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リアクション
破滅したオールドシティー
防衛戦がオリュンズ郊外で繰り広げられている最中、敵地襲撃部隊もまた、ドールズとの交戦に入ろうとしていた。
大量のロボットの残骸の合間を黒い靄がうねうねと這いずり回る。靄に包まれた機体がゾンビのように起き上がり、武器を取り、攻撃の意思を見せる。まるで都市中央の巨大なオベリスクを守るように。
「オベリスクは古代エジプトの記念碑テケンのこと。しかし、古代ローマにおいては遠征の戦利品として略奪するものだ」
武崎 幸祐(たけざき・ゆきひろ)ははなるほどと思う。この作戦名が『オベリスクを奪取せよ』なのは、自分たちに『勝利を奪って来い』と暗示しているのだと。
ならば、作戦名を決めたロンバート大将の激励に答えるしか無い。
「敵、ドールズ多数出現! コチラに向かってきます」
ローデリヒ・エーヴェルブルグ(ろーでりひ・えーう゛ぇるぶるぐ)が敵の飛来を告げる。飛空巡洋戦艦グナイゼナウ艦内モニターに多数のEnemyマークが点灯する。
「後方部隊砲撃用意! 前線部隊の道を作るんだ!」
幸祐が命令を下し、交戦が開始される。
交戦を開始する両軍の戦火に紛れて、地上では三船 敬一(みふね・けいいち)率いるパワードスーツカタフラクト部隊がヘリオポリス内部に侵入する。敵の中枢に至る経路を見つけるためだ。
これに伴い白河 淋(しらかわ・りん)が都市部の様子をビデオカメラで収めていく。
「アレだけのロボットをオリュンズに送っているのに、誰もいないなんて」
映像には人の影すら映らない。送られた映像を郊外の輸送車内で観察するレギーナ・エアハルト(れぎーな・えあはると)の眼にも瓦礫しか止まらなかった。
“特に不振なモノは見当たらない。あるとするなら――、そうですね、オベリスクでしょう”
「わかった。交戦を避けつつ、中央の塔に向かうぞ」
敬一に淋、コンスタンティヌス・ドラガセス(こんすたんてぃぬす・どらがせす)が続く。
「アニス行くぞ!」
「にゃははようか〜いっ!」
佐野 和輝(さの・かずき)にアニス・パラス(あにす・ぱらす)は上機嫌な返答をする。
和輝はフィーニクスへの搭乗を希望した際に、フライトオフィサーがサポートアンドロイドになるハズだったのだが、彼は「アニスがいい」と断った。
そのせいだろうか、アニスは「これって、奥さんみたいじゃない!? はうわぁ!」とか顔を赤らめて終始悶えていた。
和輝のフィーニクスは鳥型を主体として、機動性を生かしたマニューバとファイヤーを繰り返す。フィーニクスは防衛よりも攻め型の機体だ。それを生かした戦い方をする。
「先行部隊から通達。敵地中枢への入り口を見つけたとのこと」
ヒルデガルド・ブリュンヒルデ(ひるでがるど・ぶりゅんひるで)が補給指示の傍ら敬一たちからの情報を伝える。
“真人。俺とアニスで敵を惹きつけておく。その隙に潜入部隊の投下ポイントを確保してくれ!”
和輝からの通信に御凪 真人(みなぎ・まこと)は「了解」と告げ、アストレアを駆る。
「白、指定ポイントの座標を転送してください」
“今送るのじゃ”
グナイゼナウから名も無き 白き詩篇(なもなき・しろきしへん)がデータを転送する。
“気をつけるのじゃぞ”
「分かっています。セルファお願いします」
「まかしといてよ」
アストレアのメインパイロットセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)が息巻く。
フィーニクスが誘導するドールズの合間縫って砲撃射程範囲内に到達する。
「道を作るわよ!」
【新型プラズマライフル】でオベリスク近くの地面に穴を開ける。そこがドールズたちの基地らしく、撃ちぬかれた奥に分厚い装甲外壁が見えた。
ここからが最も重要な戦いとなる。
彼らは内部に潜入し、敵のデータを奪い取ってこなければならない。それによりこの戦いの命運が決まるのだから。
潜入部隊が降下を始める。
ツアーの終点
「この度は、当ツアーをご利用頂きまして誠にありがとうございます。【第三世界】観光ツアーはまもなく終了となります」
ツーク・ツワンクによる遊覧飛行の旅が終わりを告げる。船長の佐伯 梓(さえき・あずさ)からの最後の挨拶と共に、ツワンクは本拠地への投下ポイントへと進む。主装デッキガンを鳴らしながら。
ツワンクに残っている乗客数は4人。
「それではみなさん、ここから自由時間となります。楽しんできてくださいね!」
案内役のナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)の言葉で、投下地点に着く。
「みなさんの無事を願っておりますそれでは――」
「ぐっどらーっく!」
4人は頷くと、甲板から地上へと飛び降りた。
「あーちかれた」
長い事道化して疲れたナガンが素に戻る。
「なに素にもどってるのよーウェル。まだ帰りのツアーがあるでしょー」
「帰りまでが遠足てか? 行きより帰りが断然きつそうだぜ」
この砲撃飛び交う中で、参加者たちを迎えるため、ツワンクを死守しないといけない。
梓はツワンクを攻撃部隊の後方尾に戻し、固定砲台化させる。
「かえったら二人でゆっくりオリュンズ観光しましょー。側面の敵は任せた」
「アイアイサー船長」
頬にくちづけし、ナガンはツワンク船艙に吊るされたキングクラウンへと落ちていった。
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