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大空のトレインジャック!

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大空のトレインジャック!

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2号車にて

 事件発生時、2号車に乗っていたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は2号車と3号車の間のトイレに行っていた。セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、即座にセレンフィリティと合流することを考え、ひどく困惑した表情を作ってもじもじとテロリストに声をかけた。

「あ……あの……トイレに行かせてください……」

消え入りそうな声を出す。

「……いいだろう」

2号車を占拠している5人のテロリストのうち、1人が見張りについてきた。

「さっさと済ませろ」

「女性のトイレに一緒に入ってくるなんて、サイッテー!」

のんびりした声とともに、セレンフィリティがテロリストの首の後ろに蹴りを見舞う。もろに急所にヒットした蹴りに、意識を失ってテロリストが崩れる。サブマシンガンが床に落ちる前に、すばやくセレアナがキャッチ。

「大きな音がしたらまずいわ」

「鮮やかだな」

やはりトイレに居合わせており、様子を窺っていた叶 白竜(よう・ぱいろん)が声をかける。世 羅儀(せい・らぎ)も一緒だ。

「天井を破って運転席の確認に行きたいの。手を貸してちょうだい」

「俺も武器を確保したい。一緒に行かせてもらう」

「酒と肴を買ってのんびりの予定だったんだがな」

世が呟く。本来なら休暇でのんびりのはずだったのだ。

「仲間が戻ってこないとなると、不審を抱かれるだろう」

世は手早くテロリストから服を剥ぎ取りそれを着用し、自分が着ていた服で手早くテロリストの手足を縛り、ハンカチを口に突っ込むと、個室へ押し込めた。

「あんたはトイレから出られなくなってるってことで、ここで見張りながらサポートさせてもらう。

 ちとサイズが合わないが、仕方がない」

「……設定が微妙だけど、わかったわ」

覆面の向こうからの世の言葉に、セレアナが頷いた。

閉め切りの個室の天井をセレンフィリティが何十にも雑巾で包んだサブマシンガンでぶち破る。かなりの音がしたが、世が掃除用具入れから金属製のバケツや掃除用具をすばやく取り出し、床に散乱しているように配置し、万一不審に思われた場合に備えた。
破った天井からセレンフィリティ、セレアナ、叶らは列車の屋根に出た。3人が落下しないようにさりげなく世がレビテートでサポートする。セレンフィリティがぼやく。

「それにしても占拠された列車の屋根を伝うなんて、古い映画にあるけど ……うう、寒くてたまんない」

「……そんな格好してるからじゃないのか?」」

めくれたコートの下はビキニのみ、というセレンフィリティを見て、叶がもっともなツッコミを入れる。

2号車では、トイレにセレアナを連れて行ったきり戻らない仲間に残る2人が疑念を感じ始めていた。

「いくらなんでも遅すぎないか? もう10分以上になる」

猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)ウイシア・レイニア(ういしあ・れいにあ)に向かってボソボソと呟いた。

「俺ってトラブルと縁があるのかね。旅行中にテロリストに襲われるなんて……

 しかし丸腰じゃいくらなんでもな。この状態じゃ身動きがとれねえ」

「よく映画なんかですと、こういう場合病気のフリをして注意を引いたりするみたいですが……

 ……男性だから色仕掛けのほうがいいのかしら」

「いやそれは惹きつけてからの話だろ……だしまたなにかシチュエーションが違わないか?」

「……そう ……ですか?」

ウイシアは考え込んでいる。

テロ発生と同時にいきり立って天城 瑠夏(あまぎ・るか)のパートナー、シェリー・バウムガルト(しぇりー・ばうむがると)は小声で叫んで腰を浮かせた。

「何よ、何これ…… 折角の里帰りなのに…… 瑠夏くんと一緒なのに!
 
 待ってて瑠夏くん、すぐにこいつらを何とか……!」

「敵は、全車両に乗ってる。全員が人質だ。下手に動けば、一般の人も危険になる。

 対処できる人々も少なくない筈だ…… 俺達はもう少しタイミングを窺った方が ……いい」

「ん、そうね。慌ててたかも、私……」

「家族に近況を伝えに帰るつもり、だったが ……とんでもないことになった、な」

瑠夏が薄く笑う。

ちぎのたくらみで5歳児の姿をとり、旅行楽しんでいた牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)はテロ発生にもまったく動じる様子はなかった。

「テロ? どうぞどうぞ、私の邪魔じゃなきゃ好きにどうぞ

 人質って、見捨てて『自分が悪役になりたくない』って利己に訴える盾でしかありませんよねー。

 人質は取られた時点で死人と考えればいいのよ。上手くやれば生きてるかも。それだけです。」

乗車前に、万一のことがあってはとナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)ラズン・カプリッチオ(らずん・かぷりっちお)に命じて鎧化させ、着せておいたのは先見の明だったのかもしれない。

「ナコトも心配性だなぁ。けどいいよ、移動なんて退屈なだけだし。

 鎧化したら寝てるから、殺してもいい殺人鬼とかが来たら起こして」

物騒なせりふを言って、ラズンは鎧化し、ナコトはそれについて

「マイロードを守る気が無いようですわ、あのポンコツ」

と、シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)に向かってぶつぶつこぼしていたのだ。

テロ発生を知ったアルコリアの言葉に、ラズンは一度目を覚まし、

「トレインジャック?
 
 きゃはは!! 刑務所襲撃するほうが建設的じゃないの? 面白そう」

ときた。ナコトはアルコリア同様、自分と主人に影響がなければどうでも良いといった態度だ。

「トレインジャック? ドラグーン・マスケットを持ち込んでいればよかったわ。

 馬鹿馬鹿しい……放置でも宜しいかしら。」

シーマは一人、気をもんでいた。

(アルやナコトは何かあれば目いっぱい破壊行為をしようとするだろう……

 被害を軽減する為に尽力するしかあるまい。武器は諦め、ここは守りに徹するとしよう……)