天御柱学院へ

なし

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蒼空学園へ

大空のトレインジャック!

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大空のトレインジャック!

リアクション



ラスト・ダンス

車外では。

「こちらヘイリー。5両目にも突入するとの連絡があった!

 そちらも突入よろしく頼む!」

すぐにヘイリーが待機していた天城、長原らにも連絡を取る。

「こちら天城。了解。接近を開始する!」

天城らはアルバトロスを太陽を背にする形で、新幹線の屋根へと垂直に接近を行った。新幹線の屋根で警戒に当たっていたテロリスト2人が銃撃してくる。が、しかし太陽光を直視できず、狙いは甘い。天城は器用に小型艇を自分の体ででもあるように操縦し、右へ左へと細かい動きで弾を避ける。
銃撃の合間を縫い、ミーナが身を乗り出して攻撃者に向かって氷術でブリザードを見舞った。炎や雷魔法では車内にも被害が及ぶ可能性があるし、新幹線の屋根というのは安定した足場とはいえない。風と氷つぶて混じりの風は目的どおりに作用した。2人の男が強風と氷に襲われ安定を失い慌てて伏せる。
そこへ長原が光条兵器を振るい、テロリストの武器のみを鮮やかに叩き切った。

「勝負あった、な」

武器を失った2人のテロリストを、長原と天城が拘束する。

「お見事」

天城がにやっと笑う。

「操縦の腕がすばらしかったですよ」

3人は外のテロリストを征圧した。

外部のテロリストを征圧したのを見て、リネンが空賊団のメンバー全員にゴッドスピードを発動する。騎乗を駆って停止した列車の最後尾の屋根に取り付き、中を覗き込む。一目見てテロリストとわかる覆面の男たちと、それに相対するものたちが見える。ユーベルが5号車の内部から見える位置にペガサスを移動させ、叫ぶ。

「ボス解放の要求について、重要なお話がありますわ!」

テロリストが注視した瞬間。ユーベルが神の目を発動させた。強烈な光が網膜を灼く。

「ぐあっ!!」

即座に窓ガラスを蹴破りながらフェイミィが叫ぶ。

「いくぜ遊撃隊!! 突入! リネン、ユーベルは客を守れ! 連中の相手はオレだ」

「フェイミィさん……張り切っていらっしゃるわね」

ユーベルが呟いた。

「わかったわ!」

リネンがフェイミィに応じ、4号車へ向かいながらユーベルに頷き返した。

「ずーっと待ってたからね」

国頭と紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、5号車からの援軍を見張っていた。セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)禁書 『フォークナー文書』(きんしょ・ふぉーくなーぶんしょ)は、4号車がほぼ征圧と見て、最後尾への突入を試みることにした。数名が同行してきた。ヴェルデ・グラント(う゛ぇるで・ぐらんと)が4号車と5号車の連結部に、いくつかのブービートラップを仕掛ける。足首ほどの高さに、強靭なテグスを張りめぐらす。薄暗い場所では透明な糸は光を透過し、見えない罠となって敵を待ち受ける。

「こちらに突っ込んでくるようなことがあれば、これが役に立つだろ。

 幅は50センチだから、引っかかりたくなかったらこの辺は跳び越してな」

フォークナー文書がふんふんと頷いた。

「……読書の邪魔ね……さっさと片付けましょうか。セシルが。

 あんたなら素手で何とかできるでしょー? ま、頑張んなさい」

セシルは列車の遅れと拘束にいらだっていた。

「テロリストの癖に生意気ですわ」

トラップを音を立てずに飛び越すと、そっと5両目をのぞく。4両目との境のドアに1人、最奥部に2人ほどいるのが見て取れた。いつの間にかそばに来ていたマーゼンが、庇護者を使い、さらに自分に女王の盾を使う。早見が眠らされているテロリストを石化し、盾代わりに車両間に並べた。飛鳥がトラッパーでチェックをして言う。

「特に仕掛けはないようよ」

国頭が先ほど受け取った光条兵器で、おもむろにドア越しに見張りを撃った。弾はすさまじい衝撃波だ。

「ぐぁっ」

見張りが向こうへと吹っ飛ぶ。

「なんだ!」

車両の向こうからテロリストたちが走ってくる。紫月が石像の影からドアを蹴り開けた。アムが吸血コウモリたちに指示を与え、ペットたちを次々開放する。飛ぶもの、蠢くもの、走るもので、5両目は埋もれた。アニスはその中から陽炎蟲を見つけ出し、指示を与えた。

「和輝のところへ行ってね」

噛まれ、蹴られ、翼で叩かれて、テロリストたちが4両目へと走りこんでくる。そしてヴェルデのテグスに引っかかり、バランスを崩した。アニスが氷術を使い、氷礫を見舞う。
セシルが1人の首に腕を回し、胸の間にテロリストの頭部を挟みこむと、そのまま全力で腕に力を込めて締め落とした。和輝は蟲で脚部を強化し、華麗な足技でテロリストを手玉にとっている。

「車両内の敵はこれで片付いたようですわね」

早見の言葉にアムは、興奮した動物たちが乗客に危害を与えたりしないように宥めて落ち着かせ、元の場所へと誘導した。

先頭から4両目までの征圧はほぼ済んでおり、突入組、戦闘スキルのある乗客と協力して全車内のチェックを行った結果、すでに征圧した人数で新幹線を乗っ取っていたことが判明した。緊張などで気分が悪くなったりしたほかは、乗客に怪我もなかった。

駆けつけたシャンバラ教導団の七瀬 雫(ななせ・しずく)が他の教導団メンバーとともに捕まったテロリストたちを警察への引き渡しを引き受けた。

「ジャッジメントですの!!」

(これ一度言ってみたかったのよね〜)

七瀬は言って、車内を見回した。

「さて、この件で乱れたダイヤを修復しないとね。

 今後こういうテロが出ないようにすることを上にも伝えておかないと」

身柄を確保されたテロリストたちが、ぞろぞろと連行されていくのを眺めつつ、七瀬はひとりごちた。

「全く……せわしない年末にこういうことされるとほんと困るね」