放電実験】で戦士達を牽制しながら、セレンフィリティは冷線銃を用いて応戦した。
 互いの誇りと存在意義を賭け、それぞれが得意とする獲物で挑む……それが礼儀だから。
「セレンがあんなに真剣だなんて……私もパラディンとして負けてはいられないわね」
 普段はいい加減で大雑把で気分屋な恋人の真摯さを受けて、セレアナもまた手加減なしで戦いに挑んでいた。
 パラディンとして、先人たちへの最大の敬意を表すため。
 【女王の加護】で身を固め、十分にとった間合い。
 セレアナは一礼してから、槍を突き出した。
 勿論、それは避けられる事を想定して。
 その上で避けた先に【チェインスマイト】と【ライトニングランス】を繰り出した。
「さぁ、やり合いましょう。人生最後の戦いをどうか堪能して頂戴」
 この戦いを最高のものとする……それがセレンフィリティが彼らへの最大の礼儀だった。
「こんな悲劇を起こさない為にヒーローを目指したのに……」
 対照的に、防戦一方だったのは風森 巽(かぜもり・たつみ)だった。
 目の前に在るモノ達は、ただの亡者ではない。
 弱き者達を護ろうとした、巽と同じ志を持っていた者達なのだ。
 どうして、どうして戦う事が出来るだろう?
「戦って、タツミ! 此の侭だとまた誰か別の人が犠牲になっちゃうんだよ!」
 だが、迷い悩む巽にティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)の檄が飛んだ。
「だけどティア! この人達、この人達は死んでからも護ろうとしているんだぞ! そんな人達を相手に……戦えるかよ…」
「タツミはヒーローでしょ!」
「ヒーローだなんだ言って、護るどころか気づきもしなかったんだぞ! そんな俺に、どうしろっていうんだよ!」
 叫ぶ巽に容赦なく襲いかかる、亡霊戦士の剣。
 重いそれに吹き飛ばされる巽を庇うように、セレンフィリティ
「覚悟が出来ないなら、去りなさい。心を決める事が出来ないのならば」
 それでは彼らの無念を晴らす事は出来ないわ、その言葉に巽が反論する術はなく。
「タツミの言いたい事も、分かるよ」
 俯いた巽の傍らに膝を付き、ティアは「だけど……」と真っすぐにパートナーを見据えた。
「だからってタツミが死んだら、これからタツミが救う人達は誰が救うの!? 別の人に押し付けて知らん振り出来るの!?」
 今だって、そうだ。
 セレンフィリティや霜月達が戦っている。
 いつ終わるともしれない戦いを、懸命に。
 それを知らない振りで、見ないでいられる事が、出来るの?
 言葉と眼差しが、突き刺さる。
 責めるでない、ただ巽を案じる声音が瞳が、気付かせてくれる。
「救えなかったと悔やむなら、せめて魂だけでも救おう?」
 だから、巽は立ちあがる。
 深い深呼吸を一度。
 そしてツァンダー変身ベルトに意識を集中させ。
「蒼い空からやってきて……遂げぬ想いを引き継ぐ者! 仮面ツァンダー! ソゥッ! クゥッ! ワンッ!」
 巽は、仮面ツァンダーへと変身した。
「ボクはボクの出来る事をする。だから、タツミはタツミの出来る事であの人達を救ってあげて」
 ティアに答える声はない。
 応えたのは、正義のヒーローの熱き拳。
「もういいんだ……後は我らに任せて、貴公らはもう戦わなくて……眠っていいんだ」
 言葉と思いを乗せて、戦う。
 その仮面の奥で、止め処なく涙を流しながら。
「引き受けるから……貴公らの無念も、誰かを護りたいという想いも全部……だから、もう……」
 風が、ゆっくりと動いた。