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【EATER×EATER】進撃! キメラーメン!

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【EATER×EATER】進撃! キメラーメン!

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第十八章:吉崎 樹

 同日 同時刻 海京某所
 
「なんだよこいつら。ちくしょう……」
 吉崎 樹(よしざき・いつき)はちょっとした、否、深刻な危機に見舞われていた。ケーキを買って帰ろうとした途上で、キメラーメンの一群と遭遇してしまったのだ。
 樹を締め上げようと、そして彼が手に持つケーキを奪い取ろうと、無数の麺が彼に向けて伸ばされる。何本かの麺は回避することに成功するものの、やはり多勢に無勢。麺を回避したところを狙うように飛んでくる、更なる麺の波状攻撃が樹の身体を捕らえた。
「ちくしょう……。なんだこの麺、むちゃくちゃ頑丈じゃないか……」
 手首を締め上げられ、剣を振るうのを封じられた樹はやむなく手で麺を引きちぎろうとする。しかし、キメラーメンの麺はただ引きちぎろうとしただけでは、なかなか引きちぎれない。
 そうしている間にも更なる麺が次々と樹を襲い、彼の身体の至る所を拘束し、締め上げていく。どれだけ締め上げられてもケーキの箱だけは手放さない樹だが、そんな樹からケーキの箱を直接奪い取ろうと、動けなくなっている彼をめがけて何体ものキメラーメンが進撃してくる。
「このケーキ……絶対に守り通してみせる!」
 自分を叱咤するように気合を入れるも、更に強くなっていく締め付けのせいで、樹の声は苦しげだ。何本もの麺に身体を拘束され、更にはゆっくりではあるものの、進撃してくるキメラーメンの群れに包囲されつつあるピンチの中、樹は必死に考えを巡らせた。
(何か……何かあるはずだ……この状況を打開する方法が……!)
 だが、胸中での叫びもむなしく、有効な打開策を思いつかないまま、更にキメラーメンとの距離は縮まっていく。
(美味いものを自分から取り込む……もとい、捕って喰うラーメン……ったく、こんなけったいなものを作りやがって――もしかして!)
 何気なく胸中で毒づいた瞬間だった。ふとした思い付きが樹の脳裏をよぎる。
(……ところでこのキメラーメン、『美味しくないもの』を『無理矢理食べさせる』とどうなるんだ?)
 締め上げられた身体の中でかろうじて動く、左手を必死に動かしてポケットに突っ込むと、樹は手探りで感触を確かめる。すると、目的のものはすぐに見つかった。
(……さて、ここにいくつか『血世孤霊斗』がある。侵食効果はたぶんあるはず。俺は美味しいとは思わないが、これを食べさせようと思う。どうだろう?)
 自分に問いかける樹。だが、躊躇している時間はないようだった。締め付けは一層強まっており、このままでは左手で保持しているケーキの箱を取り落としてしまうだろう。そして、そうなった以上はケーキを奪われてしまうのは想像に難くない。
(ええい! イチかバチかだッ! 喰らえッ!)
 胸中で叫ぶと、樹はポケットにあった全て『血世孤霊斗』を左手首のスナップだけでキメラーメンに投げつけた。するとキメラーメンたちは食物に反応し、樹を締め上げているのとは別にもう一本、麺を伸ばして『血世孤霊斗』をキャッチする。
 そして、『血世孤霊斗』をキャッチしたキメラーメンすべてが間髪入れずにそれを取り込んだ。しかし、『血世孤霊斗』を取り込んでも何の変化も見られなかった。
(ちくしょう……効かなかったのかよ……)
 樹は歯噛みしながら、胸中で悔しげに呟いた。だが、変化は唐突に起こった。今まで、じりじりと樹を締め上げることに徹していたキメラーメンが突然、樹の身体を渾身の力で持ち上げると、その勢いに任せて空高く放り投げる。
「なんだよ急に……って、うぁぁぁっっ!?」
 空高く放り投げられながら樹は確かに見た。キメラーメンの群れが揃って震えながら地面をごろごろと転がっているのだ。その様子は、どこかもんどりうって七転八倒しているようにも見える。
 そして、もんどりうったキメラーメンは数秒の後、一斉に破裂し、大破したのだった。
「ま、結果オーライってことか」
 道路近くに生えた背の高い街路樹の枝に引っかかりながら、樹は苦笑した。ちなみに、ケーキの箱も彼と同様に枝に引っかかったことで落下を免れ、中身に関しても無事だったとか。